小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第6回

いよいよ2018年です。みなさま、お正月はいかがでしたでしょうか。このブログが更新される頃には、BOOKS青いカバも通常営業。まだお正月気分が抜けていないかもしれませんが、おそらく新しい気持ちで仕事に励んでいるに違いありません。しかしながら、この原稿を書いている今は、なんとクリスマスすら訪れていない師走。たった2週間弱で味わうこのジェットコースターのような町の移り変わりは、毎年のことながら不思議な気持ちにさせられます。ですので、今の私の気分は、新年を迎えて新しい気持ちでいる、というよりは、去ろうとしている2017年を思い「あーいろいろあったなぁ・・・」と、こたつでお茶でも啜っている気分。ぼんやりと本だらけのカウンターを眺めています。
2017年の1月になんとかお店を開け、この年末までで一番変化したのはなんだろうか、と考えると、真っ先に思いつくのは「お店の在庫量」でしょうか・・・。

     写真1


     写真2


これは、オープン準備中の写真ではなく、オープン日の写真です。我ながら、この在庫量でよくお店を開けたものだと感心します。
ちなみに同じところから現在の写真を撮ると、こうなります。

     写真3


     写真4


増えました。たぶんこの1年が、生涯で1番本を買った年になると思います。古書も新刊も、たくさん目の前を通り過ぎていきました。もちろん全部を読んでいるわけではありませんが、1年を振り返ってみると、その月ごとで印象深い1冊が浮かんできます。小説あり、詩集あり、画集・写真集・料理本・・・。このブログで取り上げた本もあれば、ほかの場所で紹介した本やまだ紹介しきれていない本も、たくさんあります。

この写真を見比べてみて、今、2018年の抱負を思いつきました。
2018年の抱負は「たくさん本を買う」。
この調子で、2018年もたくさんの本を買って、たくさんの本をご紹介していきたい!と思う次第です。

さて、今回は、2017年にご紹介しきれなかった本から1冊。
『スティーヴィー・スミス詩集』です。

     写真5


スティーヴィー・スミスはイギリスの詩人で、1902年に生まれ、68歳で亡くなっています。あのシルヴィア・プラスも彼女の詩を絶賛し、たしかにプラスのような死の影を感じさせる詩もたくさんありますが、スミスの詩はもう少しあっけらかんとしているような印象です。

草は緑
チューリップは赤
花壇の花はピンク色
そのうえを歩くのは茶色のネコ
(中略)
さあ いそいで
できるかぎりの色を集めて!
あの世ではすべてが無色らしいから
でもたぶん
死後の世界が無色だっていうのは
うそだわ
(色とりどりに はなやかに)


活動の初期には、小説もいくつか書いているようですが、この詩人の翻訳が出版されているのは、この詩選集のみ。小説も読んでみたいので、今後の翻訳に期待です。
彼女の代表作「手を振ってるんじゃない 溺れてるんだ」の冒頭一連を引用します。

誰にも聞こえなかった あなたの声は
でもまだ死にきれずうめいている
ぼくはきみらが思ったよりずっと遠くにいたんだ
手を振ってたんじゃない 溺れてたんだ

英語の全文はこちら。

Not Waving but Drowning
By Stevie Smith

Nobody heard him, the dead man,
But still he lay moaning:
I was much further out than you thought
And not waving but drowning.

Poor chap, he always loved larking
And now he’s dead
It must have been too cold for him his heart gave way,
They said.

Oh, no no no, it was too cold always
(Still the dead one lay moaning)
I was much too far out all my life
And not waving but drowning.

たくさんあるわけではないですが、新刊としてこちらの詩集も仕入れますので、気になった方はぜひ当店まで!
2018年もよろしくお願いいたします。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、浮田要三です。
20180105_ukita_05浮田要三
《TOP》
2012年
油、アクリル彩、キャンバス、ドンゴロス、板
イメージサイズ:95.0×101.0cm
サインあり
*カタログ「浮田要三の仕事」(りいぶる・とふん出版)P.245掲載 No.7-80


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◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18~24頁にときの忘れものが特集されています。
02駒込外観ときの忘れものの小さな庭に彫刻家の島根紹さんの作品を2018年1月末まで屋外展示しています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。