フルクサス新聞はジョージ・マチューナスによって1~11号まで発行されました。
ただいま開催中の「塩見允枝子+フルクサス」展ではスペースの都合で1~9号までを展示していますが、10号、11号もあり、全号揃っています。
本日は1号~6号までをご紹介します。
<マチューナスは新聞もたくさん発行しました。内容はこうしたマルチプルの広告や企画中のコンサート、或いは既に行われたコンサートの記録などが主ですが、そのデザインの独特の魅力が、フルクサスを今日まで生き残らせた要因の一つにもなっているのではないかという気がします。一見クラシカルでありながら、いつまでも斬新だからです。新聞も普通のサイズだけでなく、非常に細長いものもあります。
こうした印刷物を発行するには、彼がアップタウンのデザイン事務所で働いて得た収入の90%を費やしていたのですよ。作家に対して出版費用を要求したことは一度もありません。食費を倹約し、何の贅沢をするでもなく、彼が信奉していた境界のないアート、ジャンルの壁もなく、専門家と素人の区別もなく、皆が日常の中で楽しめるアートを普及させたいという夢のために、生涯を捧げたのです。
塩見允枝子・本展カタログ『塩見允枝子+フルクサス』4頁より>
出品No.50
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #1)FLUXUS cc V TRE FLUXUS, No.1


1964.1 紙に両面印刷 58.0×86.7 cm
1964年1月に発行されたフルクサス新聞の第1号。タイトルの「cc V TRE」の下には1枚80セント、年間購読6ドルと書かれています。紙面の大半が掲載の向きすら問わず所属作家の作品紹介で埋め尽くされる中、第1面の右側に塩見允枝子の《エンドレス・ボックス》(20ドル)を含む通販作品と、3月~5月開催のフルックスフェスティバルの紹介が掲載されています。
出品No.51
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #2)FlUXUS cc V TRE FLUXUS, No.2


1964.2 紙に両面印刷 58.0×87.0 cm
第1号に倣い、第一面のタイトル「cc V TRE」の右下にフルクサスショップの通販作品と、3月~5月開催のフルックスフェスティバルの紹介が掲載されています。中面の中央下には、塩見允枝子の「EVENT IN THE MIDDAY IN THE SUNLIGHT」が掲載されています。
出品No.52
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #3)Fluxus cc Valise eTRanglE, No.3


1964.3 紙に両面印刷 57.8×86.8 cm
この号から新聞のタイトルが「cc Valise eTRanglE」に変わり、以降、毎号タイトルが変わるようになります。また、一部あたりの価格が25セントに値下げされ、年間購読価格は記載されなくなりました。レイアウトも1号と2号で使用していたフォーマットから離れ、中面全体が2分割されてフルックスショップの通販とフルクサスコンサートの広告に使用されています。
出品No.53
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #4)FLuxus cc fiVe ThReE, No.4


1964.6 紙に両面印刷 57.9×87.2 cm
一般的な新聞のような記事レイアウトの第1面は、ナム・ジュン・パイクの自作品についての解説と、ジョージ・ブレクトによるフルクサスの解説という文字だけの構成となっており、残りの3面はそれに反するように通販とオーケストラの広告すらビジュアルを前面に押し出したデザインとなっています。
出品No.54
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #5)FLUXUS VacuumTRapEzoid


1965.3 紙に両面印刷 58.0×86.8 cm
*塩見允枝子サイン入りポストカード付き
第4号から9か月後に刊行されたこの第5号以降は新聞という体裁に拘らないことにしたのか、第1面のデザインも毎号大きく異なるようになります。また、価格表記も表示されなくなりました。第3面を全面使った通販告知には異なる字体で作品を販売している作家の名前が掲載されており、今まで文字の説明のみだった作品にイラストが描かれています。
<4面の内容は全て異なり、コンサートの告知や、作家達の作品の広告、又、一面が一つのデザインによる頁などで構成されています。Trapezoid は台形の意味。
(『塩見允枝子+フルクサス』「主要作品解説」(執筆:塩見允枝子)より)>
出品No.55
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #6)FLuXus Vaudeville TouRnamEnt, No.6


1965.7 紙に両面印刷 57.0×89.0 cm
*塩見允枝子サイン入りポストカード付き
多数のイヴェント写真で第1面が構成された、資料的側面が強い第6号。タイトルの「FLuXus Vaudeville TouRnamEnt」は少々お下劣なイラストと一緒に小さく掲載されています。渦を巻くように配置された画像の中で、楽譜を風に吹かれるままに任せる塩見允枝子の"Wind music"の演奏前後の写真が、紙面左上に掲載されています。
<1964年6月27日にカーネギー・リサイタル・ホールで行われたFluxus Symphony Orchestra Concert の演奏風景を撮影した多数の写真を始め、その他の場所でのパフォーマンスや日本のハイ・レッド・センターの「路上清掃イヴェント」の写真までが紙面一杯に並んでいます。トーナメントというタイトルは、様々なパフォーマンスの競演という意味でしょう。その隣の面には、それらの写真の中の一枚がドット状に拡大され、色の薄い部分にはコンサートのプログラムが書き込まれています。又、裏面にはNew Cinematheque で行なう予定のコンサート・スケジュールが大きな円形のデザインで描かれていますが、その日程で実際に行なわれたかどうかは不明です。
(『塩見允枝子+フルクサス』「主要作品解説」(執筆:塩見允枝子)より)>
以上、1号から6号までをご紹介しました。
7号から最終11号までは、9月13日のブログでご紹介します。
*画廊亭主敬白
「塩見允枝子+フルクサス」展がおかげさまで好評です。特に嬉しいのはカタログがよく売れていることです。画廊風情が110頁のカタログを刊行するなんて無謀もいいところなのですが、フルクサスが注目されているわりには日本語の文献(誰にでも手に入る)が極端に少ないので敢えて冒険した次第です。フルクサスの文献では塩見允枝子先生の名著『フルクサスとは何か』(2005年、フィルムアート社刊)と、うらわ美術館の「フルクサス展」(2004年)カタログがありますが、ともに稀覯本となってしまい、日本の古本屋のサイトでもめったに出ません。ちょうどいまうらわ美術館のカタログで出品されていますが、何と¥43,320!異常な高値です。
今回の私どものカタログは限定版(Ed.365)3,300円、アタッシェケース入り特装版(Ed.35)27,500円です。どうぞ手にとってご覧ください。
<図録は解説など入っていてありがたい。塩見允枝子の「フルクサスの回想」文章。「究極の音楽」展示では楽譜もあったがまとまっていて、図録では楽譜一つずつちゃんと見せてる……じゃないな、今Webサイト見たらちゃんと一つずつ展示になってたじゃん(ちゃんと観てないのか?)。まあでも、家でその楽譜のありようをじっくり確認できるのはいいではないか。あと「インターメディアアートフェスティバル」のポスター。情報量が非常に多いのだが、それも図録ではちゃんと字も読めるような写真になっている。とにかくフルクサス関連の情報がほしかったので、こいつぁありがたい。フルクサス新聞も載っている。ギリギリアルファベットが判読できる……いやちょっとキツいが、どのみち英語分からん。
情報量はなかなかのものだ。これでフルクサスがどんなものだったかが分かってくれば、私のパフォーマンスにも新しい方向が生まれるかもしれないというものだ(現在行き詰まっておる)。
(紀ノ川つかささんの「春波浪雑記」より再録させていただきました)>
●「塩見允枝子+フルクサス」展
会期=2022年9月2日(金)~9月17日(土)※日・月・祝日休廊
『塩見允枝子+フルクサス』展開催を記念し、カタログ(限定365部、価格:3,300円)と、アタッシェケース入りの特装版(限定35部、27,500円)を刊行しました。詳しい内容は8月28日ブログをご参照ください。
ただいま開催中の「塩見允枝子+フルクサス」展ではスペースの都合で1~9号までを展示していますが、10号、11号もあり、全号揃っています。
本日は1号~6号までをご紹介します。
<マチューナスは新聞もたくさん発行しました。内容はこうしたマルチプルの広告や企画中のコンサート、或いは既に行われたコンサートの記録などが主ですが、そのデザインの独特の魅力が、フルクサスを今日まで生き残らせた要因の一つにもなっているのではないかという気がします。一見クラシカルでありながら、いつまでも斬新だからです。新聞も普通のサイズだけでなく、非常に細長いものもあります。
こうした印刷物を発行するには、彼がアップタウンのデザイン事務所で働いて得た収入の90%を費やしていたのですよ。作家に対して出版費用を要求したことは一度もありません。食費を倹約し、何の贅沢をするでもなく、彼が信奉していた境界のないアート、ジャンルの壁もなく、専門家と素人の区別もなく、皆が日常の中で楽しめるアートを普及させたいという夢のために、生涯を捧げたのです。
塩見允枝子・本展カタログ『塩見允枝子+フルクサス』4頁より>
出品No.50
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #1)FLUXUS cc V TRE FLUXUS, No.1


1964.1 紙に両面印刷 58.0×86.7 cm
1964年1月に発行されたフルクサス新聞の第1号。タイトルの「cc V TRE」の下には1枚80セント、年間購読6ドルと書かれています。紙面の大半が掲載の向きすら問わず所属作家の作品紹介で埋め尽くされる中、第1面の右側に塩見允枝子の《エンドレス・ボックス》(20ドル)を含む通販作品と、3月~5月開催のフルックスフェスティバルの紹介が掲載されています。
出品No.51
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #2)FlUXUS cc V TRE FLUXUS, No.2


1964.2 紙に両面印刷 58.0×87.0 cm
第1号に倣い、第一面のタイトル「cc V TRE」の右下にフルクサスショップの通販作品と、3月~5月開催のフルックスフェスティバルの紹介が掲載されています。中面の中央下には、塩見允枝子の「EVENT IN THE MIDDAY IN THE SUNLIGHT」が掲載されています。
出品No.52
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #3)Fluxus cc Valise eTRanglE, No.3


1964.3 紙に両面印刷 57.8×86.8 cm
この号から新聞のタイトルが「cc Valise eTRanglE」に変わり、以降、毎号タイトルが変わるようになります。また、一部あたりの価格が25セントに値下げされ、年間購読価格は記載されなくなりました。レイアウトも1号と2号で使用していたフォーマットから離れ、中面全体が2分割されてフルックスショップの通販とフルクサスコンサートの広告に使用されています。
出品No.53
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #4)FLuxus cc fiVe ThReE, No.4


1964.6 紙に両面印刷 57.9×87.2 cm
一般的な新聞のような記事レイアウトの第1面は、ナム・ジュン・パイクの自作品についての解説と、ジョージ・ブレクトによるフルクサスの解説という文字だけの構成となっており、残りの3面はそれに反するように通販とオーケストラの広告すらビジュアルを前面に押し出したデザインとなっています。
出品No.54
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #5)FLUXUS VacuumTRapEzoid


1965.3 紙に両面印刷 58.0×86.8 cm
*塩見允枝子サイン入りポストカード付き
第4号から9か月後に刊行されたこの第5号以降は新聞という体裁に拘らないことにしたのか、第1面のデザインも毎号大きく異なるようになります。また、価格表記も表示されなくなりました。第3面を全面使った通販告知には異なる字体で作品を販売している作家の名前が掲載されており、今まで文字の説明のみだった作品にイラストが描かれています。
<4面の内容は全て異なり、コンサートの告知や、作家達の作品の広告、又、一面が一つのデザインによる頁などで構成されています。Trapezoid は台形の意味。
(『塩見允枝子+フルクサス』「主要作品解説」(執筆:塩見允枝子)より)>
出品No.55
フルクサス新聞( Fluxus Newspaper, #6)FLuXus Vaudeville TouRnamEnt, No.6


1965.7 紙に両面印刷 57.0×89.0 cm
*塩見允枝子サイン入りポストカード付き
多数のイヴェント写真で第1面が構成された、資料的側面が強い第6号。タイトルの「FLuXus Vaudeville TouRnamEnt」は少々お下劣なイラストと一緒に小さく掲載されています。渦を巻くように配置された画像の中で、楽譜を風に吹かれるままに任せる塩見允枝子の"Wind music"の演奏前後の写真が、紙面左上に掲載されています。
<1964年6月27日にカーネギー・リサイタル・ホールで行われたFluxus Symphony Orchestra Concert の演奏風景を撮影した多数の写真を始め、その他の場所でのパフォーマンスや日本のハイ・レッド・センターの「路上清掃イヴェント」の写真までが紙面一杯に並んでいます。トーナメントというタイトルは、様々なパフォーマンスの競演という意味でしょう。その隣の面には、それらの写真の中の一枚がドット状に拡大され、色の薄い部分にはコンサートのプログラムが書き込まれています。又、裏面にはNew Cinematheque で行なう予定のコンサート・スケジュールが大きな円形のデザインで描かれていますが、その日程で実際に行なわれたかどうかは不明です。
(『塩見允枝子+フルクサス』「主要作品解説」(執筆:塩見允枝子)より)>
以上、1号から6号までをご紹介しました。
7号から最終11号までは、9月13日のブログでご紹介します。
*画廊亭主敬白
「塩見允枝子+フルクサス」展がおかげさまで好評です。特に嬉しいのはカタログがよく売れていることです。画廊風情が110頁のカタログを刊行するなんて無謀もいいところなのですが、フルクサスが注目されているわりには日本語の文献(誰にでも手に入る)が極端に少ないので敢えて冒険した次第です。フルクサスの文献では塩見允枝子先生の名著『フルクサスとは何か』(2005年、フィルムアート社刊)と、うらわ美術館の「フルクサス展」(2004年)カタログがありますが、ともに稀覯本となってしまい、日本の古本屋のサイトでもめったに出ません。ちょうどいまうらわ美術館のカタログで出品されていますが、何と¥43,320!異常な高値です。
今回の私どものカタログは限定版(Ed.365)3,300円、アタッシェケース入り特装版(Ed.35)27,500円です。どうぞ手にとってご覧ください。
<図録は解説など入っていてありがたい。塩見允枝子の「フルクサスの回想」文章。「究極の音楽」展示では楽譜もあったがまとまっていて、図録では楽譜一つずつちゃんと見せてる……じゃないな、今Webサイト見たらちゃんと一つずつ展示になってたじゃん(ちゃんと観てないのか?)。まあでも、家でその楽譜のありようをじっくり確認できるのはいいではないか。あと「インターメディアアートフェスティバル」のポスター。情報量が非常に多いのだが、それも図録ではちゃんと字も読めるような写真になっている。とにかくフルクサス関連の情報がほしかったので、こいつぁありがたい。フルクサス新聞も載っている。ギリギリアルファベットが判読できる……いやちょっとキツいが、どのみち英語分からん。
情報量はなかなかのものだ。これでフルクサスがどんなものだったかが分かってくれば、私のパフォーマンスにも新しい方向が生まれるかもしれないというものだ(現在行き詰まっておる)。
(紀ノ川つかささんの「春波浪雑記」より再録させていただきました)>
●「塩見允枝子+フルクサス」展
会期=2022年9月2日(金)~9月17日(土)※日・月・祝日休廊
『塩見允枝子+フルクサス』展開催を記念し、カタログ(限定365部、価格:3,300円)と、アタッシェケース入りの特装版(限定35部、27,500円)を刊行しました。詳しい内容は8月28日ブログをご参照ください。
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