都内で開催中の二つの展覧会に行ってきました。

●「オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動
会期=2022年1月22日(土)- 3月21日(月・祝)*会期中無休
会場=3331 Arts Chiyoda メインギャラリー(1F)、sagacho archives(B1F)、B111(B1F)/ほか
主催=3331 Arts Chiyoda

flyer_a

flyer_b

2010年に旧千代田区立練成中学校を改修して誕生したアートセンター「アート千代田3331」で開催中の「オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動」に行ってきました。
小池一子さんは、1980年に「西友」のプライベートブランドとして誕生した「無印良品」の創設にコピーライターとして携わり、現在もアドバイザリーボードの1人を務めています。経済が上昇し、DCブランドという個性的なファッションが流行している中、「無印良品」は「ノーブランド」「グッドプロダクト」という意味で、モノそのものの価値を伝えるだけ、飾らない姿勢を提唱し、当時話題になったのではと想像します。
当時の「無印良品」のポスターが壁面にずらりと並び、飾らず、シンプルなメッセージに引き寄せられます。ポスターに「割れしいたけ」という言葉が度々使われており、なぜ「割れしいたけ」?と思いましたが、無印良品は生産過程や輸送中に欠けたり、割れたりしたしいたけに着目し、味は変わらないのに正規の流通ルートに乗らないという業界の通念が自主規制のようになっていたことに疑問を持ち、アンチテーゼを打ち出そうという思想が込められているそうです。「割れしいたけ」はそれを具体化した例だそうです。
また、当時から地球環境問題についても考えており、クラフト紙に一色印刷するポスターを制作しています。
「無印良品」は主張しないシンプルなデザインのため、どこにでも馴染みやすく、私もたくさん愛用していますが、今回、無印良品の誕生背景など知り、ますます無印良品のファンになりました。

そして、小池一子さんは1983年に佐賀町(江東区佐賀町)に「佐賀町エキジビット・スペース」という美術館でもコマーシャルギャラリーでもない日本初のオルタナティブ・スペースを主宰していました。近代建築の食糧ビル3階を、スーパーポテト(杉本貴志さん)の監修でリノベーションし、展示スペースに生まれ変わらせたそうです。まだ評価の定まっていない美術家やキャリアのない若手作家、海外の作家を積極的に紹介し、2000年までの17年の間に400人以上のアーティストが参加し、全106回の展覧会を開催。会場には展覧会のカタログやパンフレットなどの制作物と、当時展示を行った作家の作品が展示されていました。
その中で、シュウゾウ・アヅチ・ガリバーさんの《肉体契約》にはちょっとドキッとしました。作家死後に自身の体を80の部位に分割し、契約を交わした80人に保管を委ねるという企画と演出で、1984年の佐賀町での展覧会で「最後の晩餐」のごとくテーブルに着席し、契約を交わしたそうです。2月11日には小池一子さんがガリバーさんの薬指をもらう契約書を交わすイベントがあったのですが・・・
会場には杉本博司さんや森村泰昌さんなどによるインタビューもあり必見です。

その他に、小池一子さんが1959年以降、コピーライター、編集者、クリエイティブ・ディレクターとして携われた仕事を多数展示。印象的だったのは、デザイナー田中一光さんとコピーライター小池一子さんによる写植会社のポスター。一面に漢字や平仮名など文字が並んでおり、お二人が言葉遊びをしながらアイデアを出し合っている姿が目に浮かぶようで、言われないと気付かない文字のチョイスや配列はセンスがあり、さすがでした。
小池一子さんの仕事を是非ご覧ください。

次にアーティゾン美術館の内覧会にも伺いました。

はじまりから、いま。 1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡—古代美術、印象派、そして現代へ
会場=アーティゾン美術館
会期=2022年1月29日[土] - 4月10日[日]
休館日=月曜日(3月21日は開館)、3月22日
出品リスト

ブリヂストン美術館が5年間の休館と改名を経て2020年にオープン。1952年のブリヂストン美術館開館から70年の歴史を持つアーティゾン美術館の軌跡を、約170点の作品と資料とで紹介する本展にはこれまで開催した展覧会のポスターや開館以来続く土曜講座の記録、美術映画シリーズ、石橋正二郎の欧米外遊記録などさまざまな資料が展示されていました。
IMG_96811950年代の展覧会のポスターは、タイポグラフィがレトロで、素敵です。

IMG_9682松本竣介の油彩《運河風景》が展示されていました。

IMG_E9690950-660 B.C.の《聖猫》は、私の魂が引き寄せられた作品。

IMG_9688原色が使われていないピート・モンドリアンの作品《砂丘》がとても素敵でした。

IMG_9689印象派のエドゥアール・マネのタッチと黒が印象的で好きでした。

IMG_9683ブリヂストン美術館が過去70年間で開催してきた土曜講座の講師の記録があり、建築家の前川國男、坂倉準三、吉田五十八、磯崎新、また、久保貞次郎、瀬木慎一、他、錚々たるメンバーで、この講師名前一覧を見るだけでも圧巻です。70年の間には開催することを憚れる時期もあったと思いますが、続けることの大切さを痛感しました。
おだち れいこ

●本日のお勧めは瀧口修造です。
瀧口修造_V-08(187)No.24 瀧口修造《Ⅴ- 08
1962年
水彩、インク、紙
33.5×21.0cm/37.5×29.0cm
裏面に年記、タイトルあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください