昨日2月1日は倉俣史朗先生の命日でした(1934年11月29日生まれ - 1991年2月1日没)。

東京本郷の駒込に昭和九年十一月に生まれました。」(倉俣史朗『未現像の風景』1991年 住まいの図書館出版局)
倉俣先生はときの忘れものの直ぐ近くにあった理研の社宅で生まれ、育ちました。
お墓も近くの浄心寺です。

ずいぶん前になりますが、奥様の美恵子さんから「ワタヌキさんは版画がご専門らしいから伺うのだけれど、倉俣の描いたスケッチを皆さんと共有できるように版画にできないかしら」とご相談をうけました。

倉俣史朗のイメージスケッチ『STAR PIECE 倉俣史朗のイメージスケッチ』(1991年 TOTO出版)には、名作「ミス・ブランチ」の源泉となったスケッチなど約90点が収録されています。倉俣先生の手の痕跡を見ることのできる本書、いまでは数万円もする稀覯本です。
奥様のもとに遺されているスケッチ類はその数倍にのぼります。

倉俣美恵子さんと、1996-99年原美術館を皮切りにアメリカ、ヨーロッパを巡回した「倉俣史朗の世界」展のカタログ編集長を務めた植田実先生のお二人の監修で「倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier」(シルクスクリーン刷り:石田了一)刊行を進めています。

~~~~~~
倉俣ファンでもほとんどの方はご存知ないと思いますが、倉俣史朗先生は生前2点の版画作品を制作されています。
倉俣史朗「無極Ⅰ」倉俣史朗「無極Ⅰ
1979年 平版(オフセット)
イメージサイズ:74.0×103.4cm
シートサイズ:79.6×109.3cm
Ed.5 (自筆サインは1部のみ)
*第11回東京国際版画ビエンナーレ展に出品


倉俣史朗「無極Ⅱ」倉俣史朗「無極Ⅱ
1979年 平版(オフセット)
イメージサイズ:73.7×103.5cm
シートサイズ:79.1×109.6cm
Ed.5 (自筆サインは1部のみ)
*第11回東京国際版画ビエンナーレ展に出品

20180929143043_shou

20180929143043_00004shou『第11回 東京国際版画ビエンナーレ展』図録より

20180929143043_00002

1979年の第11回東京国際版画ビエンナーレに正式出品され、その後長く埋もれていた版画作品「無極 Ⅰ」「無極 Ⅱ」が没後初めて公開、展示されたのは、ときの忘れものの「倉俣史朗 小展示」(2018年10月9日~10月31日)でした。
不思議なことなのですが、没後、原美術館や世界各地で開催された回顧展にも出品されたことはありません。あまたの文献にもほとんど記載がありません。私たちが知る限り『第11回 東京国際版画ビエンナーレ展』図録に掲載があるのみです。

倉俣先生の生前、ただ一度の東京国際版画ビエンナーレ出品でしたが、亭主はこのとき、磯崎新先生から事前に出品作品の相談を受けており、金属にプリントした版画(アルフォト)「内部風景」シリーズをエディションしました。磯崎先生、倉俣先生は同ビエンナーレの最後の出品者となったわけです(同展は第11回で終了、磯崎先生はこの内部風景シリーズで佳作賞を受賞)。

倉俣史朗(1934-1991)
1934年東京本郷生まれ。都立工芸高等学校木材科で学び、1953年から帝国器材に勤める。1953年から56年まで桑沢デザイン研究所リビングデザイン科で学ぶ。1957年に三愛の宣伝課に就職し、ウィンドウディスプレイなどのデザインを手掛ける。1965年クラマタデザイン事務所を設立。1967年横尾忠則らとコラボレーションしたインテリアデザインなどで脚光を浴びる。このころから、彼が生涯にわたって好んだアクリル素材を用いて、日常の空間に無重力を作り出したような、透明で浮遊感のある作品を生み出していく。1970年〈Furniture in Irregular Forms〉シリーズで世界に広く認知される。1972年毎日デザイン賞を受賞。1981年エットレ・ソットサス Jr.らによるイタリアンデザインの新しいムーブメントであるメンフィス(Menphis)の展示会に磯崎新、マイケル・グレイブスらと共に参加。1990年フランス文化省芸術文化勲章を受勲。1991年急性心不全のため死去(享年56)。

-------------------------------------------------
◎昨日読まれたブログ(archive)/1984年09月01日|韓国ソウルで「アンディ・ウォーホル展」を開催
-------------------------------------------------

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。