旭川家具工場


国有林

休暇で帰国した際に、旭川へ行ってきました。
実は今回がはじめての北海道。目的は旭川家具フェスティバルと、それに関連して工場をまわって制作を学ぶことにありました。

今、まさに具体的に家具を設計しているというわけではないのだけれど、以前の事務所では家具や照明全般を担当したこともあったし、機能的であることはもちろん、空間の中にあるオブジェとしての側面をもつ家具や照明には、もともと強い関心がありました。
建築を設計していると、家具のように動かせるものよりも、壁や柱のような動かすことの難しいものの方が空間を形作るうえで決定的ではあるのですが、それでも実際に空間を体験すれば、家具の存在というのは、ことのほか大きいものです。その小さいけれども大きな変化を作り出すことのできる家具ひとつで、その場の空気感みたいなものは驚くほどガラッと変わってしまうのです。

まず、はじめに国有林を見ました。ここは針葉樹と広葉樹がうまく混じり合っていて、旭川ではどんな樹木が育っているのだろう、と。もちろん、ここからそのまま木材が切り出されるわけではありませんが。。


製材工場


突板工場乾燥室

その後、製材工場、突板工場をまわりました。
突板工場を訪問したのは初めてで、この工場では桂むきのように削り出していくものと、短冊切りのように切り出していくものがありました。0.5mm厚くらいが精度やコストの面からも一般的だそうですが、最近ではより厚め(1.5mmくらいまで)の突板で木の表情がより出るものが好まれると聞きました。


家具工場

そして、家具工場へ。工場は散らかっているとケガをしやすくなったり、作業の効率が悪くなるので、整頓された工場を見ると、きちんとした仕事をするのだろうな。と感じます。木材の仕入れ、乾燥、加工までをここで行なっていると聞きます。


ろくろ職人工房

最後に、木工ろくろ職人の工房です。ここでは職人さんが机の脚を削りだしていたのですが、その作業のスピードと精度に本当に驚きました。すごく簡単そうに見えるのが、(絶対に簡単ではないので)やはり技術なのでしょう。 肩肘はらずに作っているところから、熟練した経験が読み取れました。

こうして目まぐるしい一日も終わり。家具をデザインする際には、目の前に見えるかたちではなく、根拠のあるかたち、制作上無理のないかたちを考えていこうと。やはり、作り手になって考えることで、設計デザインの幅や深さがより増していくように思います。

(すぎやま こういちろう)

杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

●ときの忘れものの建築空間(設計:阿部勤)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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