小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第37回
先月~今月頭は、新刊ラッシュ!特に日本文学と海外文学で、気になる作品がたくさん発売されました。今月は、その中から、おそらく話題になっている(なる)であろう二作をご紹介したいと思います。
まずは、こちら。ミン・ジン・リー 池田真紀子訳『パチンコ』(文藝春秋)です。

上下巻のボリュームたっぷりの小説ですが、アメリカ最大の文学賞、全米図書賞の最終候補作となり、全米でミリオンセラーとなった本書、オバマ元大統領の推薦やらなにやらで、とにかく邦訳前から話題となった作品です。刊行も延び延びになり、ようやく7月末に発売となりました。出たてホヤホヤ!
韓国系アメリカ人作家である作者が、在日コリアン一家を題材に、戦前~戦後の四世代に渡る家族の歴史を描き切った大作です。この原稿を書いている前日から、私も上巻を読みはじめましたが、まったくストレスなく読み進められる、でも冒頭100ページからドラマとテーマが響き合うようなすごい作品です。特に、キリスト教の牧師が(現時点では)重要な役割を果たすのですが、それが神と人間の生き方、そして「植民地」統治(被統治)と重なって、心に響きます。読み進めるのが楽しみで、正直仕事をしたくない・・・。間違いなくおすすめの作品です。
そして、次の作品。グカ・ハン 原正人訳『砂漠が街に入りこんだ日』(リトルモア)です。

フランスに移住した、やはり韓国系の作者による、フランスで今年の1月に発売された、こちらもまさに出たての短編集です。先ほどの『パチンコ』が圧倒的な物語で魅せる作品なら、こちらは少し幻想的な趣もある作品集です。
自分と世界との距離感を調整するようにして書かれる8つの物語は、どれも「少し先」を見据えているように感じます。今、ここで起こる出来事を書きながらも、その視点は、現在に注がれていない。それが少しさみしくもあり、でも心強くもあります。訳者あとがきで触れられているグカ・ハンのインタビューで「フランス語は人工的で、その人工性ゆえにさまざまなしがらみから自由になることができる」とあって、深くうなずきました。(フランス語はできないですが。)
こちらは、発売前の本を読ませていただき、コメントも書きました。こちらもおすすめの作品集です。ぜひお手に取って見てください。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品は安藤忠雄です。
安藤忠雄 Tadao ANDO
「セビリア万博日本館」
1998年 シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:49.0×50.0cm
シートサイズ:90.0×60.0cm
A版:Ed.10
B版:Ed.35
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
先月~今月頭は、新刊ラッシュ!特に日本文学と海外文学で、気になる作品がたくさん発売されました。今月は、その中から、おそらく話題になっている(なる)であろう二作をご紹介したいと思います。
まずは、こちら。ミン・ジン・リー 池田真紀子訳『パチンコ』(文藝春秋)です。

上下巻のボリュームたっぷりの小説ですが、アメリカ最大の文学賞、全米図書賞の最終候補作となり、全米でミリオンセラーとなった本書、オバマ元大統領の推薦やらなにやらで、とにかく邦訳前から話題となった作品です。刊行も延び延びになり、ようやく7月末に発売となりました。出たてホヤホヤ!
韓国系アメリカ人作家である作者が、在日コリアン一家を題材に、戦前~戦後の四世代に渡る家族の歴史を描き切った大作です。この原稿を書いている前日から、私も上巻を読みはじめましたが、まったくストレスなく読み進められる、でも冒頭100ページからドラマとテーマが響き合うようなすごい作品です。特に、キリスト教の牧師が(現時点では)重要な役割を果たすのですが、それが神と人間の生き方、そして「植民地」統治(被統治)と重なって、心に響きます。読み進めるのが楽しみで、正直仕事をしたくない・・・。間違いなくおすすめの作品です。
そして、次の作品。グカ・ハン 原正人訳『砂漠が街に入りこんだ日』(リトルモア)です。

フランスに移住した、やはり韓国系の作者による、フランスで今年の1月に発売された、こちらもまさに出たての短編集です。先ほどの『パチンコ』が圧倒的な物語で魅せる作品なら、こちらは少し幻想的な趣もある作品集です。
自分と世界との距離感を調整するようにして書かれる8つの物語は、どれも「少し先」を見据えているように感じます。今、ここで起こる出来事を書きながらも、その視点は、現在に注がれていない。それが少しさみしくもあり、でも心強くもあります。訳者あとがきで触れられているグカ・ハンのインタビューで「フランス語は人工的で、その人工性ゆえにさまざまなしがらみから自由になることができる」とあって、深くうなずきました。(フランス語はできないですが。)
こちらは、発売前の本を読ませていただき、コメントも書きました。こちらもおすすめの作品集です。ぜひお手に取って見てください。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品は安藤忠雄です。
安藤忠雄 Tadao ANDO「セビリア万博日本館」
1998年 シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:49.0×50.0cm
シートサイズ:90.0×60.0cm
A版:Ed.10
B版:Ed.35
サインあり
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●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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