佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第20回
ときの忘れものでの展覧会の構想について4
構想しているハコ群を制作するために、まずは材料の手配から始めた。最近は、東京と福島・大玉村をかなりの頻度で往復をしている(週1回は少なくとも)。材料は大玉村の小椋製材所にお願いをした。小椋製材所は安達太良山の裾野か中腹の手前あたりに位置している。かつては安達太良の林業を営んでいたらしいが、現在は東北・北関東あたりから木を集め、ここで製材して卸しているとのこと。小椋製材所の場内には挽いた建材が高々とつまれ、リフトとユニックが場内を走り回っている。バックヤードにはたくさんの丸太が積み上げられている。堅木が欲しかったので、場内の端っこに積まれていてカラカラに乾燥した45mm厚のクリ材を何枚か引っ張り出してもらい、それを適当な厚さに挽いてもらった。小椋さん曰く、クリは岩手のものが良いとのこと。ちなみにスギは栃木あたりが良いとも聞いた。


製材の現場ではグオングオンと回り続ける帯ノコに向かって材を滑らせて面が作られる。もちろん出てきた端材も捨てずに持ち帰らせてもらった。冬にはそれを薪として暖をとることもできる。

普段乗り回している旧型のマーチに挽いてもらった板を積め込んで、村内の作業場まで、そして時には東京まで持ち帰る。2300mmくらいの長尺は入るので輸送手段としては問題無い。福島と東京、農村と都会の間の往還は今回の制作の主題でもある。それは時には経済性も伴う交易でもあれば、ヒト・モノ連合の旅団なのだ。

作業場では、挽いてもらったナラとクリ材をプレーナーで整え、鉋をかける。出来上がり寸法をそのまま拾って、それを図面に落とし込んで、さてどうしようかと考え込む。材料が手元になくてはどうも形は考えづらい。手元の限りある材のアッセンブルによってはじめの形をポーンと生み出す方が、素直な線も描ける気もしているのだ。

(54*37.5cmの画用紙に鉛筆と色鉛筆。)
ハコの大きさは300mm立方として製材所ではその必要量を挽いた。ハコをどのように支持するかを考える。

(54*37.5cmの画用紙に鉛筆と色鉛筆。)

四裁の画用紙に描いた図を、ベニヤの上で原寸図に起こして材寸と取り合い、詳しいプロポーションを確かめる。この絵の背丈はだいたい小学校低学年くらいの大きさだ。素材も横にあるので出来上がりのイメージはおぼろげではあるがすでに自分の中に馴染んでいる。

(ベニヤの上での原寸図。柿渋で着彩。)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
●講演会「シャンティニケタンから建築とデザインを考え、学び、作る」
日時:9月22日(土) 午後5時~6時30分
講師:佐藤研吾(In-Field Studio / 歓藍社)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂
定員:先着100名(当日午後4時より1階受付にて整理券を配布します)
参加費:無料
*12月にときの忘れものでは佐藤研吾さんの初めての個展を開催します。どうぞご期待ください。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は靉嘔の大作です。

靉嘔「透明な波 スリランカ」
1981年 シルクスクリーン(刷り:岡部徳三) 90.0x150.0cm
左下にエディション、右下にサインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

ときの忘れものでの展覧会の構想について4
構想しているハコ群を制作するために、まずは材料の手配から始めた。最近は、東京と福島・大玉村をかなりの頻度で往復をしている(週1回は少なくとも)。材料は大玉村の小椋製材所にお願いをした。小椋製材所は安達太良山の裾野か中腹の手前あたりに位置している。かつては安達太良の林業を営んでいたらしいが、現在は東北・北関東あたりから木を集め、ここで製材して卸しているとのこと。小椋製材所の場内には挽いた建材が高々とつまれ、リフトとユニックが場内を走り回っている。バックヤードにはたくさんの丸太が積み上げられている。堅木が欲しかったので、場内の端っこに積まれていてカラカラに乾燥した45mm厚のクリ材を何枚か引っ張り出してもらい、それを適当な厚さに挽いてもらった。小椋さん曰く、クリは岩手のものが良いとのこと。ちなみにスギは栃木あたりが良いとも聞いた。


製材の現場ではグオングオンと回り続ける帯ノコに向かって材を滑らせて面が作られる。もちろん出てきた端材も捨てずに持ち帰らせてもらった。冬にはそれを薪として暖をとることもできる。

普段乗り回している旧型のマーチに挽いてもらった板を積め込んで、村内の作業場まで、そして時には東京まで持ち帰る。2300mmくらいの長尺は入るので輸送手段としては問題無い。福島と東京、農村と都会の間の往還は今回の制作の主題でもある。それは時には経済性も伴う交易でもあれば、ヒト・モノ連合の旅団なのだ。

作業場では、挽いてもらったナラとクリ材をプレーナーで整え、鉋をかける。出来上がり寸法をそのまま拾って、それを図面に落とし込んで、さてどうしようかと考え込む。材料が手元になくてはどうも形は考えづらい。手元の限りある材のアッセンブルによってはじめの形をポーンと生み出す方が、素直な線も描ける気もしているのだ。

(54*37.5cmの画用紙に鉛筆と色鉛筆。)
ハコの大きさは300mm立方として製材所ではその必要量を挽いた。ハコをどのように支持するかを考える。

(54*37.5cmの画用紙に鉛筆と色鉛筆。)

四裁の画用紙に描いた図を、ベニヤの上で原寸図に起こして材寸と取り合い、詳しいプロポーションを確かめる。この絵の背丈はだいたい小学校低学年くらいの大きさだ。素材も横にあるので出来上がりのイメージはおぼろげではあるがすでに自分の中に馴染んでいる。

(ベニヤの上での原寸図。柿渋で着彩。)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
●講演会「シャンティニケタンから建築とデザインを考え、学び、作る」
日時:9月22日(土) 午後5時~6時30分
講師:佐藤研吾(In-Field Studio / 歓藍社)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂
定員:先着100名(当日午後4時より1階受付にて整理券を配布します)
参加費:無料
*12月にときの忘れものでは佐藤研吾さんの初めての個展を開催します。どうぞご期待ください。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は靉嘔の大作です。

靉嘔「透明な波 スリランカ」
1981年 シルクスクリーン(刷り:岡部徳三) 90.0x150.0cm
左下にエディション、右下にサインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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