光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」
04-自然と都市
~地球と建築~
最新作
※箔押しは、箔画家・野口琢郎氏とのコラボレーション
空間とは何か?
というすごくプリミティブであり、
難しい問いを設定してみると、
空間が存在するためには、
そもそも人間がいなければならない、
ということに気づく。
とても当たり前のことだ。
自然も都市も、
常に人間との関係においてしか
語り得ることができないのである。
そして、
その空間を構成するものが建築なのか、
はたまた自然なのか、考えてみると、
自然と建築のどちらであっても、
人間は、それぞれの身体感覚によって
目の前の空間、あるいは環境を
感じるのではないかと思うのである。
つまり、
人工的な都市と野生の自然という
対比のなかにあって、
人間が空間と対峙することに関して言えば、
自然も都市も差異がないのである。
共に、空間の響きを肌で感じることができる。
私は、幻想都市風景を描くときに、
この自然と都市をなるべく等価に扱うことを
意識するようにしている。
いかなる建築も宙に浮くことはできず、
地球(大地)の上に存在することを思えば、
この地球と建築の関係に思いを巡らせている。
あらゆる物体は、地球の中心に向かって
引っ張られる「重力」が働いている。
ガウディが行った「逆さ吊り実験」は、
この重力を放物線というアーチという
造形によって可視化したのである。
地球の一部がめくられたような建築、
地球から独立した柱で持ち上げられた建築、
地球の中に深く刺さったような建築、
すべての建築は、
こうして地球との関係性の中で
魅力的な空間を立ち上げている。
内部と外部の境界線についても、
また建築と地球の多様な関係ではないだろうか。
ドローイングを描いているとき、
建築単体だけのことを考えているのではない。
いつだって、建築の立ち上がり方、
地球との関係について考えながら
ペンを走らせている。
具体的には、建築を構成するいろんな素材の
組み合わせ方が問題となってくる。
硬い岩を描いたと思えば、
そこから鉄骨の柱が林立し、
レンガの壁が立ち上がる。
自然としての植物や
ラフな素材としての石や砂、氷もよく描く。
そうした組み合わせが互いに反応しながら
幻想都市風景は、描かれていく。
いつもいうように、
地球と建築のあり方において、
模範解答など存在しない。
そこには、大きな「自由」だけがある。
少しでも新しい可能性を切り開くべく、
今宵もまた、
ドローイングを描く旅を続けている。
(こうしま ゆうすけ)
■光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA(1979-)
建築家。一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。1987年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。
神戸大学で客員准教授。早稲田大学などで非常勤講師。内田樹先生の凱風館を設計し、完成と同時に合気道入門(二段)。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーの舞台デザインを担当。著作に『幻想都市風景』、『みんなの家。』、『建築武者修行』、『これからの建築』など最新刊は『建築という対話』。
今秋11月ときの忘れもので新作個展を開催します。
公式サイト:http://www.ykas.jp/
●本日のお勧め作品は、光嶋裕介です。

光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA
"幻想都市風景2016-03"
2016年 和紙にインク 45.0×90.0cm Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」は毎月13日の更新です。
04-自然と都市
~地球と建築~
最新作※箔押しは、箔画家・野口琢郎氏とのコラボレーション
空間とは何か?
というすごくプリミティブであり、
難しい問いを設定してみると、
空間が存在するためには、
そもそも人間がいなければならない、
ということに気づく。
とても当たり前のことだ。
自然も都市も、
常に人間との関係においてしか
語り得ることができないのである。
そして、
その空間を構成するものが建築なのか、
はたまた自然なのか、考えてみると、
自然と建築のどちらであっても、
人間は、それぞれの身体感覚によって
目の前の空間、あるいは環境を
感じるのではないかと思うのである。
つまり、
人工的な都市と野生の自然という
対比のなかにあって、
人間が空間と対峙することに関して言えば、
自然も都市も差異がないのである。
共に、空間の響きを肌で感じることができる。
私は、幻想都市風景を描くときに、
この自然と都市をなるべく等価に扱うことを
意識するようにしている。
いかなる建築も宙に浮くことはできず、
地球(大地)の上に存在することを思えば、
この地球と建築の関係に思いを巡らせている。
あらゆる物体は、地球の中心に向かって
引っ張られる「重力」が働いている。
ガウディが行った「逆さ吊り実験」は、
この重力を放物線というアーチという
造形によって可視化したのである。
地球の一部がめくられたような建築、
地球から独立した柱で持ち上げられた建築、
地球の中に深く刺さったような建築、
すべての建築は、
こうして地球との関係性の中で
魅力的な空間を立ち上げている。
内部と外部の境界線についても、
また建築と地球の多様な関係ではないだろうか。
ドローイングを描いているとき、
建築単体だけのことを考えているのではない。
いつだって、建築の立ち上がり方、
地球との関係について考えながら
ペンを走らせている。
具体的には、建築を構成するいろんな素材の
組み合わせ方が問題となってくる。
硬い岩を描いたと思えば、
そこから鉄骨の柱が林立し、
レンガの壁が立ち上がる。
自然としての植物や
ラフな素材としての石や砂、氷もよく描く。
そうした組み合わせが互いに反応しながら
幻想都市風景は、描かれていく。
いつもいうように、
地球と建築のあり方において、
模範解答など存在しない。
そこには、大きな「自由」だけがある。
少しでも新しい可能性を切り開くべく、
今宵もまた、
ドローイングを描く旅を続けている。
(こうしま ゆうすけ)
■光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA(1979-)
建築家。一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。1987年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。
神戸大学で客員准教授。早稲田大学などで非常勤講師。内田樹先生の凱風館を設計し、完成と同時に合気道入門(二段)。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーの舞台デザインを担当。著作に『幻想都市風景』、『みんなの家。』、『建築武者修行』、『これからの建築』など最新刊は『建築という対話』。
今秋11月ときの忘れもので新作個展を開催します。
公式サイト:http://www.ykas.jp/
●本日のお勧め作品は、光嶋裕介です。

光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA
"幻想都市風景2016-03"
2016年 和紙にインク 45.0×90.0cm Signed
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