亭主が美術の道に入るきっかけとなったのは(今思うとですが)、倉敷の大原美術館でみた「アルプスの真昼」という絵でした。高く澄み切った空気が伝わってくるような風景画に深い感動を覚えました。
セガンティーニ「アルプスの真昼」描いたのはアルプスの画家、ジョヴァンニ・セガンティーニ(Giovanni Segantini、1858年1月15日生まれ)。
彼が亡くなったのは今から120年前の今日、1899年9月28日でした。

信州の碌山美術館でみた一枚の写真から、荻原碌山とセガンティーニの縁を知ったのも運命的でした。
中学校の庭の片隅に建つ小さな美術館を初めて訪れたのは1970年代のはじめ、今は本館の他にいくつもの建物がありますが、当時は今井兼次設計による教会風の碌山館と、木造の小さな別館があっただけでした。別館の壁に小さな額に入った石造りの教会風の建物の写真が飾ってありキャプションには「スイス・サンモリッツにあるセガンティーニ美術館」とあり、<碌山が最も私淑したのはセガンティーニだった。建築家・今井兼次はサンモリッツのセガンティーニ美術館を模して教会風の建物とした>とありました。
1977年10月21日 (65)
建築家の今井兼次先生
1977年10月21日渋谷・ヤマハエピキュラス
「’77現代と声 一日だけの展覧会」オープニングにて

そのあたりのことは「セガンティーニと荻原碌山」として2011年08月18日ブログに書きましたのでお読みいただければ幸いです。

セガンティーニ美術館にて「
1989年ころ、スイスのサンモリッツ
友人とセガンティーニ美術館を訪れた亭主

当時、ヨーロッパ中に名をとどろかせ大人気作家だったセガンティーニは僅か41歳で亡くなりましたが、その生涯については曖昧なことが多かった。今春、その生涯を丹念にたどった227ページもの本格的な伝記が、それも日本人によって刊行されました。
久保州子セガンティーニ『アルプスの画家セガンティーニ』
著者:久保州子
2019年5月10日、論創社より刊行

国際的な名声を我が物にしたセガンティーニは、惨めな生い立ちを恥じて自分のことは誰にも語ろうとしなかった。そのことは、セガンティーニが一八九一年八月に南チロル・トレンティーノ地方トレント市の新聞・雑誌の主筆ヴィットリオ・チッペルに宛てた手紙にこう述べられている。
「他人の筆による私の伝記は半分以上が作り話です。私は自分の生い立ちを打ち明けていませんから、誰も知っているはずがありません」
セガンティーニが一八九六年初頭に書き始めた自叙伝でさえ、本人の生い立ちを理想的に美化している。画家の死後、一九〇二年にフランツ・セルフェースの『ジョヴァンニ・セガンティーニーーー人生と作品』が、〇四年には作品と解説を詳しく載せたフランス人マルセル・モンタンドンの『セガンティーニ』が出版された。三四年にはイタリア人ラファエレ・カルツィーニの『セガンティーニ、山岳物語』が七カ国語に翻訳され、真しやかに書かれた画家の英雄伝が世界中に広まるきっかけとなった。長男ゴッタルドや娘ビアンカも父親の伝記を執筆したが、必ずしも事実に即しているとは言えない。
セガンティーニ生誕一〇〇周年を迎えた一九五八年、トレンティーノ=アルト・アディジェ州当局に保管されていた記録文書から画家の生い立ちが明るみに出た。私はセガンティーニに関する取材で得た情報や手紙、数々の文献を鑑みて、そこから浮き上がる全体像を描きながらセガンティーニの謎に包まれた人生を迫ってみることにする。
(本書11ページより)>
セガンティーニのファンにとっては待望の伝記でしょう、ぜひお読みください。

●本日のお勧め作品は、ゴッタルド・セガンティーニの銅版画です。
多くの油彩画を残したセガンティーニですが版画作品はありません。
しかし、その息子たちマリオとゴッタルドの手によって父の死後、20世紀の前半10年間に多くの銅版画が制作されました。
いずれも父ジョバンニ・セガンティーニの代表作を版画化したものです。
セガンティーニのファンにとっては、息子たちのつくった版画は巨匠のイメージを共有できるかけがえのない作品であり、亭主にとっても大事なコレクションです。
セガンティーニ「湖を渡るアベマリア」

ゴッタルド・セガンティーニ「湖を渡るアヴェ・マリア」
版サイズ:37.5×29.0cm
シートサイズ:54.0×41.5
右下に長男ゴッタルドのサイン

セガンティーニ「湖を渡るアベマリア」右下サイン画面右下の長男ゴッタルドのサイン

セガンティーニ「湖を渡るアベマリア」左下サイン画面左下

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