この度、縁あって佐藤美弥さんのご著書『創宇社建築会の時代――戦前期都市文化のゆくえ』をご恵贈いただきました。

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創宇社建築会は「百年前の東京に出現したノンエリート建築家集団」。結成時の同人は従弟学校や各種学校を卒業したばかりの20歳前後の若者たちで、関東大震災のわずか2か月後には焼け跡の銀座で第1回展覧会を開催したといいます。

書籍によれば、山口文象を中心に会が結成された背景には「大きなショックの後」で「何か人間が、よびあって助け合っていこうぢゃないかって空気」が醸成されていたことがあったのだそう。創宇社建築会は1920年代を通して、「自己」のための建築から「社会」のためのものへと目指す建築像を転回し、展覧会やジャーナリズムでその姿勢を発信していきます(展覧会は1930年の第8回展が最後)。

しかし、創宇社建築会に関わった建築家たちの活動は一部を除いて、実際の建築作品にはなかなか結実しなかったのだそう。そうした経緯もあって、歴史的評価が長らく曖昧なままだったこの会に、今回、名古屋市立大学大学院人間文化研究科准教授の佐藤美弥(さとう・よしひろ)さんが光を当てられました。

佐藤さんは早稲田大学在学中、万博博覧会の歴史に興味を持ち、1851年ロンドン万博の水晶宮に関して近代建築史を調べていくなかで創宇社建築会の存在を知ったのだそう。『創宇社建築会の時代――戦前期都市文化のゆくえ』には、一橋大学の大学院に提出された博士論文およびその後の研究での成果を大幅に改稿した内容が300頁以上にわたって掲載されています。

竹村文庫での継続的なリサーチにより、従来ほとんど語られることがなかった戦時期の創宇社建築会同人たちの動向についても明らかにした同書。関東大震災、そして創宇社建築会の結成から100年という節目に刊行された渾身の1冊を、どうぞお見逃しなく。

『創宇社建築会の時代――戦前期都市文化のゆくえ』
著書:佐藤美弥
A5判上製
360頁
本体価格:4,900円
2023年3月刊
発行:吉田書店
※ときの忘れもので取り扱っています。ご注文はメールでどうぞ。

●佐藤 美弥(さとう・よしひろ)プロフィール
名古屋市立大学大学院人間文化研究科准教授1979年、秋田県生まれ。2002年、早稲田大学第一文学部史学科卒業。2010年、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科特任講師(ジュニアフェロー)、埼玉県立歴史と民俗の博物館学芸員、埼玉県立文書館学芸員、埼玉県立歴史と民俗の博物館主任学芸員を経て、現職。
論文に、「創造・構成・実践――山口文象と創宇社建築会の意識について」(田路貴浩編『分離派建築会――日本のモダニズム建築誕生』京都大学学術出版会、2020年)、「都市計画反対運動と住民・政党・政治家――槇町線問題の再検討を中心に」(安在邦夫・真辺将之・荒船俊太郎編『近代日本の政党と社会』日本経済評論社、2009年)、「ある「シベリア抑留」のライフストーリー――自分史のなかの戦争の記憶」(三谷孝編『戦争と民衆――戦争体験を問い直す』旬報社、2008年)など。担当展覧会に、企画展「埼玉の自由民権」(埼玉県立歴史と民俗の博物館、2015年)など。
吉田書店HPより)

●本日のお勧め作品は、『銀座モダンと都市意匠』カタログ(地図付)です。
銀座モダン主催:資生堂
会期:1993年3月16日~4月3日
発行:資生堂企業文化部
監修:藤森照信/植田実
デザイン:吉川盛一
テキスト :
藤森照信「銀座の都市意匠と建築家たち」
苫名直子「三岸好太郎のアトリエをめぐって」
山脇道子「わたくしのものさし バウハウスー茶の湯」
谷川正己「短命で果てたF.L.ライトの別荘」
藤谷陽悦「夢と消えた大船田園都市構想」
五十殿利治「モダニズムの批評家 仲田定之助」
高村美佐「装飾美術家協会の人びと」
綿貫不二夫「資生堂ギャラリ-と建築家たち」、他159ページ
図版:392点
付録:[銀座建築マップ101 大正12年~昭和14年]
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初田亨編、協力・三枝進、盛本隆詩
縮尺1:2400
サイズ:75.0×101.5cm
*銀座建築マップは1993年3月16日~4月3日に資生堂ギャラリーで開催された「銀座モダンと都市意匠」展のカタログ別丁資料として発行された。
価格:7,700円(税込み)+送料250円
*ときの忘れもので扱っています。
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内間表紙1200『内間安瑆 Forest Byobu』展図録
発行:ときの忘れもの
発行日:2024年5月17日
サイズ他:25.7×18.2cm、カラー/モノクロ38P
図版:内間安瑆作品26点
テキスト執筆:
長谷見雄二(早稲田大学名誉教授)
水沢勉(美術史家・美術評論家)
比嘉良治(N.Y.ロングアイランド大学名誉教授)
編集:Curio Editors Studio
デザイン:柴田卓
価格:1,650円(税込)+ 送料250円

取り扱い作家たちの展覧会情報(5月ー6月)は5月1日ブログに掲載しました。
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ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。