小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第9回
今年は須賀敦子さん没後20年の節目の年。タブッキやウンベルト・サバなどイタリア文学の翻訳家でもあり、『コルシア書店の仲間たち』などのエッセイもロングセラーの作家です。
記念の年ということもあり、須賀さんにまつわる新刊も相次いで発売され、当店にも自然と「須賀敦子コーナー」が出来上がりつつあります。

そんな中から、まずは、「ときの忘れものブログ」でもおなじみの大竹昭子さんの『須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京』からご紹介。
もともとは三冊に分かれていた作品を合わせ、さらに加筆修正の上で文庫化された、決定版の須賀敦子論。

須賀さんと親交があった大竹さんが、須賀さんの文章を引用しながら辿る彼女の足跡は、入門書として読むのも良いですが、須賀敦子を十分に読んできた読者にとっても新しい風景が見えるかのよう。ある作家の書いたエッセイをもとに、さらにもう一人の作家がその作家自身の歩みを追体験していく。そして、またそれを読者が読む。二重の作品を読んでいく刺激がなんとも心地よい作品です。当店でお求めの方には、大竹さんの須賀さんとの思い出が書かれたレシピカードがついております。
つぎは須賀敦子の新発見の詩を一冊にまとめた詩集『主よ 一羽の鳩のために』です。

須賀敦子の作家としての活動は、実はわずか8年。(翻訳はそれよりも長く手掛けています)この8年の間に『ミラノ 霧の風景』をはじめ、今でも多くの人に愛される本を書き上げたのです。まさに奇跡的。でも、それよりもずっと前から、彼女は「詩人」でもあったわけです。その言葉の感性に我々が触れられる美しい一冊です。
最期はこちら。『塩一トンの読書』。

私にとって須賀敦子は、やはり名翻訳家であり、深く作品を味わう「プロ」のような存在でした。その彼女の読書論、書評を集めたのが本書です。どの章を読んでも、本質をズバッととらえ、短く、けれど印象的に語っていく彼女の文章に惹かれます。
6月からは「須賀敦子の本棚」と題し、彼女が愛した作家や作品でコレクションを作るという素晴らしい企画も。

翻訳家・須賀敦子の未発表作品も収録されるというのだから、これは買わないわけにはいかないでしょう。
まだまだ須賀敦子は生きているなぁ、と実感します。
(おくに たかし)
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●今日のお勧め作品は、安藤忠雄です。

安藤忠雄
"Koshino House"
2015年
紙にクレヨン、コラージュ
イメージサイズ:20.7×61.0cm
シートサイズ:23.6×63.6cm
サインあり
◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

今年は須賀敦子さん没後20年の節目の年。タブッキやウンベルト・サバなどイタリア文学の翻訳家でもあり、『コルシア書店の仲間たち』などのエッセイもロングセラーの作家です。
記念の年ということもあり、須賀さんにまつわる新刊も相次いで発売され、当店にも自然と「須賀敦子コーナー」が出来上がりつつあります。

そんな中から、まずは、「ときの忘れものブログ」でもおなじみの大竹昭子さんの『須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京』からご紹介。
もともとは三冊に分かれていた作品を合わせ、さらに加筆修正の上で文庫化された、決定版の須賀敦子論。

須賀さんと親交があった大竹さんが、須賀さんの文章を引用しながら辿る彼女の足跡は、入門書として読むのも良いですが、須賀敦子を十分に読んできた読者にとっても新しい風景が見えるかのよう。ある作家の書いたエッセイをもとに、さらにもう一人の作家がその作家自身の歩みを追体験していく。そして、またそれを読者が読む。二重の作品を読んでいく刺激がなんとも心地よい作品です。当店でお求めの方には、大竹さんの須賀さんとの思い出が書かれたレシピカードがついております。
つぎは須賀敦子の新発見の詩を一冊にまとめた詩集『主よ 一羽の鳩のために』です。

須賀敦子の作家としての活動は、実はわずか8年。(翻訳はそれよりも長く手掛けています)この8年の間に『ミラノ 霧の風景』をはじめ、今でも多くの人に愛される本を書き上げたのです。まさに奇跡的。でも、それよりもずっと前から、彼女は「詩人」でもあったわけです。その言葉の感性に我々が触れられる美しい一冊です。
最期はこちら。『塩一トンの読書』。

私にとって須賀敦子は、やはり名翻訳家であり、深く作品を味わう「プロ」のような存在でした。その彼女の読書論、書評を集めたのが本書です。どの章を読んでも、本質をズバッととらえ、短く、けれど印象的に語っていく彼女の文章に惹かれます。
6月からは「須賀敦子の本棚」と題し、彼女が愛した作家や作品でコレクションを作るという素晴らしい企画も。

翻訳家・須賀敦子の未発表作品も収録されるというのだから、これは買わないわけにはいかないでしょう。
まだまだ須賀敦子は生きているなぁ、と実感します。
(おくに たかし)
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●今日のお勧め作品は、安藤忠雄です。

安藤忠雄
"Koshino House"
2015年
紙にクレヨン、コラージュ
イメージサイズ:20.7×61.0cm
シートサイズ:23.6×63.6cm
サインあり
◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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