杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第96回

リユース

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先月のエッセイではメッセ・バーゼルで開催されたSIWSSBAUについて紹介しました。
そこでのプレゼンテーションを通して知り合った製薬会社ロッシュ(Roche)の方から、リユースをテーマにしたディスカッションに招待されて、ロッシュタワーを訪問してきました。

ロッシュタワーと呼ばれるH&dM(ヘルツォーク&ド・ムーロン)設計のオフィスビルは、バーゼルのどこからでも視認できる、スイスでは珍しい超高層ビルです。近い将来に3本目の建物が建つ予定なのですが、計画敷地には既存建物があって、まずはそれを解体することから始めなければなりません。今の時代、ただ壊すだけでは大量の廃棄物が出てしまうので、建物を解体した部材を使って他の建物に利用するにはどうしたらいいのだろう。というブレインストーミングをしてきました。

建物をどうやって解体することが最も効率よく、部材を綺麗に取り外せるのだろう。
解体した部材をいつ、どこに運ぶのが適切なのだろう。
設計者側は、どんな情報があれば自分達の計画に古い部材をうまく取り込むことができるのだろう。など、今あるリユースのウェブプラットフォームでは、処理できていない点を一歩具体的にさらっていく会になりました。

一緒に参加していた大手構造事務所では、時代の流れを読んで、解体しリユースすることを前提にした解体設計と、その部材の転用プラットフォームの実装を計画していると聞きました。
木造であれば加工もしやすく現場での対応もし易いのですが、CO2を減らすという意味では、コンクリートをどうにかしたい。というのが一番目の課題。建築は部材と部材をどう組み合わせていくか。ということになるので、加工し難いコンクリートでは接合部の設計が課題です。構造設計事務所がその解体過程に噛んでくれば、次に生まれる部材の接合部を考えながら、解体手順を計画することができるのだろうと想像できます。

このディスカッションは来月以降まだ続いていくので、随時ブログでもアップデートしていこうと思います。

(すぎやま こういちろう)

杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

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ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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