三上豊「塩見允枝子へのインタビューを終えて」

 2024年の暑い日、大阪近郊の塩見宅でしばしお話を聞く機会をもった。その後、メールでのやり取りを経て、原稿はできたのだが、まとめにかかった時に、青木画廊での松澤宥展にも飛び入りで参加したことが判明、記録写真が残されていたが、ご当人には記憶がない一幕だった。それから数ヶ月、ふと60年代の資料を見ていたら、まだあった。68年4月草月会館ホールで開催の「EXPOSE・1968・シンポジュウム『なにかいってくれ、いまさがす』」で10日午後6時半から開始した第1日目、塩見はハプニング「ブルー・ボックス」に参加していた。構成・演出はジョフレイ・ヘンドリックスで、「暗黒の舞台上に、白く塗られたダンボールの箱が幾十となく、黙々と積まれ、青空をテーマにしたスライドがそれらを覆って投影された。ストロボがひらめく」。終了後、箱は観客の手渡しで場外へ運ばれるはずが、投げ返されるなどの混乱となったそうだ。高松次郎や刀根康尚らも参加していた。結局、中原佑介、粟津潔、黒川紀章、一柳慧らのシンポジウムは行われず、内藤マコのミニスカートで踊るサイケデリック・ショーが喝采を得たと伝わる。

 このシンポジウムは5日間行われ、当時の前衛的と呼ばれる人々が登壇している。タイトルは、70年の万博を意識しているが、反博とは言えないだろう。記録は季刊『デザイン批評』の第6号にまとめられている。68年4月10日の草月の記憶は塩見にあるだろうか。「なにかいってくれ、またさがす」という一幕。

(みかみ ゆたか)

※原稿内の表記はすべて季刊『デザイン批評』第6号に準ずる

三上 豊(みかみ ゆたか)
1951年東京都に生まれる。11年間の『美術手帖』編集部勤務をへて、スカイドア、小学館等の美術図書を手掛け、2020年まで和光大学教授。現在フリーの編集者、東京文化財研究所客員研究員。主に日本近現代美術のドキュメンテーションについて研究。『ときわ画廊 1964-1998』、『秋山画廊 1963-1970』、『紙片現代美術史』等を編集・発行。

塩見允枝子×フルクサス 作品集表紙作品集『塩見允枝子×フルクサス 』(限定版)
刊行:2025年6月5日
テキスト:塩見允枝子
インタビュー:三上豊
編集・デザイン:柴田卓
翻訳:川村サリー
資料作成:尾立麗子、松下賢太
体裁:サイズB5判(25.7×18.2cm)、120頁、日本語・英語併記
発行:ときの忘れもの
・塩見允枝子/作品点数:62点
・フルクサス/作品・資料・ポスター等の点数:135点
限定:365部

会期中のみ特別価格3,500円で頒布します(税、送料サービス)。
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●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
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