スタッフSの「第8回ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサート」レポート
9月12日(水)に、2018年二回目となる第8回ギャラリーコンサートを開催しました。
本日の記事はこのレポートを「スタッフSの海外ネットサーフィン」に代えさせていただきます。


酷い暑さと書いて酷暑と読むことを体感した今年の夏でしたが、そんな中において僅かながらも涼が感じられた日に、第8回となるギャラリーコンサートが開催されました。
出演は前回に引き続き武久源造さんと、淡野弓子さんに代わって山川節子さん。
毎回武久さんには自前のスクエア・ピアノを持ち込んで演奏していただいていますが、今回も、1830年代にウィーンでSeuffert & Seidler社によって作られたスクェア・ピアノを駒込に運び込んでのコンサートでした(重いので、2階に持ち上げるのが大変でした!)。
選曲もR.シューマンやF.シューベルト等、いずれもこのピアノと同年代(1800年代前半)の作品で、<楽器の構造的特色を最大限に引き出す演奏>が繰り広げられました。
プロデューサーの大野幸さん。
建築家として多忙な日々を送っておられるせいで前回はエジプト出張と重なり欠席でしたが、今回は都合が合って出席いただけました。
プログラムの表紙のパノラマ画像は、大野さんがプロジェクトを推進しているエジプトの砂漠風景。
武久源造さん。
各曲の演奏前にスクエア・ピアノや曲にまつわるお話をしていただきました。
最初に演奏した「R. シューマン アラベスク 作品18」はシューマンが駆け落ち中に作曲した曲とのことなのですが、武久さん曰く武久家も駆け落ちに縁のある家系なのだとか。
武久源造さんと山川節子さん。
山川さんには「シューベルト 四手連弾のためのファンタジー へ短調 作品103」の演奏の際、武久さんと連弾していただきました。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎるもの。
コンサート終了後の打ち上げ風景。
180年前に作られて、現在も現役というスクエア・ピアノの現物に触れられる貴重な機会でした。
図書室で一息つかれる武久さん。
後ろは一足早く展示した野口琢郎の"Quiet hope"。
近所の中華料理屋で二次会風景。
武久さんや自分はピアノの片付けで二次会には遅れての合流でしたが、紹興酒片手(自分はアルコールがダメなのでジンジャーエール)に乾杯のあと、武久さんの独演会が凄かったです。
内容は主に映画についてで、武久さんが9歳のときに観たという黒沢明の代表作である「七人の侍」やそのハリウッドオマージュである「荒野の7人」について、さらに「赤ひげ」について熱く語ったところ、同席していた若い世代にはビタイチ伝わっておらず愕然。自分は(一応)デザイン分野の人間として「七人の侍」は観たことはある側だったのですが「赤ひげ」は未視聴、「これがジェネレーションギャップか」と変な所で感心してしまいました。とはいえ、知らぬと言われればなおのこと語りたくなるのが趣味の話。この後も「赤ひげ」出演者の加山雄三などについて大いに盛り上がりました。
この話の何がスゴイのかというと、武久さんは全盲、1歳の時に病気により失明されています。近年では音声ガイド付き映画などというものもある程度認知されてきていますが、1960年代の映像作品に盲人に対する配慮など当然ありません。にも関わらず、武久さんが「観た」映画の内容は漫然と作品を「見た」だけの自分の記憶とは違い、微に入り細をうがつものであり、物事の受け取り方に違いはあれど、受け取るものに差は出ないのだと実感させられました。
武久さん曰く、「昔はめくらと言った、それが差別語とされ視覚障害者と今はいう。ボクは目が暗いのだからめくらで良いと思う」。字面にすると、確かに「めくら」というのは単に状態を表現しているだけで、わざわざ「視覚『障害』者」などと書く方が余程差別的に見えてきます。
この後も盛り上がりすぎて解散が遅くなり、ピアノを武久さんのお宅に運び込んで組み立てた時点で終電ギリギリというオチも付きましたが、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
自分の貧相な語彙では、到底武久さんの感受性や表現力について書ききれません。
もしご興味を持たれた方がおられましたら、是非次回のギャラリーコンサートにご参加ください。
開催は11月24日(土)を予定しております。
(しんざわ ゆう)

■武久 源造 Genzoh Takehisa [スクエア・ピアノ]
1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。以後、国内外で活発に演奏活動を行う。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。
91年よりプロデュースも含め30数作品のCDをALM RECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1~9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集 Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画・2002年)。1998~2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。

■山川節子 Yamakawa Setsuko 〔ピアノ、各種鍵盤楽器〕
ソロ、アンサンブルなどで幅広くユニークな演奏活動を行い、コンサートの企画・演出も手掛ける。ピアノ演奏の基礎を故・井口愛子氏に学び、ほかに作曲、アンサンブルなどの分野で多くの良き指導者に出会いながら10 代で個性豊かな活動を開始。後に、ピアノ指導法と演奏について情熱あふれる指導者である武田宏子氏のもとで研鑽を積み、全日本ピアノ指導者協会会員として後進も指導。1988 年より2000 年まで「子供のためのトークコンサート」を各地で開催。長年に渡って鍵盤楽器奏者・武久源造氏に協力し、多様な音楽シーンの製作およびCD 製作などに関わる。同時に、氏から多くの示唆を受け、チェンバロをはじめ様々な鍵盤楽器を演奏。アンサンブルでは鍵盤楽器のみならず、打楽器や声、民族的楽器などを使ったパフォーマンスなども行うが、主に、モダンピアノ、イギリスの初期スクエアピアノ、フォルテピアノによるコンサートを行っている。2005年より「交響曲を連弾で」シリーズを開始。武久氏とのピアノ連弾で作曲家自身のピアノ連弾版編曲によるシンフォニーの演奏を続けている。2005 年5 月より「ピアノ連弾講座」を開始。2010 年日本人楽器製作家の手による初期ブロードウッド社をモデルとしたフォルテピアノを使用してのコンサートを開催。現在進行形で鍵盤楽器の音楽に情熱を傾けている。

■大野 幸 Ko OONO 〔建築家〕
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎 Takuro NOGUCHI
"HANABI #9"
2011年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
91.0×72.7 cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「第303回企画◆野口琢郎展 」を開催しています。
会期:2018年9月20日[木]―9月29日[土] 11:00-19:00 会期中無休
9月22日(土)17時よりレセプションを開催しますので、ぜひお出かけください。
展覧会カタログを刊行しました(テキスト:金沢21世紀美術館館長・島敦彦さん)。
作家は会期中毎日在廊します。

●野口琢郎展カタログのご案内
野口琢郎展カタログ
2018年
ときの忘れもの発行
24ページ
テキスト:島敦彦
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
本体価格800円(税込)
※送料別途250円(メールにてお申し込みください)
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
ただし9月20日[木]―9月29日[土]開催の野口琢郎展は特別に会期中無休です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

9月12日(水)に、2018年二回目となる第8回ギャラリーコンサートを開催しました。
本日の記事はこのレポートを「スタッフSの海外ネットサーフィン」に代えさせていただきます。


酷い暑さと書いて酷暑と読むことを体感した今年の夏でしたが、そんな中において僅かながらも涼が感じられた日に、第8回となるギャラリーコンサートが開催されました。
出演は前回に引き続き武久源造さんと、淡野弓子さんに代わって山川節子さん。
毎回武久さんには自前のスクエア・ピアノを持ち込んで演奏していただいていますが、今回も、1830年代にウィーンでSeuffert & Seidler社によって作られたスクェア・ピアノを駒込に運び込んでのコンサートでした(重いので、2階に持ち上げるのが大変でした!)。
選曲もR.シューマンやF.シューベルト等、いずれもこのピアノと同年代(1800年代前半)の作品で、<楽器の構造的特色を最大限に引き出す演奏>が繰り広げられました。
プロデューサーの大野幸さん。建築家として多忙な日々を送っておられるせいで前回はエジプト出張と重なり欠席でしたが、今回は都合が合って出席いただけました。
プログラムの表紙のパノラマ画像は、大野さんがプロジェクトを推進しているエジプトの砂漠風景。
武久源造さん。各曲の演奏前にスクエア・ピアノや曲にまつわるお話をしていただきました。
最初に演奏した「R. シューマン アラベスク 作品18」はシューマンが駆け落ち中に作曲した曲とのことなのですが、武久さん曰く武久家も駆け落ちに縁のある家系なのだとか。
武久源造さんと山川節子さん。山川さんには「シューベルト 四手連弾のためのファンタジー へ短調 作品103」の演奏の際、武久さんと連弾していただきました。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎるもの。コンサート終了後の打ち上げ風景。
180年前に作られて、現在も現役というスクエア・ピアノの現物に触れられる貴重な機会でした。
図書室で一息つかれる武久さん。後ろは一足早く展示した野口琢郎の"Quiet hope"。
近所の中華料理屋で二次会風景。武久さんや自分はピアノの片付けで二次会には遅れての合流でしたが、紹興酒片手(自分はアルコールがダメなのでジンジャーエール)に乾杯のあと、武久さんの独演会が凄かったです。
内容は主に映画についてで、武久さんが9歳のときに観たという黒沢明の代表作である「七人の侍」やそのハリウッドオマージュである「荒野の7人」について、さらに「赤ひげ」について熱く語ったところ、同席していた若い世代にはビタイチ伝わっておらず愕然。自分は(一応)デザイン分野の人間として「七人の侍」は観たことはある側だったのですが「赤ひげ」は未視聴、「これがジェネレーションギャップか」と変な所で感心してしまいました。とはいえ、知らぬと言われればなおのこと語りたくなるのが趣味の話。この後も「赤ひげ」出演者の加山雄三などについて大いに盛り上がりました。
この話の何がスゴイのかというと、武久さんは全盲、1歳の時に病気により失明されています。近年では音声ガイド付き映画などというものもある程度認知されてきていますが、1960年代の映像作品に盲人に対する配慮など当然ありません。にも関わらず、武久さんが「観た」映画の内容は漫然と作品を「見た」だけの自分の記憶とは違い、微に入り細をうがつものであり、物事の受け取り方に違いはあれど、受け取るものに差は出ないのだと実感させられました。
武久さん曰く、「昔はめくらと言った、それが差別語とされ視覚障害者と今はいう。ボクは目が暗いのだからめくらで良いと思う」。字面にすると、確かに「めくら」というのは単に状態を表現しているだけで、わざわざ「視覚『障害』者」などと書く方が余程差別的に見えてきます。
この後も盛り上がりすぎて解散が遅くなり、ピアノを武久さんのお宅に運び込んで組み立てた時点で終電ギリギリというオチも付きましたが、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
自分の貧相な語彙では、到底武久さんの感受性や表現力について書ききれません。
もしご興味を持たれた方がおられましたら、是非次回のギャラリーコンサートにご参加ください。
開催は11月24日(土)を予定しております。
(しんざわ ゆう)

■武久 源造 Genzoh Takehisa [スクエア・ピアノ]
1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。以後、国内外で活発に演奏活動を行う。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。
91年よりプロデュースも含め30数作品のCDをALM RECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1~9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集 Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画・2002年)。1998~2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。

■山川節子 Yamakawa Setsuko 〔ピアノ、各種鍵盤楽器〕
ソロ、アンサンブルなどで幅広くユニークな演奏活動を行い、コンサートの企画・演出も手掛ける。ピアノ演奏の基礎を故・井口愛子氏に学び、ほかに作曲、アンサンブルなどの分野で多くの良き指導者に出会いながら10 代で個性豊かな活動を開始。後に、ピアノ指導法と演奏について情熱あふれる指導者である武田宏子氏のもとで研鑽を積み、全日本ピアノ指導者協会会員として後進も指導。1988 年より2000 年まで「子供のためのトークコンサート」を各地で開催。長年に渡って鍵盤楽器奏者・武久源造氏に協力し、多様な音楽シーンの製作およびCD 製作などに関わる。同時に、氏から多くの示唆を受け、チェンバロをはじめ様々な鍵盤楽器を演奏。アンサンブルでは鍵盤楽器のみならず、打楽器や声、民族的楽器などを使ったパフォーマンスなども行うが、主に、モダンピアノ、イギリスの初期スクエアピアノ、フォルテピアノによるコンサートを行っている。2005年より「交響曲を連弾で」シリーズを開始。武久氏とのピアノ連弾で作曲家自身のピアノ連弾版編曲によるシンフォニーの演奏を続けている。2005 年5 月より「ピアノ連弾講座」を開始。2010 年日本人楽器製作家の手による初期ブロードウッド社をモデルとしたフォルテピアノを使用してのコンサートを開催。現在進行形で鍵盤楽器の音楽に情熱を傾けている。

■大野 幸 Ko OONO 〔建築家〕
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎 Takuro NOGUCHI"HANABI #9"
2011年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
91.0×72.7 cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「第303回企画◆野口琢郎展 」を開催しています。
会期:2018年9月20日[木]―9月29日[土] 11:00-19:00 会期中無休
9月22日(土)17時よりレセプションを開催しますので、ぜひお出かけください。
展覧会カタログを刊行しました(テキスト:金沢21世紀美術館館長・島敦彦さん)。
作家は会期中毎日在廊します。

●野口琢郎展カタログのご案内
野口琢郎展カタログ2018年
ときの忘れもの発行
24ページ
テキスト:島敦彦
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
本体価格800円(税込)
※送料別途250円(メールにてお申し込みください)
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
ただし9月20日[木]―9月29日[土]開催の野口琢郎展は特別に会期中無休です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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