野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第43回

年明けからの大作制作など

年明け初めの作品制作は、3月にとある関西の施設内に設置される176×320cmの大作制作です。
海空系の作品としては過去最大となり、3枚のパネルを連結して制作します。
まず空部分のパテの盛り上げ作業、想像以上に時間がかかって6時間、細かいタッチで盛り上げる為に3cmの長さのペインティングナイフで作業したからなのですが、この間の京都個展に出していた一番大きい大作のサイズ110×200cmより面積が2.56倍もあるので、色々と想像以上なのは当たり前かなと思います。
今回の大作制作は一応父との共作という形なので、3回の地漆塗りの作業は父に手伝ってもらいました。
父と二人で作業するというのは過去にも一度ありましたが、普段ほとんど無い事なので少し緊張します。

大作用パネル大作用パネル


下地パテ塗り後下地パテ塗り後


父と地漆塗り父と地漆塗り


父と地漆塗り2


そして箔押し開始、まずは5日間かけて大作の海部分のプラチナ箔の箔押しと、波の引っ掻き作業が終了、海だけにこれだけ時間がかかったのも、海を細かく分割して箔押ししたのも初めてでした。
肩がこりまくってなかなか大変でしたが、5日間も続けると最後になって波の表現が上達したのがわかって、良い修行にもなりました。毎年海の作品はたくさん作りますが、変な例えですがこの作品一点でいつもの一年分以上の面積の波を引っ掻いたと思います。
次に金箔の空の箔押しを2日間で終了、海の箔押しに必要なのは波をイメージしながらのリズム感と根気ですが、空の箔押しに必要なのは事前にイメージをしっかり頭の中で作る事と最大限の集中力なので、時々なかなか始められなかったりするのですが、無事に済んで良かったです。
今は漆の硬化待ち、また3月のエッセイで設置場所など詳細情報をお知らせ致します。

海の箔押し途中海の箔押し途中


また、ときの忘れものさんのブログでも紹介頂いていましたが、先日NHKの日曜美術館のクリムト特集の中で少しだけVTR出演しました。
1月上旬の収録では9時間かけてインタビュー、箔押し風景、照明を変化させての作品の撮影をしました。
でも編集され放送されたのは2分程度、テレビ撮影は何度も経験しているので知ってはいましたが、撮影の皆さんのお仕事は本当に大変だなと思います。箔の作品は照明がとても難しいのもありますが、スタッフの皆さんは休憩もせず、妥協せず満足できる絵が撮れるまで黙々と撮影されるので、いつも本当に感心します。

日曜美術館撮影日曜美術館撮影


日曜美術館撮影2


あと、1月中旬には一年で一番緊張する日、年に一度の母校の銅駝美術工芸高校での100分講義がありました。
今回は2年ぶりなのでとにかく緊張して、変な汗かいて、お腹もちょっと痛くて 笑、初めかなりあたふたして噛みまくりましたが、最後はちょっと慣れてなんとか無事に終了しました。
生徒さんにとって何か少しでも今後の人生の参考になればいいなと思います。

銅駝美術工芸高校校舎銅駝美術工芸高校校舎


グラウンドグラウンド


銅駝講義1銅駝講義


銅駝講義2


銅駝講義3


のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は野口琢郎です。
20180215_noguchi_38_sound
野口琢郎
"Wish -Sound of the sky-"
2016年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
102.0×185.0cm
Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆埼玉県立近代美術館で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が開催されています。現代版画センターと「ときの忘れもの」についてはコチラをお読みください。
詳細な記録を収録した4分冊からなるカタログはお勧めです。ときの忘れもので扱っています。
会期:2018年1月16日(火)~3月25日(日)
埼玉チラシAY-O600現代版画センターは会員制による共同版元として1974年~1985年までの11年間に約80作家、700点のエディションを発表し、全国各地で展覧会、頒布会、オークション、講演会等を開催しました。本展では45作家、280点の作品と、機関誌等の資料、会場内に設置した三つのスライド画像によりその全軌跡を辿ります。

○<昨日は埼玉県立近代美術館「版画の景色 現代版画センターの軌跡」へ。
・靉嘔…一筆書き凄すぎ
・安藤忠雄…こういう建築物、どこかにありそう
・磯崎新…CGみたい。そして大きい
・草間彌生…安定の作風
…そんな訳でとても面白かったです。版画かぁって思っている人にオススメです。

(20180211/かちにやゆるさんのtwitterより)>

○<埼玉県立近代美術館「版画の景色 現代版画センターの軌跡」へ。現代版画センターが作り上げてきたものが、その後のアートシーンに与えた影響は大きかったんじゃないだろうか。そんな感想を抱きました。当時の活動の履歴を今も保存されている方々に対しても感服です。
(20180210/未来さんのtwitterより)>

○<〈版画の景色 現代版画センターの軌跡〉へ。木村利三郎と大沢昌助がうれしい。
(20180210/fiasko(大失敗つづき)さんのtwitterより)>

○<「版画の景色」埼近,現代版画センター歴史とワーク。意義と違和。全・ときの忘れもの所有って凄!モンロー💋イスなかったが館内捜索。他,終了間際のや摘み食い。
(20180208/高橋祐子さんのfacebookより)>

西岡文彦さんの連載エッセイ「現代版画センターという景色が始まりました(1月24日、2月14日、3月14日の全3回の予定です)。草創期の現代版画センターに参加された西岡さんが3月18日14時半~トークイベント「ウォーホルの版画ができるまでーー現代版画センターの軌跡」に講師として登壇されます。

光嶋裕介さんのエッセイ「身近な芸術としての版画について(1月28日ブログ)

荒井由泰さんのエッセイ「版画の景色―現代版画センターの軌跡展を見て(1月31日ブログ)

スタッフたちが見た「版画の景色」(2月4日ブログ)

毎日新聞2月7日夕刊の美術覧で「版画の景色 現代版画センターの軌跡」展が紹介されました。執筆は永田晶子さん、見出しに<「志」追った運動体>とあります。

倉垣光孝さんと浪漫堂のポスター(2月8日ブログ)

嶋﨑吉信さんのエッセイ~「紙にインクがのっている」その先のこと(2月12日ブログ)

○埼玉県立近代美術館の広報誌 ソカロ87号1983年のウォーホル全国展が紹介されています。

○同じく、同館の広報誌ソカロ88号には栗原敦さん(実践女子大学名誉教授)の特別寄稿「現代版画センター運動の傍らでー運動のはるかな精神について」が掲載されています。

現代版画センターエディションNo.159 岡本信治郎「つばめ」
現代版画センターのエディション作品を展覧会が終了する3月25日まで毎日ご紹介します。
159_岡本信治郎《つばめ》岡本信治郎
「つばめ」(創立3周年記念エディション)
1977年
木版(彫り:塚口重光、刷り:五所菊雄)
イメージサイズ:18.4×11.2cm
シートサイズ:27.8×24.9cm
Ed.500 サインあり

パンフレット_05
出品作家45名:靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
20170707_abe06新天地の駒込界隈についてはWEBマガジン<コラージ12月号>をお読みください。18~24頁にときの忘れものが特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。