四王寺の森
11月の中頃、用事があって福岡へ伺った際に、四王寺の森へ行ってきました。
この森は博多駅から車で30分ほど行ったところにある、いくつかの山が合わさってできたすり鉢状の形をした山にあります。そこには幾重もの登山ルートが張り巡らされていて、道の分岐点がいくつもあり、車でも徒歩でも、そして公共バスでも頂上(すり鉢状なので正確には中心部)まで向かうことができます。
中心部にあるビジターセンターへ向かい、そこから一時間弱のワンヘルスルートを巡り、まだ時間と余力があったので、さらに別のルートも歩いていきます。
曇り空と冷たい風が強い朝だったのですが、少しずつ太陽が見え始め、木々の隙間から光が差し込んできました。木々は垂直に空へ向かって伸びているところもあれば、傾斜のある地面に法線を引いたようなものまであります。すり鉢を上ったところにある山の稜線は、かつて人工的に版築でできた土塁で、その稜線沿いに歩いていくと、時折ひらけた展望所があって、いろいろな方向を見ることができます。
その展望台の一つがとても力強くできていて、巨大な束石のような基礎に大引きが直接載っている。工法が外からでもわかりやすいもので、簡単だけれど力強さを感じました。
住んでいるスイス、クール市にある山とは違った条件だけれども、針葉樹が多い道では歩いて見える景色は意外と近いところもあって、看板が見えなければ、同じ場所だと錯覚してしまいそう。そんな新しい発見がありました。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
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