残念な訃報です。
先日、90歳のお誕生日を迎えたばかりの山口勝弘先生が5月2日に亡くなられました。
私たちがお目にかかったのは昨秋11月2日、川崎市岡本太郎美術館でのレセプションが最後になりました。
CIMG8915山口勝弘展内覧会11池田、綿貫
左が池田龍雄先生、右が山口勝弘先生
川崎市岡本太郎美術館にて

40年にわたるご交誼を感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

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先日は合田佐和子の箱のオブジェをご紹介しましたが、本日は若林奮〈新100線〉シリーズから2点をご紹介します。
DSC_0489若林奮
〈新100線〉No.56「1995年5月20日」
木・彩色、真鍮製
H3.7xD10.5cm
Signed
※『若林奮―1989年以後』展カタログ(発行:東京新聞 1997年)P.85掲載

DSC_0497若林奮
〈新100線〉No.88「水鏡 1999年12月18日」
1999年12月18日
鉄・鉛、真鍮製
H2.8xD8.7cm
Signed


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若林奮(1936~2003)の〈100線〉と呼ばれるシリーズは、飴、薬、煙草、紅茶、フィルムなどを入れる蓋付きの缶や筆箱などのおもに既製の容器(一部手製も含まれる)の内部に造形物を充填して制作された小型のボックス・アートの一種です。1983年に開始され、1992年のNo.100で完成しました。
〈新100線〉は、この第1シリーズを受けて、1992年から制作が開始されました。
番号が付されていますが、それまでの番号がすべて完成しているわけではなく、〈100線〉も〈新100線〉も、いわば斑状に作者の関心となるモチーフが点在しているのに従って、ゆるやかなグループを形成しつつ、制作されています。
また、この2シリーズの延長線上には〈エクストラ100線〉〈新々100線〉があります。
「100線」の「線」は、1984年に東京の雅陶堂ギャラリー竹芝で「100本の地平線」の題名でその一部が発表されているように、「地平線」を意味しています。「100」は、漠然と点数の夥しさを暗示すると同時に、制作し続ける本人にとっても、達成すべき到達点の意味も持っています。
このシリーズは、携帯可能な小彫刻として発想されました。そこには、持ち主とともに旅することができ、身近にあって欠かすことのできない大事な必需品の意味合いも込められています。
〈100線〉の制作は、「軽井沢・高輪美術館 庭園」(1985年完成)、「所有・雰囲気・振動―森のはずれ」(1981-84年)といった大規模な作品の準備・制作と並行して進行しています。それらの作品が、きわめて境界線のあいまいな「庭」と「インスタレーション」であったことから、逆に、〈100線〉のすでに缶という明確な「境界線」を伴った自由の欠如の中で次元を切り替えながら、いわば身体の拘束を解くことが意図されています。
その意味で〈100線〉は、小規模とはいえ、若林にとって極めて本質的な課題が託されていると言えます。
鉛、鉄という従来の素材は、〈100線〉のNo86以降、木、硫黄など種類が拡大され、〈新100線〉になると、時にはほとんど「ファウンド・オブジェ」的な性格の既製品の小物が収められることもあります。それとともに、缶そのものも、焼いてクリア・ラッカーを塗るという加工を施されずに、そのまま使用されることも多くなりました。缶そのものが消費社会のなかで希少なものになりつつあることへの反応とも理解できます。

若林奮 Isamu WAKABAYASHI
1936年東京生まれ。59年東京芸術大学卒業。62年二科展で金賞。67年第2回現代日本彫刻展で受賞。80,86年ヴェネツィア・ビエンナーレに出品。87年東京国立近代美術館・京都国立近代美術館で[今日の作家 若林奮展]を開催。96年中原悌二郎賞受賞。99年多摩美術大学教授。鉄や銅、鉛などの素材を使い、深い自然観に基づく思索的な作品を制作した。2003年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。同年10月に永逝。

◆ときの忘れものは没後70年 松本竣介展を開催しています。
会期:2018年5月8日[火]―6月2日[土]
11:00-19:00  ※日・月・祝日休廊

ときの忘れものは生誕100年だった2012年に初めて「松本竣介展」を前期・後期にわけて開催しました。あれから6年、このたびは小規模ですが「没後70年 松本竣介展」を開催します。
201804MATSUMOTO_DM

「没後70年 松本竣介展」出品作品を順次ご紹介します
4出品No.3)
松本竣介
《人》

1946年
紙にインク、墨
Image size: 24.5x17.5cm
Sheet size: 28.0x19.0cm
※『松本竣介とその時代』(2011年、大川美術館)p.34所収 No.68


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●本展の図録を刊行しました
MATSUMOTO_catalogue『没後70年 松本竣介展』
2018年
ときの忘れもの 刊行
B5判 24ページ 
テキスト:大谷省吾(東京国立近代美術館美術課長)
作品図版:16点
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
税込800円 ※送料別途250円


●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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