アートや建築のある日常に向かって

坂山毅彦


銀座 蔦屋書店では建築家・光嶋裕介さんの個展「幻想都市風景 2019 GINZA-光嶋裕介展」(会期8/27-9/30)を開催しています。「書店で個展?」と思われるかもしれませんが、銀座 蔦屋書店はアートのある暮らしを提案するというコンセプトをもつ書店で、そのためのスペースがあり、様々な提案を実践するスタッフ、コンシェルジュが働いています。

建築家の個展としては、10メートルにも及ぶドローイングを展示した「安藤忠雄展-挑戦」(2019年6月)が初めてで、光嶋裕介さんは安藤忠雄さんに続く2人目の建築家になりました。今回の展覧会は、光嶋さんと建築コンシェルジュの抱く問題意識の重なりを確認できたこと、つまり「アートや建築のある日常」について一緒に考える時間を持てたことが実現への大きな原動力となりました。そしてその意志は本展の特徴に大きく表れています。

「幻想都市風景 2019 GINZA-光嶋裕介展」は、大きく3つの取組みで構成されていると考えることができます。
1)ドローイング作品の展示
2)ライヴドローイングによる新作の制作
3)毎週開催の連続対談イベント


koshima_kaijyoオープンな展覧会場。光嶋さんの作品がお店のインテリアにもなっている。

koshima_ginza在廊し描きあげる新作《GINZA》は、その制作過程も見ることができる。

koshima_gotchミュージシャン・後藤正文氏との対談「音楽と建築について~皮膚感覚で思考する」(8/27 開催)

作品展示は出展作家であれば誰もが行うことで、作家によってはこれまでも在廊しての作品解説やトークイベントも開催してきましたが、光嶋さんはさらに「時間軸」を導入することで、銀座 蔦屋書店という間口の広い空間を活かした展覧会を試みています。

「会期中、可能な限り在廊する」と宣言した光嶋さん。もちろん建築設計の仕事も同時進行していますので、1回の滞在時間は短いこともあります。でもそれがかえって最新作ドローイング《GINZA》の生成過程を見る楽しみや、光嶋さんとのコミュニケーション機会を何度も生み出すことにつながっています。

みんなで一緒に考える場としてのトークイベントは、様々な分野で活躍するクリエイターをお招きしての対談形式とすることで、光嶋さんの建築的思考を建築以外の視点から見聞きできる機会になっています。また、連続して対話を重ねることで、光嶋さんが3次元の建築と2次元のドローイングを行き来する理由が言語化されていき、その意味が浮き彫りになるはずです。

koshima_2019_03《 幻想都市風景2019-03 》 和紙にインク 金/プラチナ箔(箔押し:野口琢郎)45.0×90.0cm

光嶋さんのドローイング作品は、自身の設計した建築物ではなく空想上の街〈幻想都市風景〉を描いたものです。さらに近年は不均質な和紙を自ら漉き、その上に本来均質な線を引くための製図ペンで不思議な絵を描いているわけですから、鑑賞者にとっては知りたいことだらけのはずです。ドローイングの絵としての魅力、美しさを直感することと、そこから生まれる知的好奇心に動かされ、作品やその先にいる作者と対話すること。アートもまた時間をかけて向き合う価値をもった“コミュニケーション”であると気づかされます。

アートを所有し部屋に飾ることは、一緒に過ごす家族やペット、お気に入りの家具や食器、窓から見える風景と同じように、ゆっくり時間をかけて接する喜びをもたらしてくれると思います。アートが日常化していくということが、その時間が自らの欲求として生活の中に組み込まれていくことだとするならば、約一ヵ月間という「時間」を展示として意識した光嶋さんの取組みは、まさに、アートのある日常へ向かうための建設的な活動です。

展覧会が9月30日までに見せる変化・成長を楽しみに、これからも会場へ足を運び続けたいと思います。
さかやま・たけひこ

坂山毅彦(さかやま・たけひこ)
1978年北海道生まれ。2003年東京都立大学大学院修士課程建築学専攻修了。椎名英三建築設計事務所を経て、2008年坂山毅彦建築設計事務所設立。2013年から代官山 蔦屋書店 建築コンシェルジュ。2017年から銀座 蔦屋書店 建築コンシェルジュ。第二回「これからの建築士賞」受賞(2016年)

「幻想都市風景 2019 GINZA-光嶋裕介展」
蔦屋光嶋展DM会期: 2019年8月27日(火) - 9月30日(月)
10:00~22:30(営業時間)
会場:銀座 蔦屋書店アートウォール・ギャラリー(6F スターバックス横 展示スペース)
主催:銀座 蔦屋書店
共催:協力 ときの忘れもの
問い合わせ先:03-3575-7755
連続対談イベント(全5回)
本展特別企画といたしまして、想像と創造にまつわる連続対談を開催いたします。「建築を身体で思考する」をテーマに全5回に渡るトークイベントは、光嶋さんが以下のような想いのもと、ゲストにお声がけし、テーマも興味深い切り口を設定してくださいました。
第1回|「音楽と建築について~皮膚感覚で思考する」後藤正文(ミュージシャン/ASIAN KUNG-FU GENERATION) ×光嶋裕介(終了しました)
第2回|「武道と空間について~集団で思考する」内田樹(思想家) ×光嶋裕介(終了しました)
第3回|「文学と幻想について~頭で思考する」いとうせいこう(作家) ×光嶋裕介
日時:9月10日(火) 19:00~20:45
第4回|「アートと芸術ついて~手で思考する」束芋(現代美術家) ×光嶋裕介
日時:9月19日(木) 19:00~20:45
第5回|「写真と時間ついて~眼で思考する」鈴木理策(写真家) ×光嶋裕介
日時:9月24日(火) 19:00~20:45

場所:BOOK EVENT SPACE
参加条件:
銀座 蔦屋書店にて下記の商品をご購入いただいた方にご参加いただけます。
・イベント参加券:1,500円/税込
・イベント参加対象書籍『幻想都市風景(羽鳥書店)』:3,132円/税込
【イベント注意事項】
・定員に達し次第、受付を終了させて頂きます。
・参加券1枚でお一人様にご参加いただけます。
・イベント会場はイベント開始の20分前から入場可能です。
・当日の座席は、先着順・自由席でお座りいただきます。
・お客様都合でのキャンセルは承っておりません。
・参加券の再発行・キャンセル・払い戻しはお受けできません。
・止むを得ずイベントが中止、内容変更になる場合があります。
詳しくは蔦屋ホームページ

●本日のお勧め作品は、光嶋裕介です。
koshima_2018-01光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA
"幻想都市風景2018-01"
2018年
和紙にインク
45.0×90.0cm
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

Art Taipei 2019 に出展します。
ロゴ会期:2019年10月18日(金)~10月21日(月)
出品作家:葉栗剛野口琢郎ジョナス・メカス靉嘔ナム・ジュン・パイク光嶋裕介安藤忠雄ル・コルビュジエ

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。