一枚の版画をともに見ることから展覧会制作へ
「版行動 映えることができない」
会場 : 東京都美術館 ギャラリーC
会期 : 2021年6月10日(木) ~ 6月30日(水)
版行動のメンバー関優花さん、千葉大二郎さん、堀内悠希さんが訪ねて来てきたのは1年半ほど前のこと。ときの忘れもの刊行の『内間安瑆・内間俊子展』カタログに掲載されている内間安瑆《SHORT POEM》の逆さ文字や書いてある内容に着目したという彼らから、内間安瑆作品と一緒に自分たちの作品を展示したい、することは可能かというご相談を受けました。そのときは、展示場所や会期は決まっていないというふんわりした話でしたが、少し時間が経ち、東京都美術館が主催する公募グループ展の審査を通過して展覧会ができることになったという連絡を受け、美術史研究の高橋沙也葉さんが加わり本格的な展覧会の準備が始動。ご遺族のご理解もいただき、内間安瑆作品4点と共に彼らの作品を展示する展覧会が実現しました。
関優花さんは《私らへの備忘録》という、切り出した丸太の側面に、会場で思い浮かんだ言葉を彫っていくパフォーマンスを行い、壁面には長い和紙にその丸太を拓本した作品を展示していました。拓本は正字だったので、逆さ文字で彫っているのかと思いましたが、丸太にも正字で彫っており、あぁそうか、丸太の表面に和紙を密着させてその上から墨で写し取るので、逆さ文字に彫る必要はないのか・・・と一人納得。丸太に腰かけて彫る関さんのパフォーマンス姿がかっこよかったこと!
堀内悠希さんの《ABCの影》映像は、自らの手の影でABCを作るのですが、プロジェクターに映し出すときに反転してしまうので、その場で反転文字を想定しながら指でアルファベットを作るというパフォーマンス映像。手の迷いがひしひしと感じられるのがこの映像の魅力でもありました。5歳の我が子は自分の名前を躊躇なく鏡文字で書くので、左右の認識がないって逆にすごいなと感心したのでした。
そして、面白かった(可笑しかった)のは千葉大二郎さんの《Mirror Banner》という、店舗の前に立つ風などで裏返ってしまっている「のぼり」を記録して、画像編集ソフトで反転させて「修復」した写真が映し出された作品。裏返っていた「のぼり」は正字になると、背面の文字が反転するという、アベコベで、随分面倒な作業をしているなと思わずクスっとなる作品でした。
内間安瑆《SHORT POEM》というたった一つの作品が彼らを刺激したという事実と、それを形にしようとする彼らの行動に感服しました。
今後の活躍にも期待したいです。
本展の詳細は、版行動のエッセイをお読みください。
(おだちれいこ)

千葉大二郎
関優花、右・内間安瑆"Forest Byobu (Fragrance)"
関優花

左2点・内間安瑆、右・堀内悠希


内間安瑆《SHORT POEM》
堀内悠希
●三人の作品について
関優花《私らへの備忘録》サイズ可変、パフォーマンス、丸太、拓本、2020
千葉大二郎 《Mirror Banner》200.0cm×266.0cm、プロジェクター、布、木、ワイヤー、2016
堀内悠希《RGB のモビール》サイズ可変、木、紐、塩ビ板、紙、2021
※写真は宮下夏子撮影
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
「版行動 映えることができない」
会場 : 東京都美術館 ギャラリーC
会期 : 2021年6月10日(木) ~ 6月30日(水)
版行動のメンバー関優花さん、千葉大二郎さん、堀内悠希さんが訪ねて来てきたのは1年半ほど前のこと。ときの忘れもの刊行の『内間安瑆・内間俊子展』カタログに掲載されている内間安瑆《SHORT POEM》の逆さ文字や書いてある内容に着目したという彼らから、内間安瑆作品と一緒に自分たちの作品を展示したい、することは可能かというご相談を受けました。そのときは、展示場所や会期は決まっていないというふんわりした話でしたが、少し時間が経ち、東京都美術館が主催する公募グループ展の審査を通過して展覧会ができることになったという連絡を受け、美術史研究の高橋沙也葉さんが加わり本格的な展覧会の準備が始動。ご遺族のご理解もいただき、内間安瑆作品4点と共に彼らの作品を展示する展覧会が実現しました。
関優花さんは《私らへの備忘録》という、切り出した丸太の側面に、会場で思い浮かんだ言葉を彫っていくパフォーマンスを行い、壁面には長い和紙にその丸太を拓本した作品を展示していました。拓本は正字だったので、逆さ文字で彫っているのかと思いましたが、丸太にも正字で彫っており、あぁそうか、丸太の表面に和紙を密着させてその上から墨で写し取るので、逆さ文字に彫る必要はないのか・・・と一人納得。丸太に腰かけて彫る関さんのパフォーマンス姿がかっこよかったこと!
堀内悠希さんの《ABCの影》映像は、自らの手の影でABCを作るのですが、プロジェクターに映し出すときに反転してしまうので、その場で反転文字を想定しながら指でアルファベットを作るというパフォーマンス映像。手の迷いがひしひしと感じられるのがこの映像の魅力でもありました。5歳の我が子は自分の名前を躊躇なく鏡文字で書くので、左右の認識がないって逆にすごいなと感心したのでした。
そして、面白かった(可笑しかった)のは千葉大二郎さんの《Mirror Banner》という、店舗の前に立つ風などで裏返ってしまっている「のぼり」を記録して、画像編集ソフトで反転させて「修復」した写真が映し出された作品。裏返っていた「のぼり」は正字になると、背面の文字が反転するという、アベコベで、随分面倒な作業をしているなと思わずクスっとなる作品でした。
内間安瑆《SHORT POEM》というたった一つの作品が彼らを刺激したという事実と、それを形にしようとする彼らの行動に感服しました。
今後の活躍にも期待したいです。
本展の詳細は、版行動のエッセイをお読みください。
(おだちれいこ)

千葉大二郎
関優花、右・内間安瑆"Forest Byobu (Fragrance)"
関優花
左2点・内間安瑆、右・堀内悠希

内間安瑆《SHORT POEM》
堀内悠希●三人の作品について
関優花《私らへの備忘録》サイズ可変、パフォーマンス、丸太、拓本、2020
千葉大二郎 《Mirror Banner》200.0cm×266.0cm、プロジェクター、布、木、ワイヤー、2016
堀内悠希《RGB のモビール》サイズ可変、木、紐、塩ビ板、紙、2021 ※写真は宮下夏子撮影
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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