小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第23回

時間が経つと変わるもののひとつ、それは街並みです。
どんなに懐かしい感じのする街並みでも、30年前とまったく変わらないということはないでしょうし、そもそもそこに暮らす人が変わるのだから、変化をしないでいられる方が難しいというもの。
SNSや、こうしたブログに日々アップされている写真は、数十年後には激変している現代の街並みを写し取っているのかもしれませんが、それが不可能だった時代、同じような役割を担っていたのが、本日紹介するような書籍だったのかもしれません。

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作家の高見順が、昭和30年に編んだ2冊です。
1冊目に『浅草』を、その数か月後に『銀座』が刊行されています。
高見順が執筆を依頼し、その街についての小さなエッセイを書いてもらっているのは、『浅草』芝木好子、久保田万太郎などの土地にゆかりの深い文人から、『銀座』は劇場やバーの市井の人まで、バラエティに富んでいます。

写真2

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エッセイに付された写真やスケッチなども、当時の面影を感じさせるものが多く楽しめます。

写真4

このエッセイ、通り一遍にそれぞれの街を褒めているだけではないのが、また魅力的です。
例えば『銀座』の巻に「銀座ぎらい」というエッセイがあったり、「銀座で買い物をするのは愚の骨頂」という一文があったり。『浅草』の巻では、編者の高見順に「浅草などいい加減で打ち切りにして貰えぬか」と苦言を呈していたり・・・。
巻末についている「土産物としておすすめのもの」「どういう店の、どういう食べものを勧めるか」というアンケートに、「知らない」とか「うまいものはない」とか、好き勝手に書いているのも素晴らしい。(アンケート載せる意味を考えさせられます。)
そして、戦後まもなくということもあり、現代の街歩き本には出てこないような、当時の風俗についても、きちんと言及があります。

写真5

写真6

戦後まもなくの刊行ということもあり、戦前の街並みを懐かしがるような描写もありますが、常に「現代」は、物足りないもの。
今の私にとっては、この本のようなおおらかさと佇まいが、うらやましく思ってしまうのです。

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おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●本日のお勧め作品は関根伸夫です。
sekine_obj-13関根伸夫 Nobuo SEKINE
《空相ー二つの山》
1974年
黒御影石
W70.0xH35.0x33.0cm
底部にサイン、年記あり

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●『一日だけの須賀敦子展 in MORIOKA第一画廊
会期:2019年6月29日[土]
会場:岩手県盛岡市・MORIOKA第一画廊・舷

●『DEAR JONAS MEKAS 僕たちのすきなジョナス・メカス
会期:2019年5月11日(土)~6月13日(木)
会場:東京白金・OUR FAVOURITE SHOP 内 OFS gallery

●『倉俣史朗 小展示
会期:2019年5月25日(土)~6月9日(日)
会場:大阪・Nii Fine Arts

◆ときの忘れものは「第311回企画◆葉栗剛展 」を開催しています。
会期:2019年5月24日[金]―6月8日[土]11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
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出品No.6 《<男気>ひょっとこ》 H 102.0cm

葉栗展
ときの忘れものは毎年アジアやアメリカのアートフェアに出展し、木彫作家・葉栗剛の作品をメインに出品しています。今回は、2014年以来二回目となる個展を開催し、国内未公開作品11点をご覧いただきます。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。