「Uコレクション展」
会期＝2021年11月26日［金]―12月11日［土］ 11:00-19:00 ※日・月・祝休
建築界で長年活躍されているU氏は、編集者としての仕事や建築批評のほかに、美術についてのエッセイや展覧会レビューも手がけ、またその共感を示すコレクターでもありました。
このたびそのコレクションから21作家の24点を選び、52頁に及ぶカタログでは、U氏と草間彌生さんとの対談（1983年）や今までの評論の再録と併せて、新たにそれぞれの作家について綴った覚え書きを収録しています。
●出品21作家・全24点ついてブログで詳しく掲載します。
11月24日／前川千帆、谷中安規、吉田政次
11月26日／ダリ、リキテンスタイン、ウォーホル
11月27日／一原有徳、木原康行、森ヒロコ
11月28日／草間彌生
11月29日／横尾忠則、倉俣史朗、ティニ・ミウラ
12月2日／磯崎新、宮脇愛子、関根伸夫
12月4日／海老原喜之助、アルビン・ブルノフスキ、
12月6日／若林奮、井上直久、山本容子
本日は、磯崎新、宮脇愛子、関根伸夫についてU氏の覚書「あ 思い出した」からご紹介します。
No.13 磯崎新 "ARATA ISOZAKI RETROSPECTIVE ART NET LONDON JUNE23-JULY10"
No.13
磯崎新
"ARATA ISOZAKI RETROSPECTIVE ART NET LONDON JUNE23-JULY10"
1976
シルクスクリーン
39.5×59.3cm／39.5×59.3cm
サインあり
No.14 磯崎新＋［宮脇愛子］ "MIYAWAKI Aiko Sculpture 1968-1976 Displayed by ISOZAKI Arata, Organized by METAL FACTORY AOKI Cooperated by TOKYO GALLERY"
No.14
磯崎新＋［宮脇愛子］
"MIYAWAKI Aiko Sculpture 1968-1976 Displayed by ISOZAKI Arata, Organized by METAL FACTORY AOKI Cooperated by TOKYO GALLERY"
オフセット
イメージサイズ：42.0×59.2cm
シートサイズ：42.0×59.2cm
いきなり建築図面、つまり平・断面や透視図をそのままに版画作品として世に出したのは、磯崎新である。あっと思った。虚を衝かれた。それまでは建築家がたまにつくるアートといえば、やはり建築図面を出すとしてもそれらしくは見られないために図面の線のあちこちを消したり足したり、大仰に影をつけたり、ときには余技との解釈のうえで、風景画や静物画を出展することだってあったのだ。
磯崎の建築図版画で驚いたのは、並みのアートよりよほど冴えていたからだ。だけではない。建築家の思想の核心にある、例えば廃墟と化した建築や都市のイメージは専門領域におけるプレゼンテーションとして説明的副次的に見られがちだったのが、アートとしてシルクやリトグラフ印刷になった瞬間、時代の最前線に直ぐ位置付けられた。つまり、平・断面や透視図と、先に言ったけれども、ただの建築図面では、シルクやリトグラフで印刷してもアートになるわけではない。また実現できないような建築という範疇に限ってのことでもない。磯崎による初期（ 1 9 6 0 年代）の大分医師会館、中山邸、福岡相互銀行大分支店などは実際にまちのなかに姿を現しても容易に理解されなかった。その建築の声はアートを通して急に聞こえてきた。そのような建築だった。
建築家の方々によるアート作品はほとんど手元にない。だが手元に小さな明かりを持つ気持ちで、磯崎さんの小さなポスター2点だけとりあえず。（2021）
U「あ 思い出した」『Uコレクション展関連ファイル』（2021年、ときの忘れもの発行）より
■磯崎新（b.1931）
建築家。大分生まれ。1954年東京大学卒業。1961年東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。1963年磯崎新アトリエを設立。建築のみならず、思想、美術、デザイン、映画などの国際的な舞台で活躍。評論や設計競技の審査を通じて、世界のラディカルな建築家たちの発想を実現に導くうえでのはかり知れない支援を果たしてきた。日本を代表するとともに、世界の建築界で最も信頼されている建築家である。
■宮脇愛子（1929-2014）
東京生まれ。1952年日本女子大学文学部史学科卒業。阿部展也、斎藤義重に師事。1957-1966年欧米各地に滞在。真鍮、石、ガラスを用いた立体作品のほか油彩や墨絵を制作。代表的な彫刻《うつろひ》は、モンジュイック・オリンピック広場（バルセロナ）、ラ・デファンス（パリ）、奈義町現代美術館など世界各地にコレクションされている。1998年神奈川県立近代美術館で回顧展、国内外で多数個展開催。
No.21 関根伸夫《黒い人》
No.21
関根伸夫
《黒い人》
1975年
シルクスクリーン
イメージサイズ：48.2×42.9cm
シートサイズ： 63.5×45.5cm
Ed.75
サインあり
No.22 関根伸夫《絵空事－鳥居》
No.22
関根伸夫
《絵空事－鳥居》
1975年
シルクスクリーン
イメージサイズ：45.0×35.0cm
シートサイズ： 62.5×45.5cm
Ed. 75
サインあり
北川フラムにいきなり関根伸夫作品集（カタログレゾネに近い気分の）の編集を依頼された。こちらは美術のことは何も知らない。関根という人にもそのとき初めて会ったのだと思う。どういうアーティストなのかを順を追って自分なりに理解するプロセスが、そのままページに反映される。そんな編集で本になっていった。
その作業を通してすぐ分かったのは、関根さんはじつに編集者でもあることだ。こちらの意図を理解する速さと的確さ。2018年久しぶりに関根さんと綿貫さん御夫妻との会食に同席させてもらったとき、私はまた《位相―大地》で掘り抜いた円筒形の穴とその横に積み上げた円筒形の土塊についてしつこく訊き、関根さんはまたも明快にひと言で答えてくれたのだった。（2021）
U「あ 思い出した」『Uコレクション展関連ファイル』（2021年、ときの忘れもの発行）より
■関根伸夫 Nobuo SEKINE（1942-2019）
埼玉県生まれ。68年多摩美術大学大学 院油画研究科卒業。同大学で斉藤義重に師事。第８回 現代美術展、 神戸須磨離宮公園現代彫刻展、第５回長岡現代美術館賞展などで次々と受賞。美術界に旋風を巻き起こす。日本 発の現代 美術ムーブメント[もの派]を代表する作家として活躍する。70年ヴェニス・ビエンナーレ出品。73年環境 美術研究 所設立。78年デンマーク・ルイジアナ美術館他でヨーロッパ巡回展を開催。
須磨の公園の大地に大きな穴(円筒)をスコップで ひたすら掘り、掘り出した土をその穴の脇に円筒形に 積み上げた [位相ー大地]。彫刻の既成概念をひっくり返したこの作品は数週間の命で、人々の記憶にしか残りません。も し延々と その作業を続けたとしたら地球の中身は空っぽになり、隣にまったく同じ地球が生まれます。位相幾何学を援用 した思考 実験ともいうべき壮大なスケールのこの作品で関根先生は一躍スターとなりました。
＊画廊亭主敬白
上掲U氏が編集した『関根伸夫1968-78』作品集については、以前にも楽しいエッセイを書かれています。詳しくは全文をお読みいただきたいのですが、その最後の段落をちょっと引用しましょう。
＜この本づくりを通して植田も関根のファンになったのはもちろんですが、この編集費は、なんと関根作品のなかでもとりわけ魅力的な石彫「コレは又、何かと見れば思ふツボ」。ちょっと高すぎる報酬を、北川が作家のアトリエから分捕ってきた次第。この本は企画の関根伸夫後援会と現代版画センターの協力で実現したのですが、「買う」ことを知った植田が、このあと、版画センター主宰の綿貫不二夫から、駒井哲郎の「空地」を譲り受けた瞬間、現在までに至る、それまで思いもかけなかったささやかな道楽が始まってしまったのでした。＞
---------------------------------
展覧会カタログ『Uコレクション関連ファイル』
2021年11月26日発行
ときの忘れもの刊
B5変形サイズ、52頁、価格880円（税込み）
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先（住所）」を明記してください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込５丁目４の１ LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会（Web展）を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン＜コラージ2017年12月号18～24頁＞の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間＝火曜～土曜の平日11時～19時。＊日・月・祝日は休廊。
会期＝2021年11月26日［金]―12月11日［土］ 11:00-19:00 ※日・月・祝休
建築界で長年活躍されているU氏は、編集者としての仕事や建築批評のほかに、美術についてのエッセイや展覧会レビューも手がけ、またその共感を示すコレクターでもありました。
このたびそのコレクションから21作家の24点を選び、52頁に及ぶカタログでは、U氏と草間彌生さんとの対談（1983年）や今までの評論の再録と併せて、新たにそれぞれの作家について綴った覚え書きを収録しています。
●出品21作家・全24点ついてブログで詳しく掲載します。
11月24日／前川千帆、谷中安規、吉田政次
11月26日／ダリ、リキテンスタイン、ウォーホル
11月27日／一原有徳、木原康行、森ヒロコ
11月28日／草間彌生
11月29日／横尾忠則、倉俣史朗、ティニ・ミウラ
12月2日／磯崎新、宮脇愛子、関根伸夫
12月4日／海老原喜之助、アルビン・ブルノフスキ、
12月6日／若林奮、井上直久、山本容子
本日は、磯崎新、宮脇愛子、関根伸夫についてU氏の覚書「あ 思い出した」からご紹介します。
No.13 磯崎新 "ARATA ISOZAKI RETROSPECTIVE ART NET LONDON JUNE23-JULY10"
No.13磯崎新
"ARATA ISOZAKI RETROSPECTIVE ART NET LONDON JUNE23-JULY10"
1976
シルクスクリーン
39.5×59.3cm／39.5×59.3cm
サインあり
No.14 磯崎新＋［宮脇愛子］ "MIYAWAKI Aiko Sculpture 1968-1976 Displayed by ISOZAKI Arata, Organized by METAL FACTORY AOKI Cooperated by TOKYO GALLERY"
No.14磯崎新＋［宮脇愛子］
"MIYAWAKI Aiko Sculpture 1968-1976 Displayed by ISOZAKI Arata, Organized by METAL FACTORY AOKI Cooperated by TOKYO GALLERY"
オフセット
イメージサイズ：42.0×59.2cm
シートサイズ：42.0×59.2cm
いきなり建築図面、つまり平・断面や透視図をそのままに版画作品として世に出したのは、磯崎新である。あっと思った。虚を衝かれた。それまでは建築家がたまにつくるアートといえば、やはり建築図面を出すとしてもそれらしくは見られないために図面の線のあちこちを消したり足したり、大仰に影をつけたり、ときには余技との解釈のうえで、風景画や静物画を出展することだってあったのだ。
磯崎の建築図版画で驚いたのは、並みのアートよりよほど冴えていたからだ。だけではない。建築家の思想の核心にある、例えば廃墟と化した建築や都市のイメージは専門領域におけるプレゼンテーションとして説明的副次的に見られがちだったのが、アートとしてシルクやリトグラフ印刷になった瞬間、時代の最前線に直ぐ位置付けられた。つまり、平・断面や透視図と、先に言ったけれども、ただの建築図面では、シルクやリトグラフで印刷してもアートになるわけではない。また実現できないような建築という範疇に限ってのことでもない。磯崎による初期（ 1 9 6 0 年代）の大分医師会館、中山邸、福岡相互銀行大分支店などは実際にまちのなかに姿を現しても容易に理解されなかった。その建築の声はアートを通して急に聞こえてきた。そのような建築だった。
建築家の方々によるアート作品はほとんど手元にない。だが手元に小さな明かりを持つ気持ちで、磯崎さんの小さなポスター2点だけとりあえず。（2021）
U「あ 思い出した」『Uコレクション展関連ファイル』（2021年、ときの忘れもの発行）より
■磯崎新（b.1931）
建築家。大分生まれ。1954年東京大学卒業。1961年東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。1963年磯崎新アトリエを設立。建築のみならず、思想、美術、デザイン、映画などの国際的な舞台で活躍。評論や設計競技の審査を通じて、世界のラディカルな建築家たちの発想を実現に導くうえでのはかり知れない支援を果たしてきた。日本を代表するとともに、世界の建築界で最も信頼されている建築家である。
■宮脇愛子（1929-2014）
東京生まれ。1952年日本女子大学文学部史学科卒業。阿部展也、斎藤義重に師事。1957-1966年欧米各地に滞在。真鍮、石、ガラスを用いた立体作品のほか油彩や墨絵を制作。代表的な彫刻《うつろひ》は、モンジュイック・オリンピック広場（バルセロナ）、ラ・デファンス（パリ）、奈義町現代美術館など世界各地にコレクションされている。1998年神奈川県立近代美術館で回顧展、国内外で多数個展開催。
No.21 関根伸夫《黒い人》
No.21関根伸夫
《黒い人》
1975年
シルクスクリーン
イメージサイズ：48.2×42.9cm
シートサイズ： 63.5×45.5cm
Ed.75
サインあり
No.22 関根伸夫《絵空事－鳥居》
No.22関根伸夫
《絵空事－鳥居》
1975年
シルクスクリーン
イメージサイズ：45.0×35.0cm
シートサイズ： 62.5×45.5cm
Ed. 75
サインあり
北川フラムにいきなり関根伸夫作品集（カタログレゾネに近い気分の）の編集を依頼された。こちらは美術のことは何も知らない。関根という人にもそのとき初めて会ったのだと思う。どういうアーティストなのかを順を追って自分なりに理解するプロセスが、そのままページに反映される。そんな編集で本になっていった。
その作業を通してすぐ分かったのは、関根さんはじつに編集者でもあることだ。こちらの意図を理解する速さと的確さ。2018年久しぶりに関根さんと綿貫さん御夫妻との会食に同席させてもらったとき、私はまた《位相―大地》で掘り抜いた円筒形の穴とその横に積み上げた円筒形の土塊についてしつこく訊き、関根さんはまたも明快にひと言で答えてくれたのだった。（2021）
U「あ 思い出した」『Uコレクション展関連ファイル』（2021年、ときの忘れもの発行）より
■関根伸夫 Nobuo SEKINE（1942-2019）
埼玉県生まれ。68年多摩美術大学大学 院油画研究科卒業。同大学で斉藤義重に師事。第８回 現代美術展、 神戸須磨離宮公園現代彫刻展、第５回長岡現代美術館賞展などで次々と受賞。美術界に旋風を巻き起こす。日本 発の現代 美術ムーブメント[もの派]を代表する作家として活躍する。70年ヴェニス・ビエンナーレ出品。73年環境 美術研究 所設立。78年デンマーク・ルイジアナ美術館他でヨーロッパ巡回展を開催。
須磨の公園の大地に大きな穴(円筒)をスコップで ひたすら掘り、掘り出した土をその穴の脇に円筒形に 積み上げた [位相ー大地]。彫刻の既成概念をひっくり返したこの作品は数週間の命で、人々の記憶にしか残りません。も し延々と その作業を続けたとしたら地球の中身は空っぽになり、隣にまったく同じ地球が生まれます。位相幾何学を援用 した思考 実験ともいうべき壮大なスケールのこの作品で関根先生は一躍スターとなりました。
＊画廊亭主敬白
上掲U氏が編集した『関根伸夫1968-78』作品集については、以前にも楽しいエッセイを書かれています。詳しくは全文をお読みいただきたいのですが、その最後の段落をちょっと引用しましょう。
＜この本づくりを通して植田も関根のファンになったのはもちろんですが、この編集費は、なんと関根作品のなかでもとりわけ魅力的な石彫「コレは又、何かと見れば思ふツボ」。ちょっと高すぎる報酬を、北川が作家のアトリエから分捕ってきた次第。この本は企画の関根伸夫後援会と現代版画センターの協力で実現したのですが、「買う」ことを知った植田が、このあと、版画センター主宰の綿貫不二夫から、駒井哲郎の「空地」を譲り受けた瞬間、現在までに至る、それまで思いもかけなかったささやかな道楽が始まってしまったのでした。＞
---------------------------------
展覧会カタログ『Uコレクション関連ファイル』2021年11月26日発行
ときの忘れもの刊
B5変形サイズ、52頁、価格880円（税込み）
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先（住所）」を明記してください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込５丁目４の１ LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会（Web展）を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン＜コラージ2017年12月号18～24頁＞の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間＝火曜～土曜の平日11時～19時。＊日・月・祝日は休廊。
コメント