その年の干支(えと)や流行や世相を読み込んだり、しなかったり。
絵解き・謎解き・技法なども加味しながら、今回は主に1980年代から。
1962年封切の映画「ウエストサイド物語」を観た田舎のガキどもは、
魚臭い港の倉庫街を指パッチンしながら戯れていた。
シルクスクリーンの刷り作業には欠かせないボロ布。
インクの拭き取りなど掃除に使用するメリヤス綿の端切れをウエス(WASTE)と呼ぶ。
下着などに使われる伸び縮みする綿は、吸収が良く重宝する。
よく使っていたのは、シャツの製造工程で出る裁断の残りなどで、
メリヤスを漢字で書くと「莫大小」。
そのウエスを大中小の3種類の大きさにカットし、
そのまま直に版に密着させて製版を試みた。
薄いメリヤスの質感も上手く拾えた「ウエスサイズ物語」。3版3色3度刷り。
ややこしいが<木綿の絹ごし>ということでもある。
三が日、干し芋をかじりながら、あれこれ思案。
食べてしまう前にカタチを出して、8版8色8度刷り。
水性インクにミカンの汁を混ぜて、懐かしい「あぶり出し」の仕掛けも加えた。
芋をあぶると新年のご挨拶が浮き出して(焦げ出して)くる。
筆でドローイングした「中村屋のあんまん」である。
蝙蝠に尻尾をつけてネズミにしただけだが、
堀内正和さんがとても気に入って、
ギリシア語・ラテン語を紐解いたお返事まで下さった。
紙やすり「サンドペーパー」は接着剤の上に研磨剤をまぶして作ってある。
同じように接着剤としてのインクの上に胡椒をまぶして「サンドペッパー」とした。
手にしたひとがクシャミするほどスパイスの効いた賀状となった。
胡椒まぶしは、鼻腔から前頭葉までも刺激し、この年の草間彌生ラメ版画の誕生に繋がっていった。
卯の花(おから)のレシピは、薄く色付けした発泡インクの地の上に、
具材のヒジキ、人参、油揚げ、コンニャク色を刷る。
その後、加熱すると地の発泡インクが膨らんで、おからのような風合いになる。
この賀状が、このまま使えるのは261年後、2287年の卯年である。
2026年の干支は午(うま)なので、一回り(12年)前のスマホを引っ張り出した。
馬の蹄鉄は幸運のシンボルであるが、
眼元足元に注意喚起の3版3色3度刷り(ボカシ1)。
最後の続々絵解きは次の機会にでもまた。
(いしだ りょういち)
■石田了一(いしだ りょういち)
シルクスクリーン刷り師・石田了一工房主宰
1947年北海道根室生まれ、1970 年美學校で岡部徳三氏に師事。1971年、宇佐美圭司展(南画廊)で発表された<ボカシの 40 版>の版画で工房をスタート。これまでにアンディ・ウォーホル、安藤忠雄、磯崎新、草間彌生、熊谷守一、倉俣史朗、桑山忠明、五味太郎、菅井汲、関根伸夫、田名網敬一、寺山修司、鶴田一郎、萩原朔美、毛綱毅曠、元永定正、脇田愛二郎、脇田和 他 ,様々なジャンルのアーティストのシルクスクリーン作品を手掛ける。
●連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。次回は2026年2月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。
●冬季休廊のお知らせ
ときの忘れものは12月28日(日)~新年2026年1月5日(月)まで冬季休廊いたします。
ブログも定期連載以外は休載します。
作品その他のお問い合わせには、1月6日(火)以降に順次返信いたしますので、よろしくお願いいたします。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。








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