スタッフSの海外ネットサーフィン No.94「コートールドギャラリー バーチャルツアー」
The Courtauld Gallery, London


 読者の皆様こんにちは。7月半ばを過ぎて、急激に夏の暑さが増してきている今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。相次ぐ緊急事態宣言の発令とそんな中でも強行されるオリンピックに、茹った頭でそこはかとない先行きの不安を感じております、スタッフSこと新澤です。

Somerset House, Strand

 今回ご案内するのはイギリス・ロンドンにあるコートールドギャラリーです。物理的な規模はあまり大きな美術館ではなく、どこにあるかというと、以前この連載で紹介したソマーセットハウスの北館に設けられています。厳密にはロンドン大学附属コートールド美術研究所の所属で、収蔵品は同研究所のコレクションです。こう書くと「あまり大したことがないのでは?」と思われるかもしれませんが、コートールド美術研究所自体が美術史研究および保存修復に関して世界最高の研究機関のひとつに数えられており、その卒業生たちからは「コートールド・マフィア」と称されるほど多くの美術館館長を輩出している名門です。コレクションも名作、名品を多数含み、特に印象派や後期印象派コレクションの質の高さで知られています。ゴッホ、ルーベンス、セザンヌ、デガ、ゴーギャン、モネ、ルノワール。これらの作家の絵画作品をいずれも複数所有していると書けば、その質も想像し易いのではないでしょうか。
 美術研究所のコレクションは1932年に実業家のサミュエル・コートールドが寄贈した作品を元に設立され、1948年には同氏の遺贈が加わりました。その後もコレクションは関係者の寄贈と遺贈により規模を増やし、現在は530点の絵画作品と26,000点を超える版画、ドローイング作品で構成されています。
 美術館は2018年以来、大規模改装のために一時閉鎖していましたが、今年の11月に再開予定です。

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バーチャルツアー内で展示されている、サミュエル・コートールドが遺贈したゴッホの自画像

 長引くコロナ禍で昨今では珍しくなくなった美術館やイベントのバーチャルツアーですが、コロナ禍以前から長期閉鎖していたこともあり、コートールドギャラリーも早くからバーチャルツアーを公開していました。
 ツアーを開始すると展示部屋の中央から見た画像が表示されるので、マウスで画像を360度回転させ、気になる部分は「a」キーで拡大、「z」キーで縮小し、画像のドア部分をクリックして次の部屋へ移動するというシンプルなインターフェースで、2018年9月時点の6つの展示室を回ることができます。
 驚くべきはその高精細さで、部屋の全体を見渡す状態から一つの作品の全体図、そこからさらにズームして筆のタッチを見分けられるくらいに近づくことができ、作品脇のキャプションも拡大すれば十分に読むことができます(角度の都合で読めないものもあります)。

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上記の展示風景を最大までズームした画面。重ねて塗られた油彩の凹凸まで見分けられます。

 11月の再開時には当然新しくなった展示場がお披露目されるわけですが、その際にこの旧展示室のバーチャルツアーがどうなるかは未定です。アーカイヴとして残される可能性はありますが、お時間があれば是非とも今の内に一度観て回ってはいかがでしょうか。

(しんざわ ゆう)

美術館公式ページ(英語)
バーチャルツアーページ(ツアーページに移動すると自動で画面が動き出しますが、画面をクリックすると自分で操作できるようになります)

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
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