from Spain

今春開催したグループ展「Tricolore 2021」の出品作家の一人、スペイン在住の根岸文子さんからお便りが届きましたのでご紹介します。

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尾立様・ときの忘れもののスタッフの皆様:

お元気ですか?こちらスペインは、6月に入り気持ちのいい春風が吹たなと思ったら、突然真夏に入り夏バテをしていましたが、今週は、雨が多くちょっと肌寒い天気が続いています。
ちょうど日本も、梅雨に入った頃だろうな。と、日本を思い出させる気候です。
さて、ちょうど一年前、この時期にスペイン・バレンシアの画廊でのグループ展に参加しました。2020年の3月からのスペインの長い強制自粛生活が終わり、怖さと期待の混ざった、ぎこちない夏が始まった頃でした。
そして、このバレンシアで、今年2021年6月18日から9月5日まで、同画廊のグループ展にまた参加することになりました。
ヨーロッパ・スペインの今年の1年間は、パンデミック一色でした。特にスペインはコロナウイルス災害の規模が大きく、医療崩壊、経済活動の悪化、そして多くの人の命が犠牲になりました。今年5、6月になってワクチン接種のスピードが上がり、社会の雰囲気も明るく変わってきている気がします。グループ展のオープニングも、去年に比べると多くの人が同じ時間に画廊にやってきていました。作品群も、去年は、一律の小さめのサイズの作品でしたが、今年は、大きな作品が目立ちました。パンデミックの終わりを演出したいと言う人間の潜在意識が働いている様にも見えました。

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今年一年間生活して、私たちアーティストは自粛慣れしていて、一般の人よりも、精神的にも生活の上でも大きな変化を受けづらい存在であると言われています。しかし、この期間は、アーティストにとっても大きな活動期間ではなく、熟考の期間であった気がします。
そして、芸術というものが、如何に人間として生きていくために必要であるかというのも実感した時期でもありました。
まだ、コロナウイルスの終息は約束されていませんが、新たな一歩を踏み出そうという、集団的な社会の意思を感じる気がします。そして、私も、この夏、新しいページを捲れる様な気がします。そんな、私の今後のあたらしい作品にも、ぜひ期待を寄せていただけると幸いです。
バレンシアの街は、雨模様でしたが、去年よりも、明るく、街を歩く人の数も増え、元の生活に戻りかけている様な雰囲気でした。飲食店は、まだ、店内では、人数制限、お客の数も少ないのですが、野外のテラスは賑やかでした。
港町ですし、ヨーロッパで一番大きい、近代建築の美しいバレンシアの市場の前で、美味しい小魚フライもいただきました。
去年は、飲食店は空いているところが少なく、ほとんどの観光客は、スーパーで食べ物を買ってホテルで食べたりしていました。

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カテドラルでは、最後の晩餐の聖杯も見学してきました。
バレンシアのカテドラルのある場所はローマ時代より神殿があった場所だと言われています。その後、西ゴード人により古代キリスト教の教会に変わり、その後、イスラム勢力のスペイン侵攻でこの場所にもムスクが建てられました。
11世からの十字軍、キリスト教勢力の南下で、13世紀頃から今のカテドラルの建設が始まり、その後たびたび手を加えられながら今の姿として残っています。
長い時間をかけ、重要なバレンシアの人々の宗教施設として使われてきました。中に入ると、ロマネスク、ゴシック、バロック、新古典主義など様々な時代の建築様式を見ることができます。
そして、その奥に、最後の晩餐の聖杯も置かれています。遠くからしか見えません。一見、新しく見えます。紀元2世紀ごろから存在が知られている聖杯ですが、アガタで造られたカップの部分がオリジナルです。
周りの装飾は、中世になってから加えられたものだそうです。伝説では、キリストの弟子により、キリストの死後、ローマに運ばれ、その後スペイン北部の教会、最終的に12世紀からこのバレンシアの教会に置かれているとのことです。

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スペインの町々は、古代から同じ場所にある町が多く、支配者が替わるたびに姿を変えてきましたが、その度に、もともとあったものを壊してあたらしい建物などを建ててきました。
バレンシアの街も歩いていると、古そうな壁のなかに、壊された彫刻物や、石などが使われていてその様子を察することができます。
私達も、一歩一歩、この歴史の流れの中を歩んで行くんだなと教えてくれるようなそんな対話が溢れている場所です。

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根岸文子(ねぎし ふみこ)

YouTubeにて『Tricolore 2021—作家インタビュー第1部・根岸文子』を公開しています。

●本日のお勧め作品は根岸文子です。
FUUN_YUUSHI-500根岸文子 Fumiko NEGISHI
"FUUN YUUSHI"
2008年
アクリル・板
130x388cm
サインあり
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●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
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