アンディ・ウォーホル(Andy Warhol、1928年8月6日 - 1987年2月22日)が亡くなって35年が経ちました。
生まれて初めてパスポートをとりNYに渡りウォーホルと数十ページにわたる契約書を交わし「KIKU」「LOVE」の版画シリーズを制作したのがつい昨日のことのように思い出されます。
森下泰輔さんの連載エッセイ「ウォーホルと栗山豊の時代」の主人公・栗山豊はその14年後の2001年2月22日奇しくもウォーホルの命日に路上で倒れ55歳の生涯を終えたました(1946-2001)。

1979年都知事選秋山祐徳太子と栗山豊
1979年東京都知事選に立候補した秋山祐徳太子を担ぐ栗山豊
*左、帽子と皮ジャン姿(ギャラリー58刊『1975/1979秋山祐徳太子と東京都知事選挙』より)

生涯、新宿などで夜の街角に立つ似顔絵かきでした。アルコールと不摂生な生活が体を蝕み、おそらく自らの短命を予感していたのか、亡くなる少し前にときの忘れものにドサッと資料の山を持ち込み「ボクが持っているよりワタヌキさんが役立てて欲しい」と栗山ファイルを託していったのでした。
栗山は1960年代からアンディ・ウォーホルに関するカタログはもちろん、新聞、雑誌、広告、展覧会の半券、テレビコマーシャル、中には珍しいジャズ喫茶のマッチ箱まで幅広いメディアを網羅してウォーホルに関する情報を蒐集していました。
栗山豊資料 (44)

栗山豊資料 (46)

栗山豊資料 (29)

栗山豊資料 (39)

栗山豊資料 (45)

栗山豊資料 (25)

栗山豊資料 (15)

栗山豊資料 (49)

遺された膨大なウォーホル資料は日本におけるウォーホル受容史の貴重な記録であり、1983年に現代版画センターが企画した「アンディ・ウォーホル全国展」はじめ、その後のウォーホル回顧展の重要な基礎資料としても使われています。
その最初の成果物が栗山豊が編集委員として参加した『アンディ・ウォーホル展 1983~1984』オリジナル版画入りカタログでした(1983年6月、現代版画センター刊)。
現代版画センターの倒産で、このカタログは不運な運命をたどりますが、このたび栗田秀法先生によるレビュー<現代版画センターの冒険の縮図としての「アンディ・ウォーホル展 1983~1984」図録>をブログに掲載することができました。

scan_omote『アンディ・ウォーホル展 1983~1984』オリジナル版画入りカタログ
発行日:1983年 6月7日
発行人:綿貫不二夫
発行所:現代版画センター
編集:『アンディ・ウォーホル展 1983~1984』編集委員会
(宮井陸郎・栗山豊・根本寿幸・田村洋子・綿貫不二夫) 
編集協力:星野治樹(水夢社)・古谷卓夫 
写真:安齊重男、酒井猛、田中誠一、他 
28.5×21.5cm 184P

ウォーホルKIKUカタログ挿入作品カタログに挿入されたアンディ・ウォーホルの「KIKU(小)」(1983年 シルクスクリーン/刷り:石田了一) 
184頁の分厚いカタログにはウォーホルの図版はもちろん栗山豊による「日本におけるウォーホル紹介の記録」などが収められていますが、さらに特筆したいのは各界を代表する170人もの人たちが「私のウォーホル」を執筆していることです。

簡単にこのカタログの編集経緯を記すと(当時の編集メモに基づく)、
前年秋(1982年)ウォーホルにエディション制作と展覧会開催を依頼して合意に達し、カタログ編集が本格化したのは1983年2月5日(第一回編集会議)でした。
宮井陸郎さん・栗山豊さん・根本寿幸さん(ウォーホル三人衆)たち編集委員が練りに練った案は、各分野を代表する人たちに「私のウォーホル」を語っていただくというものでした。
1983年3月1日の第4回編集会議を経て、226名の方に執筆依頼状を郵送しました。当時はパソコンもネットもありませんから、すべて手書き(綿貫令子の字)です。
締切を3月25日としていますので、僅か20日余の時間しかなく、今思うと無謀の極みです。もちろん編集委員が手分けして電話をかけまくりました。
その結果、170名の方が執筆してくださいました。実に75%の方がOKしてくれたわけで、いまさらながらウォーホルの凄さを感じます。
3月25日締切 → 6月7日刊行、正味2か月の突貫作業でした。

執筆して下さったのは以下の170名です。
執筆:東野芳明、石崎浩一郎、日向あき子、青山南、飯田善国、金坂健二、関根伸夫、立川直樹、 寺山修司、針生一郎、宮澤壮佳、宮迫千鶴、横尾忠則、ヨシダ・ヨシエ、

愛川欽也、相澤俊雄、赤瀬川原平、赤塚不二夫、秋山祐徳太子、浅野翼、安土修三、安福信二、荒井由泰、荒木経惟、栗津潔、安斎重男(安齊重男)、安斉儒理、飯塚明、池田満寿夫、石井志津男、石岡瑛子、石田了一、石原悦郎、市川雅、一色与志子、井上保、井上弥須男、岩城義孝、岩谷宏、有為エィンジェル、植田實、牛久保公典、内田繁、枝川公一、おおえまさのり、大沢昌助、太田克彦、大野ノコ、大林宣彦、大宮政郎、大宜味喬志、岡部徳三、岡正夫、 岡本信治郎、奥平イラ、尾崎正教、小野耕世、貝田隆博、柏原園子、桂宏平、金井美恵子、金子國義、川口信介、カワスミ・カズオ、かわなかのぶひろ、河原淳、川本三郎、北島敬三、木村恒久、草間彌生、久保貞次郎、倉垣光孝、久里洋二、黒田征太郎、黒柳徹子、小池一子、幸村真佐男、コシノジュンコ、小島素治、後藤由多加、今野雄二、坂井直樹、坂田栄一郎、佐藤重臣、佐藤忠雄、佐藤千賀子、佐野まさの、佐山一郎、白井佳夫、末井昭、鋤田正義、高梨豊、高橋明子、高橋明彦、高橋亨、高橋康雄、高松次郎、立花ハジメ、田中弘子、田村彰英、谷岡ヤスジ、谷川晃一、近田春夫、手塚真、 戸田正寿、戸村浩、富田敏夫、内藤忠行、中川徳章、長沢節、中田耕治、中村孝、中村直也、奈良彰一、西田考作、野口伊織、野田哲也、萩原朔美、長谷川義太郎、長谷川真紀男、羽永光利、浜田剛爾、浜野安宏、久田尚子、福島恵津子、福田繁雄、藤井邦彦、藤江民、藤本義一、藤原新也、船木仁、牧田喜義、町野親生、松岡和子、松岡正剛、松本俊夫、松山猛、三沢憲司、三宅一生、水原健造、道下匡子、峯村敏明、宮川賢左衛門、宮崎佳紀、武藤直路、村上知彦、室伏哲郎、元永定正、森下泰輔、森永純、森原智子、矢内廣、柳沢伯夫、矢吹申彦、山口勝弘、山田龍宝、よこすか未美、横山道代、吉田カツ、吉田大朋、ヨシダミノル、吉福伸逸、吉村弘、米倉守、ジョセフ・ラブ、渡部重行、中谷芙二子、飯村隆彦、八十島健夫、日野康一

ウォーホルのオリジナル版画が挿入されているので、今では古書価も高額で、若い人には手がとどかない。
11月4日~19日の会期で、アンディ・ウォーホル展 史上最強!ウォーホルの元祖オタク栗山豊が蒐めたものを開催するのでぜひ手にとってご覧(お読み)ください。
アンディ・ウォーホル展_案内状_表面1280

・栗田秀法 「現代版画センターの冒険の縮図としての『アンディ・ウォーホル展 1983~1984』図録
・中谷芙二子 「ウォーホル 東京の夜と朝 」(再録)
・森下泰輔 「私のAndy Warhol体験
・森下泰輔 「ウォーホルと栗山豊の時代
・画廊亭主 「アンディ・ウォーホル『KIKUシリーズ』の誕生
・1983年6月7日 渋谷パルコ「アンディ・ウォーホル展」全国展オープニング
・1983年7月23日 宇都宮大谷「巨大地下空間とウォーホル展」オープニング
・1984年9月1日 韓国ソウルで「アンディ・ウォーホル展」開催
・2012年1月31日 「石岡瑛子さん逝く(私のウォーホル)