小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第70回
現在青空古本まつりの真っ最中です。
連日賑わっています。

ようやく涼しくなってきた今ころになって夏の話をしてしまい恐縮ですが、今年も暑い夏でした。しかも長くて、ついさっきまで夏の感じだったのに、急に涼しくなるから困りものです。死にかけました。本屋として。
今年になって何度か伺っていた大きな出張買取も、さすがに「真夏はやめましょう」ということになり、これはうちの店だけだったわけではないようで、先月行われた大市も荷量は少なめ。「こんな夏にお客さんも本屋も買取はやらないんだよ」と話をしていました。
さて、古書の仕入れの話ではなく、新刊の仕入れに関して大きなニュースがありました。
大手取次のトーハンが小規模向けの書籍卸を始めるというものです。
https://honyal.jp/
「ホンヤル」というサービスで、これまで口座開設には保証人や保証金(月商の2ヶ月分)というハードルもあり、しかもそもそもそれが一般にはあまり公開されていない(少なくとも容易にアクセスできない)状態だったのですが、それが原則不要となり、うちのような小規模書店にとっては大変うれしいサービスです。しかも現在の小規模取次は、買切りがほとんどで仕入れた商品は返品できないのがネックなのですが、ホンヤルは15%の返品枠もあるとのこと。月間で10万仕入れたら15000円返品できるというのは、棚を流動的に動かすうえで大変に重要です。「これはこれまで独立系書店を支えて来た小取次は大変なのでは…?」と思いましたが、現状では「様子見」の書店が大半なのではないかと思います。
というのも「ホンヤル」には、魅力も多いですが、まだ決定的な点で導入できない理由があるからです。
ひとつめは、月間取引額が30万からとされている点。公式にはそのような記載がないのですが、新聞記事などには30万からとなっているものが多く、おそらくこれがひとつのバーなのだと思います。うちのお店(新刊棚が2本と平台なのでおそらく送料は3ー4本分の本棚)でも多い時で20万程度の仕入れです。となるとコンスタントに30万仕入れるということは、少なくとも30万円分の商品は売れないといけないわけで、それだけで月商は40万程度の売上となり、小規模書店ではあるものの片手間(雑貨屋と併設、うちのような古本屋の一部)の本屋には難しいかな?という印象。とうぜんトーハンと口座を持つということは、一回仕入れで終わるのではなく、継続取引が前提でしょうから、現状「取引したい!」という本屋とトーハンの「取引したい!」という本屋には結構なギャップがあるのではないかと、と想像します。
もうひとつはこちらの方がより決定的な点ですが「新刊が発売後の注文扱いになるということ」ということです。
これは結構シビアで、ということは、文庫なんかはトーハン内の在庫の奪い合いになるわけなので、自分にとってはこれは大きなデメリットだなぁ、と思うわけです。
現在うちが仕入れをしている八木書店さんの大きなメリットは、新刊の(一部ではありますが)事前注文を受けてくれる点。
この「取次がどの出版社と口座を持つか」というのは、意外に語られていないですが、書店にとっても仕入れを左右する重要な点です。
とはいうものの「ホンヤル」は全体的には、めちゃくちゃ期待大のサービスです。
現状は減っていく、特に地方の書店減少による「空荷」を埋めたいんだろうなぁ、という感じのサービスですが、出版業界にとってはそれでも大きな一歩だと思います。
ほかの中小取次さんと同じように「ホンヤル」も応援しています。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は隔月、奇数月5日の更新です。次回は2025年1月5日です。どうぞお楽しみに。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品北川民次です。
《眠るインディアン》
1961年
リトグラフ
イメージサイズ:30.1x38.8cm
シートサイズ :38.3x56.5cm
Ed.55
サインあり
※レゾネ No.124
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●12月7日(土)は臨時休廊いたします。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
現在青空古本まつりの真っ最中です。
連日賑わっています。

ようやく涼しくなってきた今ころになって夏の話をしてしまい恐縮ですが、今年も暑い夏でした。しかも長くて、ついさっきまで夏の感じだったのに、急に涼しくなるから困りものです。死にかけました。本屋として。
今年になって何度か伺っていた大きな出張買取も、さすがに「真夏はやめましょう」ということになり、これはうちの店だけだったわけではないようで、先月行われた大市も荷量は少なめ。「こんな夏にお客さんも本屋も買取はやらないんだよ」と話をしていました。
さて、古書の仕入れの話ではなく、新刊の仕入れに関して大きなニュースがありました。
大手取次のトーハンが小規模向けの書籍卸を始めるというものです。
https://honyal.jp/
「ホンヤル」というサービスで、これまで口座開設には保証人や保証金(月商の2ヶ月分)というハードルもあり、しかもそもそもそれが一般にはあまり公開されていない(少なくとも容易にアクセスできない)状態だったのですが、それが原則不要となり、うちのような小規模書店にとっては大変うれしいサービスです。しかも現在の小規模取次は、買切りがほとんどで仕入れた商品は返品できないのがネックなのですが、ホンヤルは15%の返品枠もあるとのこと。月間で10万仕入れたら15000円返品できるというのは、棚を流動的に動かすうえで大変に重要です。「これはこれまで独立系書店を支えて来た小取次は大変なのでは…?」と思いましたが、現状では「様子見」の書店が大半なのではないかと思います。
というのも「ホンヤル」には、魅力も多いですが、まだ決定的な点で導入できない理由があるからです。
ひとつめは、月間取引額が30万からとされている点。公式にはそのような記載がないのですが、新聞記事などには30万からとなっているものが多く、おそらくこれがひとつのバーなのだと思います。うちのお店(新刊棚が2本と平台なのでおそらく送料は3ー4本分の本棚)でも多い時で20万程度の仕入れです。となるとコンスタントに30万仕入れるということは、少なくとも30万円分の商品は売れないといけないわけで、それだけで月商は40万程度の売上となり、小規模書店ではあるものの片手間(雑貨屋と併設、うちのような古本屋の一部)の本屋には難しいかな?という印象。とうぜんトーハンと口座を持つということは、一回仕入れで終わるのではなく、継続取引が前提でしょうから、現状「取引したい!」という本屋とトーハンの「取引したい!」という本屋には結構なギャップがあるのではないかと、と想像します。
もうひとつはこちらの方がより決定的な点ですが「新刊が発売後の注文扱いになるということ」ということです。
これは結構シビアで、ということは、文庫なんかはトーハン内の在庫の奪い合いになるわけなので、自分にとってはこれは大きなデメリットだなぁ、と思うわけです。
現在うちが仕入れをしている八木書店さんの大きなメリットは、新刊の(一部ではありますが)事前注文を受けてくれる点。
この「取次がどの出版社と口座を持つか」というのは、意外に語られていないですが、書店にとっても仕入れを左右する重要な点です。
とはいうものの「ホンヤル」は全体的には、めちゃくちゃ期待大のサービスです。
現状は減っていく、特に地方の書店減少による「空荷」を埋めたいんだろうなぁ、という感じのサービスですが、出版業界にとってはそれでも大きな一歩だと思います。
ほかの中小取次さんと同じように「ホンヤル」も応援しています。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は隔月、奇数月5日の更新です。次回は2025年1月5日です。どうぞお楽しみに。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品北川民次です。
《眠るインディアン》1961年
リトグラフ
イメージサイズ:30.1x38.8cm
シートサイズ :38.3x56.5cm
Ed.55
サインあり
※レゾネ No.124
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●12月7日(土)は臨時休廊いたします。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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