ときの忘れものの新天地駒込には「BOOKS 青いカバ」という本屋さんがあります。
歩いて数分の距離、亭主は二日にいっぺんはのぞいていますが、いつ寄ってもお客さんがいます。
本屋がどんどん潰れているご時勢にです。
きけば発信は twitter らしい。
早速フォローし始めたんですが、いやあ発信はもちろん、本好き、同業の古本屋さんたちの反応が凄いですね。
<【新刊】『プレヴェール詩集』(岩波文庫)小笠原豊樹訳
ついに発売されました。
「詩はトイレットペーパーに書くんだ」と言っていたというプレヴェールにふさわしい文庫版です。しかも名訳の誉れ高い小笠原豊樹訳。感極まって口走った「100冊仕入れます」を実行した売場の写真をご覧ください。>
(BOOKS 青いカバさんのtwitterより)
青いカバさんの店頭のプレヴェール塔
<今回は多くの人にお読みいただくため、送料無料にてネットショップでもお求めいただけます!
そして、小笠原豊樹さんについて触れたブログもぜひ!>
(BOOKS 青いカバさんのtwitterより)
少し解説するとですね、店主の小国貴司さん、敬愛するジャック・プレヴェール(Jacques Prevert、1900年~1977年)の詩集を無謀にも100冊仕入れてしまった。相手は天下の岩波書店、買取です。100冊仕入れたからってそう儲かるわけじゃあない、それこそ売れ残ったら大大赤字。
●8月18日 tomoka watanabe さんがツイート
< 1つのお店で岩波文庫100冊仕入れるだなんて、青いカバ、どうかしてます。(もちろん、いい意味で!) でも、書店界きってのガイブン目利きな小国さんが、この本!と取り組んでくださるんですから1、『プレヴェール詩集』、間違いないです。買いです。駒込、行くしかない。>
●8月21日 古書ほうろう さんがツイート
<BOOKS 青いカバさんのプレヴェール塔が、どんどん低くなっているそうです! みなさん、どうぞお早めに(笑)。それにしても凄い。暴挙なくして快挙なし。>
売れる本を仕入れるのではなく、売りたい本を仕入れる。
画商の端くれがついつい忘れる原点を思いださせてくれました。
~~~~
話は変わりますが、亭主が主宰していた現代版画センターは1974~1985年の10年間(足掛け12年)に約700点の版画、マルチプル作品をエディションしました。
現代版画センターのエディションの特徴は、最後のいくつかを除き、基本的には限定部数の全てを刷った(制作した)ことです。
つまり限定8部の希少エディション(例:磯崎新「内部風景III 増幅性空間―アラタ・イソザキ」1979年 アルフォト 80×60cm)から、限定11,111部のラージエディション(靉嘔「I love you 」1974年 シルクスクリーン 53×34cm)まで、売れようと売れまい全部数を完成させています。
そんなの当たり前じゃあないかと思うでしょうが、それが当たり前じゃあないのが「版画の世界」です。
このブログの「駒井哲郎を追いかけて」をお読みの方は、駒井作品の限定部数について、「実際に刷られたのは何部なのか?」と亭主が四苦八苦しているのをご存知でしょう。
現代版画の揺籃期(1950年代~60年代)、まだ日本には本格的な版画の版元は存在していませんでした。作家は注文がくるたびに版木(原版)を取り出し必要な部数だけを刷って注文主に渡していました。芸大の版画教室で駒井先生は弟子の中林忠良先生たちに「何番まで刷ったか、必ずノートに記録しておくように」と教えました。
ところが教えた当のご本人がいちばんイイカゲンで、刷った記録をつけなかったのか、それとも忘れたり、紛失したのか、次の注文が入ると困ったことになる。仕方ないので、新たな限定部数を決めて刷るということを繰り返しました。つまり、同じ作品に1/20と、1/25という分母が違う例が駒井作品には多々あります。
普通に考えれば、ファーストエディションが20部と、セカンドエディションが25部の計45部が作られたことになりますが、実際にはファーストエディションは10部しか刷られず、何部刷ったか忘れてしまった駒井先生はセカンドエディションとして別の分母を記入して10部を刷る、などという顛末となり、20部しか実物は存在しない・・・・・・後世の研究者やコレクターたちが困惑するわけです。
ヨーロッパの近現代美術を支えた版元に倣い、1974年本格的な版画の版元を目指して現代版画センターが生まれました。
作家とはきちんと契約書を交わし(作品の技法、サイズ、限定部数、サイン料を明記)、刷り師(版画工房)には契約書に基づいた刷り部数(販売用+作家保存用+刷り師保存用+版元保存用)を発注する。作家、版元、刷り師(版画工房)の三者がいったん動き出すと、最後の最後に作家が全部数にサインをし、支払いを受けるまで流れは止まりません。
ですので、現代版画センターのエディションのほとんどは全部数が完成しています。
いま必要があって、それらを追いかけています。
縁の深かったオノサト・トシノブ先生にはいくつもエディションをお願いしたのですが、どうしても見つからない作品が2点あります。
10cm角の小品で、限定部数も500部もあるので簡単に見つかると思ったのが間違い、苦戦しております。
オノサト・トシノブ
「Ce.2」
1974年
シルクスクリーン
10.0x10.0cm
Ed.500
サインあり
※レゾネNo.96. レゾネのタイトルは「G.H.C.3」
オノサト・トシノブ
「Ce.3」
1974年
シルクスクリーン
10.0x10.0cm
Ed.500
サインあり
※レゾネNo.97. レゾネのタイトルは「G.H.C.4」
タイトル(作品名)については、現代版画センターのエディション目録での表記と、後にレゾネが刊行されたときの表記が異なることはしばしばあります。
この2点、もしお持ちの方がいましたら、ご一報いただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
●今日のお勧め作品はオノサト・トシノブ先生の最大サイズの版画作品です。

オノサト・トシノブ「銀河 Galaxy」
1981年 シルクスクリーン
イメージサイズ:43.7×100.0cm
シートサイズ:54.8×111.0cm
Ed.150 サインあり
※レゾネNo.174
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

歩いて数分の距離、亭主は二日にいっぺんはのぞいていますが、いつ寄ってもお客さんがいます。
本屋がどんどん潰れているご時勢にです。
きけば発信は twitter らしい。
早速フォローし始めたんですが、いやあ発信はもちろん、本好き、同業の古本屋さんたちの反応が凄いですね。
<【新刊】『プレヴェール詩集』(岩波文庫)小笠原豊樹訳
ついに発売されました。
「詩はトイレットペーパーに書くんだ」と言っていたというプレヴェールにふさわしい文庫版です。しかも名訳の誉れ高い小笠原豊樹訳。感極まって口走った「100冊仕入れます」を実行した売場の写真をご覧ください。>
(BOOKS 青いカバさんのtwitterより)
青いカバさんの店頭のプレヴェール塔<今回は多くの人にお読みいただくため、送料無料にてネットショップでもお求めいただけます!
そして、小笠原豊樹さんについて触れたブログもぜひ!>
(BOOKS 青いカバさんのtwitterより)
少し解説するとですね、店主の小国貴司さん、敬愛するジャック・プレヴェール(Jacques Prevert、1900年~1977年)の詩集を無謀にも100冊仕入れてしまった。相手は天下の岩波書店、買取です。100冊仕入れたからってそう儲かるわけじゃあない、それこそ売れ残ったら大大赤字。
●8月18日 tomoka watanabe さんがツイート
< 1つのお店で岩波文庫100冊仕入れるだなんて、青いカバ、どうかしてます。(もちろん、いい意味で!) でも、書店界きってのガイブン目利きな小国さんが、この本!と取り組んでくださるんですから1、『プレヴェール詩集』、間違いないです。買いです。駒込、行くしかない。>
●8月21日 古書ほうろう さんがツイート
<BOOKS 青いカバさんのプレヴェール塔が、どんどん低くなっているそうです! みなさん、どうぞお早めに(笑)。それにしても凄い。暴挙なくして快挙なし。>
売れる本を仕入れるのではなく、売りたい本を仕入れる。
画商の端くれがついつい忘れる原点を思いださせてくれました。
~~~~
話は変わりますが、亭主が主宰していた現代版画センターは1974~1985年の10年間(足掛け12年)に約700点の版画、マルチプル作品をエディションしました。
現代版画センターのエディションの特徴は、最後のいくつかを除き、基本的には限定部数の全てを刷った(制作した)ことです。
つまり限定8部の希少エディション(例:磯崎新「内部風景III 増幅性空間―アラタ・イソザキ」1979年 アルフォト 80×60cm)から、限定11,111部のラージエディション(靉嘔「I love you 」1974年 シルクスクリーン 53×34cm)まで、売れようと売れまい全部数を完成させています。
そんなの当たり前じゃあないかと思うでしょうが、それが当たり前じゃあないのが「版画の世界」です。
このブログの「駒井哲郎を追いかけて」をお読みの方は、駒井作品の限定部数について、「実際に刷られたのは何部なのか?」と亭主が四苦八苦しているのをご存知でしょう。
現代版画の揺籃期(1950年代~60年代)、まだ日本には本格的な版画の版元は存在していませんでした。作家は注文がくるたびに版木(原版)を取り出し必要な部数だけを刷って注文主に渡していました。芸大の版画教室で駒井先生は弟子の中林忠良先生たちに「何番まで刷ったか、必ずノートに記録しておくように」と教えました。
ところが教えた当のご本人がいちばんイイカゲンで、刷った記録をつけなかったのか、それとも忘れたり、紛失したのか、次の注文が入ると困ったことになる。仕方ないので、新たな限定部数を決めて刷るということを繰り返しました。つまり、同じ作品に1/20と、1/25という分母が違う例が駒井作品には多々あります。
普通に考えれば、ファーストエディションが20部と、セカンドエディションが25部の計45部が作られたことになりますが、実際にはファーストエディションは10部しか刷られず、何部刷ったか忘れてしまった駒井先生はセカンドエディションとして別の分母を記入して10部を刷る、などという顛末となり、20部しか実物は存在しない・・・・・・後世の研究者やコレクターたちが困惑するわけです。
ヨーロッパの近現代美術を支えた版元に倣い、1974年本格的な版画の版元を目指して現代版画センターが生まれました。
作家とはきちんと契約書を交わし(作品の技法、サイズ、限定部数、サイン料を明記)、刷り師(版画工房)には契約書に基づいた刷り部数(販売用+作家保存用+刷り師保存用+版元保存用)を発注する。作家、版元、刷り師(版画工房)の三者がいったん動き出すと、最後の最後に作家が全部数にサインをし、支払いを受けるまで流れは止まりません。
ですので、現代版画センターのエディションのほとんどは全部数が完成しています。
いま必要があって、それらを追いかけています。
縁の深かったオノサト・トシノブ先生にはいくつもエディションをお願いしたのですが、どうしても見つからない作品が2点あります。
10cm角の小品で、限定部数も500部もあるので簡単に見つかると思ったのが間違い、苦戦しております。
オノサト・トシノブ「Ce.2」
1974年
シルクスクリーン
10.0x10.0cm
Ed.500
サインあり
※レゾネNo.96. レゾネのタイトルは「G.H.C.3」
オノサト・トシノブ「Ce.3」
1974年
シルクスクリーン
10.0x10.0cm
Ed.500
サインあり
※レゾネNo.97. レゾネのタイトルは「G.H.C.4」
タイトル(作品名)については、現代版画センターのエディション目録での表記と、後にレゾネが刊行されたときの表記が異なることはしばしばあります。
この2点、もしお持ちの方がいましたら、ご一報いただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
●今日のお勧め作品はオノサト・トシノブ先生の最大サイズの版画作品です。

オノサト・トシノブ「銀河 Galaxy」
1981年 シルクスクリーン
イメージサイズ:43.7×100.0cm
シートサイズ:54.8×111.0cm
Ed.150 サインあり
※レゾネNo.174
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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