皆さまこんにちは。
もう新人とは言えない5年目のスタッフKです。
以前に数回ほどブログに英文で展覧会を紹介させていただきました。今回ははじめて日本語で書きます。よろしくお願いいたします。

現在開催中の「銀塩写真の魅力Ⅶ 20世紀の肖像」展より、ロベール・ドアノーの《La palme de Picasso》を紹介いたします。

ロベール・ドアノーは1912年、パリ郊外に生まれた。
幼いころに両親二人とも失った後(父は4歳のときに第一次世界大戦でなくなり、母はその3年後)、代わりに叔母に育られた。10代に入って工芸学校に通い、石版印刷工としてリトグラフを学んだ。卒業後宣伝会社に勤め、その後アンドレー・ヴィニョーのスタディオの写真アシスタントを勤めた。プロの世界に入ってから、ルノーに転勤し宣伝写真を撮り始めた。ところがわずか数年後、相次ぐ遅刻が理由でクビになった。ルノーの後はフリーで宣伝やポストカード用の写真をとって生計を立てていた。その内ラフォー社に雇われたが、第二次世界大戦が始まり徴兵によって戦うことになった。戦争中でさえ、ドアノーは学んできたスキルを使いレジスタンス運動のために書類などを偽造し、占領されたフランスの写真も撮り続けた。
戦後は民間写真の活動に戻り、フリーの仕事や、ヴォーグやラフォーとの仕事をするようになった。1950年代から、「写真」を「芸術」として推進する運動をしたフランスヒューマニスト写真に多大な影響を与えたグループXVに参加し始めた。グループXV解散後はル・30x40に参加。そのころからはずっとパリ中心で様々な人や風景の写真を撮り続けた。1994年、愛するパリにて死亡。450,000枚のネガが遺された。

"My photographs are completely subjective… They show the world as I would like it to be at all times… I try to slip in softly, 'look at that which I have seen. You passed near it today, but look for yourselves, and tomorrow you will find things around you that will make you laugh or move you."
私の写真は完全に主観的である。[...] いつもそうであってほしい世界をみせている.... 私はそっと間に入ろうとしている、「私が見たものを見てくれ。あなたは今日は近くを通りかけたが、自分でみてくれ。そうすると明日には笑わせてくれたり、感動させるような物で周りがあふれる。」

- Robert Doisneau. In: Colin Naylor, ed. Contemporary Photographers, Chicago and London, St. James, 1998.

アンリ・カルティエ=ブレッソンと並ぶストリート・フォトグラフィーの開拓者であるドアノー。16歳のときに初めてアマチュア写真に取り組んだとき、内気で道の石畳しか被写体にできなかったとも言われている。もちろん、成長したドアノーはやがて町ゆく人を撮影できるようになり、歴史上もっとも代表的なパリ写真の一枚、《市庁舎前のキス,パリ》、をとるようになる。その控えめな性格は各ショットに染み込み、各ショットに独特な優しい目線が見られる。

ドアノーの仕事の一部は有名人の撮影でもあった。芸術家だと、特に有名な被写体はジャコメッティ、コクトー、またはピカソ。パブロ・ピカソを紹介する必要はないだろう。芸術の巨人ピカソは1881年スペイン生まれ、大人になってから最後までフランスに住んでいた。ドアノーは1952年にピカソのスタジオで彼を撮影した。このセッションの一番有名な写真はピカソの前のテーブルの上にパンが指のように並べられている《ピカソとパン》。《La Palme de Picasso》には、定番のストライプのボートネックを着たピカソが大きなやしの葉を持って立っている。


doisneau_11_La-palme-de-Picassoロベール・ドアノー
"La palme de Picasso"
1952年撮影(1977年プリント)
ゼラチンシルバープリント
イメージサイズ:22.3x34.0cm
シートサイズ:30.5x40.3cm
サインあり
*石原悦郎旧蔵

《La palme de Picasso》は「ロベール・ドアノー写真集 芸術家たちの肖像」(2010、岩波書店)に掲載されていないが、同年に撮影された、同じ服のピカソの作品が掲載されている。そちらには「ピエール・ベッツの依頼より、1952年9月、ヴァロリスの邸宅ラ・ガロワーズで撮影。」と記載されている。

こちらの作品の下にはサインの前に手書きのノートが記載されている。
“Pour Etsuro Ishihara ceste visage d’une Picasso triumphant. Avec les sentiments les meilleurs de Robert Doisneau”
石原悦郎へ 意気揚々としたピカソの顔。敬具 ロベール・ドアノーより

2016年に永眠された石原悦郎氏は日本初の写真専門ギャラリー、東京・日本橋のツァイト・フォト・サロンの設立者であり、日本写真界の第一人者。彼は開廊する前にパリにわたり、ドアノーも含む海外の有名写真家の作品を日本に持って帰り、紹介した。石原氏が写真界に与えた多大の影響の波の一つでもある。

被写体を問わず、人生を尊重するドアノーの作品は、レンズを通して彼がみる温かさ、ユーモア、そして人間というものの優しいありかたの可能性をみせてくれる。

(スタッフK)

●ただいまBunkamuraザ・ミュージアムでドアノー/音楽/パリが開催中です
会期=2021年2月5日[金]―3月31日[水]*会期中無休
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
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*画廊亭主敬白
「銀塩写真の魅力Ⅶ 20世紀の肖像」展では8人の写真家が撮った20世紀の優れた表現者たちの肖像を展示しています。
今回は撮影者と被写体となった人たちとの関係をスタッフたちが分担して書いています。図書室にある写真集や評伝を片っ端から読んで俄か勉強、一夜漬け。みな四苦八苦しています(笑)。
本日の担当は日本語が不得手なスタッフK。どうやら英文で先ず書き、それを別のスタッフに手伝ってもらいながら日本語に訳したらしい。読みずらい点はどうぞご容赦ください。
先日から予告していますが、
2月22日のブログで「アンディ・ウォーホルのポスター特別頒布会」を開催します。
ウォーホルの命日に合わせてのイベントですが、その日は早くからウォーホルのスタジオに出入りして撮り続けた金坂健二の貴重なビンテージプリントをご紹介します。
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栗山豊「ANDY WARHOL'S PORTRAIT」ポスター
1977年  オフセット 54.5×79.0cm
「Apr 5, 1977。860 Broadway, New York City。Photo by Yutaka Kuriyama」
2月22日はアンディ・ウォーホルの命日です(1987年2月22日没)。世界最強のウォーホル・ウォッチャーだった栗山豊の命日でもあります(2001年2月22日没)。二人を偲び、ちょっとレアなポスターの特別頒布会を開催します。2月22日ブログをお見逃しなく

◆「銀塩写真の魅力Ⅶ 20世紀の肖像」を開催しています(予約制/WEB展)。
観覧ご希望の方は事前に電話またはメールでご予約ください。
会期=2021年2月12日(金)―3月6日(土)*日・月・祝日休廊
327_a327_bマン・レイボブ・ウィロビーロベール・ドアノーエドワード・スタイケン金坂健二細江英公安齊重男平嶋彰彦の8人の写真家たちが撮った20世紀を代表する優れた表現者た ち(ピカソ、アンドレ・ブルトン、A.ヘップバーン、A.ウォーホル、ブランクーシ、 三島由紀夫、イサム・ノグチ、黒澤明、他)のポートレートをご覧いただきます。
出品全作品の詳細は2月9日のブログをご覧ください。
気鋭の写真史家・打林 俊先生には「怒号にさざめく現像液-細江英公の〈薔薇刑〉をめぐって」をご寄稿いただきました。

打林 俊先生によるギャラリートークもYouTubeにて公開しております。
映像制作:WebマガジンColla:J 塩野哲也


●出品作品を順次、ご紹介してまいります。
本日はボブ・ウィロビー
A015-Jean-Seberg-eagle
Seberg, Jean, 1956Jean Seberg in NYC's Central Park after she won the title role in Otto Preminger's film "Saint Joan," 1956.(A015) ※「聖女ジャンヌ・ダーク」
1962 (Printed in 1984)
ゼラチンシルバープリント
12×16 in.
Ed.200
Initialed by Bob Willoughby, stamped and signed by Christopher Willoughby

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●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。