小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第61回

〇月〇日
久しぶりに近場で警察官の出動を見る。
万引きで警察を呼ぶと、5、6人、多い時は10人くらい来ることもあるけれど、初めは「警察って暇なのかなー」と思っていた。でも、やっぱり小学生や中学生のときに、自分の万引きで大量の警察官が来ると「や、やばい」と思うらしく、そのインパクトは後々の再犯率に影響するのではないか?とも思うので、それはそれで良い。
ちなみに万引きは絶対に警察に引き渡していたし、これからもそうするだろうが、それは捕まった人に与えるショックの大きさも考慮してのことだ。
警察に引き渡せば、手ぶらで返すことは絶対にない。必ず保護者なり会社や学校の人なり、その人を知る人が引受人にならないと警察から帰れない。もし一人で帰ったら、捕まったショックから何をするかわからない。事実、それで死を選んだ子どももいる。そんなことには、万引きをされた方も、する訳にはいかないのだ。
かといって「まぁ、こんなものか」という程度で帰られても困る。「まぁ、こんなものか」と思った人は、絶対にまた万引きをする。そのくらい中毒性のある行為なのだ、万引きは。何度も何度も繰り返していると、それだけやめるのは困難になるし、しかも捕まる回数が多ければ多いほど、それだけ捕まった時の罰も重くなる。
というわけで、万引きを捕まえた時こそ、「コントロールされた恐怖」が必要なのだと思う。勘違いされてることだけど「万引きは逮捕されない」というのは嘘で、それをするもしないも、実は万引きをされた側の意志次第で、やろうと思えば、警察官に「え?そこまでするんすか?」と思われても徹底的にやることもできる。弁護士からなんと言われようと何をされようと被害届を下げずに、やるとこまでやれば、裁判まで行く。でも、そんなのイヤじゃないですか?お互い。(ちなみに逮捕案件のときに相手の謝罪を受け入れて勝手に示談にすると、検事さんから怒られる。)
なので、何を言いたいかというと万引きは犯罪です。

ちなみに、たまに警察官を呼んでも一人で来る時もある。
私「今日は少なくないですか?」
警察官「すみません、ちょっと大きな事件で人が足らなくて。」
やっぱり彼らは暇だからたくさん来るのかもしれない。

〇月〇日
マスクについて書く。
え!?いまさら?という話題だけれど、そうです。いまさらです。
最近、マスクをつけずに入ってくる人が増えている。以前はノーマスクの人は中年以降の男性というのに決まっていたが、最近はけっこう老若男女問わない。中には「あーマスク忘れたんだろうなぁ」という人もおり(いわゆるあごマスク状態の人)いちいち指摘するのも面倒くさい。
自分の子どもにもよく言うのだけど、人間はおんなじことを何度も何度も言っているとイライラが募る動物である。その人に指摘するのはたった一回でも、一週間のうちに何度も何度も何度も言っていると「くぉらーーーーー!マスクせいっつってるだろうが!」という気持ちになる。なので、無害と思われるシチュエーション、例えば店内がそれほど混んでいない、喋っていない、すぐ帰りそう、店主がイライラしていない、という時は、見てみないふりをすることもある。「マスクをみんなつけろなんてファッショだ!」という主張も、まぁ、わからないではない。一分くらいの理はあるかもしれない。なんですが、こっちの理屈も言っていいすか?
「ノーマスクの人が店内にいると、ほかのお客さんが逃げちゃうんだよ!」
ノーマスクの人と主義主張で争いたいわけではない。ただ、「マスクをしてください。」っていうのは、しかも売上減るからマスクしてください、っていう零細個人事業主の主張は、ファッショですか?
あーめんどくさ。

〇月〇日
「かけだし本屋・駒込日記」第61回
新年あけましておめでとうございます。
と書いている今は、クリスマスです。
メリークリスマス!年賀状書くのかぁ、これから。
前回「人は何度も何度も同じこと言っているとイライラが募る動物」と書いたのですが、思えばこのブログの原稿は、毎回毎回毎回、綿貫さんから締切過ぎてるとメールをいただいている。そろそろ綿貫さんに殺されるかもしれないくらい、イライラが募っているはず。申し訳ございません。

というわけで、突然ですが、昨日娘の保育園で発表会を観てまいりました。今年の出し物は「ももたろう」。クリスマスぽいですよね。生誕シーンがあるし。
観ていて思ったのですが、人って基本的に困っている時って手助けするものなんですよね。
やっぱり4、5歳の年齢だと、大人よりも大きく個人差がとってもあるわけで、同じことでもうまくやれる子もいれば、どうしてもうまくできない子もいる。でも、大人だとスッと出てこないような「手伝う」手が、子どもの場合は、本当に自然にスッと出てくる。感動しました。
ささくれた出来損ないの大人の日常に爽やかな風が吹いたような出し物で、一年の終わりに良いものを見せてもらった気分です。
さて、2023年はどのような年になるのか。
できれば、爽やかなお店を目指したいと思います。
そのためには片付けないといけないけど。

本年もどうぞよろしくお願いします。

(おくに たかし)

●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」隔月、奇数月5日の更新です。次回は3月5日です。どうぞお楽しみに。

小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●本日のお勧め作品はソニア・ドローネです。
01ソニア・ドローネ Sonia Delaunay
《作品》

リトグラフ
65.0×53.0cm
Ed.75
サインあり

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。