杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第93回
ブロッケンハウス

初雪が降り、いよいよ冬らしくなってきました。気づけば、スイスで10回目の冬を迎えることになります。
僕が初めてこの街に来た時には、一年半の研修をするための滞在許可しか持っていなかったので、当然その後に帰国すると考えていました。そんな仮住まいに近い自宅の家具は、短い期間に使うだけと割り切って中古で買った、ややがらくたに近いものばかりでした。
気づけば毎年滞在を延長し、そうこうする内に10年近く住んでいます。年数だけ聞くと、地に足が着いた生活のように聞こえるのですが、ダイニングの椅子は当時二千円もしなかったものを今まで使い続け、テーブルも合板をEiermannの脚部にのせているだけ。。。
クリスマスが近づくにつれ、多くの人を自宅に招けるように、椅子を増やそうとブロッケンハウス(Brockenhaus)へと向かいました。
ブロッケンハウスは、引っ越しの際などに出る雑貨、家具を引き取って販売しているリサイクルショップです。ここは営利目的というより、社会に適応することに困難を抱えている人たちを積極的に雇っている、福祉施設のように運営していると友人が教えてくれました。
街にある二軒をハシゴしたのですが、なかなか思うものが見つからず、そのまま家に帰ろうと自転車を走らせていると、ブロッケンハウスの文字が。。

そこは、同じブロッケンハウスでも、アンティーク家具を専門に修復して販売しているお店です。上記の意味で通常のブロッケンハウスとは目的が違いますが、古い建物に入ると椅子がズラーっと並んでいました。
話を聞くと、再開発のため、数ヶ月後には立ち退きしなければならないのでセール中だと。お店というよりも、オーナーの女性が一人で修復しながら販売している工房のような雰囲気で興味をそそられたので、少し工房内(店内)を案内してもらいました。
結局、状態の良い中古の椅子を3脚購入することになり、自宅のダイニングも少しだけそれらしく(笑)なってきたように思います。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
●本日のお勧めは杉山幸一郎です。
"Chapel 02"
2020年
ブナ材、梨材、アメリカくるみ材、真鍮、鉛筆削り
4.9×7.0×17.0cm
Ed.1
サインあり
※作品に画像の鉛筆は付属しません。
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ブロッケンハウス

初雪が降り、いよいよ冬らしくなってきました。気づけば、スイスで10回目の冬を迎えることになります。
僕が初めてこの街に来た時には、一年半の研修をするための滞在許可しか持っていなかったので、当然その後に帰国すると考えていました。そんな仮住まいに近い自宅の家具は、短い期間に使うだけと割り切って中古で買った、ややがらくたに近いものばかりでした。
気づけば毎年滞在を延長し、そうこうする内に10年近く住んでいます。年数だけ聞くと、地に足が着いた生活のように聞こえるのですが、ダイニングの椅子は当時二千円もしなかったものを今まで使い続け、テーブルも合板をEiermannの脚部にのせているだけ。。。
クリスマスが近づくにつれ、多くの人を自宅に招けるように、椅子を増やそうとブロッケンハウス(Brockenhaus)へと向かいました。
ブロッケンハウスは、引っ越しの際などに出る雑貨、家具を引き取って販売しているリサイクルショップです。ここは営利目的というより、社会に適応することに困難を抱えている人たちを積極的に雇っている、福祉施設のように運営していると友人が教えてくれました。
街にある二軒をハシゴしたのですが、なかなか思うものが見つからず、そのまま家に帰ろうと自転車を走らせていると、ブロッケンハウスの文字が。。

そこは、同じブロッケンハウスでも、アンティーク家具を専門に修復して販売しているお店です。上記の意味で通常のブロッケンハウスとは目的が違いますが、古い建物に入ると椅子がズラーっと並んでいました。
話を聞くと、再開発のため、数ヶ月後には立ち退きしなければならないのでセール中だと。お店というよりも、オーナーの女性が一人で修復しながら販売している工房のような雰囲気で興味をそそられたので、少し工房内(店内)を案内してもらいました。
結局、状態の良い中古の椅子を3脚購入することになり、自宅のダイニングも少しだけそれらしく(笑)なってきたように思います。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
●本日のお勧めは杉山幸一郎です。
"Chapel 02" 2020年
ブナ材、梨材、アメリカくるみ材、真鍮、鉛筆削り
4.9×7.0×17.0cm
Ed.1
サインあり
※作品に画像の鉛筆は付属しません。
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