昨年12月、「生誕90年 倉俣史朗展 Cahier」で関康子さんと大澤勝彦さんによるギャラリートークを開催しました。
今回は、大澤勝彦さんがヤマギワ株式会社(現株式会社YAMAGIWA)で倉俣さんと仕事をした際の思い出を中心にレポートいたします。

倉俣史朗自画像(ときの忘れもの《倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier 1》より)
【ギャラリートーク】
開催日時:2024年12月20日(金)17:00~18:30
講師:
大澤勝彦さん
ヤマギワ(株)でライフスタイル提案ストア〈LIVINA〉開店、インテリア商材・輸入開発、住宅リフォームビジネス創設など新規事業の開発運営に関わる。2007年(株)唯アソシエイツ設立。一貫してインテリアデザインビジネスに携わる。一般社団法人日本インテリアコーディネーター協会(icon)設立に参加。(IDM TOKYO Seminar 2018パンフレットより )
関康子さん
デザインエディター。1991 - 96年デザイン誌『AXIS』編集長。その後フリーランスのエディターとして,活動。2001年にはトライプラスを共同設立し、「good design for children」を目標に、子どもの「遊び、学び、デザイン」のための商品開発、展覧会・出版企画・編集にもあたる。2011年、「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展(2121DESIGN SIGHT)で、ディレクターを務める。女子美術大学非常勤講師。(有限会社トライプラスHPより )
①東京国際照明デザインコンペティション
大澤さんと倉俣さんの邂逅は今から40年以上前、1972年頃だったそうです。当時ヤマギワでは東京国際照明デザインコンペティション(1968~80)を開催しており(※1)、倉俣さんはその招待作家として招かれました。3回出品し、実際に製品も作られました(フロアースタンドLUNEDI)。
亀倉雄策:ヤマギワ国際照明器具コンペ入賞作品展 ポスター(1968)(独立行政法人国立美術館所蔵品目録よりhttps://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=1451)
坂倉準三、丹下健三、亀倉雄策といった錚々たるメンバーが審査員を務めていました。外国人作家も積極的に招き、1971年には倉俣さんともつながりの深いエットレ・ソットサスも審査員として招待されています。
1972年には、現在も根強い人気のあるオバQも制作されています。当時のヤマギワの製品製造は75社の協力工場の集合体で、それぞれが得意な分野の製品を製作・製造していました。本作はアクリル特化の工場で進められましたが、大澤さん曰く、倉俣さんはアクリルの扱いが抜群に上手かったそうで、倉俣さん自身が工場で作業することもしばしばあったそうです。
倉俣史朗《スタンド K-series》通称オバQ
②現代作家による飾窓
倉俣さんとヤマギワの次なるコラボは、1973年開催のデザインイヤー参加事業「WINDOW ITSELF YAMAGIWA SERIES 現代作家による飾窓」です。13名のアーティストが、1年間代わる代わるヤマギワ東京本店のショーウインドウを飾っていく長期企画でした。横尾忠則、関根伸夫、篠田守男など、ときの忘れものと関わりの深い作家も参加しています。


現代作家による飾窓(大澤さんのトーク用資料より)。上から、倉俣史朗《虚と実》、横尾忠則《1973人のイエス・キリスト》、篠田守男《空箱の恐怖》。なんとも贅沢な時代です、、
③LIVINAプロジェクト
倉俣さんとヤマギワのコラボは更に規模を増し、ビルまるごとのデザインへと至ります。
まずは1981年、六本木AXISの1・2階に、倉俣さんの勧めに応じる形で「yamagiwa inspiration 」を出店(1988年には倉俣さん設計にリニューアルしています)。インテリアデザインの街をコンセプトとした、当時としては画期的な施設でした。
六本木AXISビル(公式HPより)
AXISに刺激を受け、ヤマギワは「インテリアのランドマーク」をコンセプトとした商業ビル "LIVINA"を1983年10月にオープンします(※2)。大澤さんは開設準備担当として全館商品のマーチャンダイジング、内装・施設家具製作などを倉俣さんと共同で進めていきました。

(All about HPより)
大澤さんが印象に深く残っているエピソードがあると言います。ある日、クラマタデザイン事務所にて倉俣さんと打ち合わせをしていると、商品開発担当者がやってきて、倉俣さんへ内密の相談があるから席を外してくれと宣います。良い気分はしないながらも一旦中座し、しばらくしてから戻ると、倉俣さんは「先ほどは申し訳なかった。あのような権威的な態度は嫌いなのだ。僕も言い返せればよかったが、、」と謝罪の言葉を口にしたと言います。倉俣さんの謙虚な人柄が窺えるお話です。
この他にも、大澤さんのLIVINA 1Fのインテリアアクセサリーストア開設のためのNY市場調査に際し、自身も直前までNYを訪れていた倉俣さんが現地の緻密なメモを惜しみなく伝授してくれたお話や、東京デザイナーズサタデー(現東京ウィーク)の思い出などなど、たくさんのエピソードを語っていただきました。
大澤さんの倉俣さんに対する深い尊敬と親しみが伝わってくるようでした。
倉俣さんの作品展示に囲まれて、倉俣さんの作品制作とは別のエピソードを振り返る、大変贅沢な時間を過ごせました。関さん、大澤さん、ありがとうございました。
※1 東京国際照明デザインコンペの名称は、第1回~4回(’68-71年)まで「ヤマギワ国際照明デザインコンペ」、第5回(’72年)以降は「東京国際照明デザインコンペ」になりました。
※2 LIVINA本館は2010年8月に閉店、AXIS内ショップ ”inspiration” も現在は撤退しています。
●明日2月5日(水)の営業時間は17:00までとなります。
何卒ご理解いただけますと幸いです。
●『倉俣史朗 カイエ4集』のご案内

〇A版 シルクスクリーン 10点組/44万円
〇B版 《68.ミス ブランチ(1988)》入り11点組/55万円
監修:倉俣美恵子、植田実(住まいの図書館出版局編集長)
製作 2024年
技法 シルクスクリーン
用紙 ベランアルシュ紙
用紙サイズ 37.5×48.0cm
刷り:石田了一工房・石田了一
たとう製作 小林薫
発行 ときの忘れもの
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*詳細については、2024年3月8日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

今回は、大澤勝彦さんがヤマギワ株式会社(現株式会社YAMAGIWA)で倉俣さんと仕事をした際の思い出を中心にレポートいたします。

倉俣史朗自画像(ときの忘れもの《倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier 1》より)
【ギャラリートーク】
開催日時:2024年12月20日(金)17:00~18:30
講師:
大澤勝彦さん
ヤマギワ(株)でライフスタイル提案ストア〈LIVINA〉開店、インテリア商材・輸入開発、住宅リフォームビジネス創設など新規事業の開発運営に関わる。2007年(株)唯アソシエイツ設立。一貫してインテリアデザインビジネスに携わる。一般社団法人日本インテリアコーディネーター協会(icon)設立に参加。(IDM TOKYO Seminar 2018パンフレットより )
関康子さん
デザインエディター。1991 - 96年デザイン誌『AXIS』編集長。その後フリーランスのエディターとして,活動。2001年にはトライプラスを共同設立し、「good design for children」を目標に、子どもの「遊び、学び、デザイン」のための商品開発、展覧会・出版企画・編集にもあたる。2011年、「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展(2121DESIGN SIGHT)で、ディレクターを務める。女子美術大学非常勤講師。(有限会社トライプラスHPより )
①東京国際照明デザインコンペティション
大澤さんと倉俣さんの邂逅は今から40年以上前、1972年頃だったそうです。当時ヤマギワでは東京国際照明デザインコンペティション(1968~80)を開催しており(※1)、倉俣さんはその招待作家として招かれました。3回出品し、実際に製品も作られました(フロアースタンドLUNEDI)。
亀倉雄策:ヤマギワ国際照明器具コンペ入賞作品展 ポスター(1968)(独立行政法人国立美術館所蔵品目録よりhttps://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=1451)
坂倉準三、丹下健三、亀倉雄策といった錚々たるメンバーが審査員を務めていました。外国人作家も積極的に招き、1971年には倉俣さんともつながりの深いエットレ・ソットサスも審査員として招待されています。
1972年には、現在も根強い人気のあるオバQも制作されています。当時のヤマギワの製品製造は75社の協力工場の集合体で、それぞれが得意な分野の製品を製作・製造していました。本作はアクリル特化の工場で進められましたが、大澤さん曰く、倉俣さんはアクリルの扱いが抜群に上手かったそうで、倉俣さん自身が工場で作業することもしばしばあったそうです。

倉俣史朗《スタンド K-series》通称オバQ
②現代作家による飾窓
倉俣さんとヤマギワの次なるコラボは、1973年開催のデザインイヤー参加事業「WINDOW ITSELF YAMAGIWA SERIES 現代作家による飾窓」です。13名のアーティストが、1年間代わる代わるヤマギワ東京本店のショーウインドウを飾っていく長期企画でした。横尾忠則、関根伸夫、篠田守男など、ときの忘れものと関わりの深い作家も参加しています。



現代作家による飾窓(大澤さんのトーク用資料より)。上から、倉俣史朗《虚と実》、横尾忠則《1973人のイエス・キリスト》、篠田守男《空箱の恐怖》。なんとも贅沢な時代です、、
③LIVINAプロジェクト
倉俣さんとヤマギワのコラボは更に規模を増し、ビルまるごとのデザインへと至ります。
まずは1981年、六本木AXISの1・2階に、倉俣さんの勧めに応じる形で「yamagiwa inspiration 」を出店(1988年には倉俣さん設計にリニューアルしています)。インテリアデザインの街をコンセプトとした、当時としては画期的な施設でした。

六本木AXISビル(公式HPより)
AXISに刺激を受け、ヤマギワは「インテリアのランドマーク」をコンセプトとした商業ビル "LIVINA"を1983年10月にオープンします(※2)。大澤さんは開設準備担当として全館商品のマーチャンダイジング、内装・施設家具製作などを倉俣さんと共同で進めていきました。

(All about HPより)
大澤さんが印象に深く残っているエピソードがあると言います。ある日、クラマタデザイン事務所にて倉俣さんと打ち合わせをしていると、商品開発担当者がやってきて、倉俣さんへ内密の相談があるから席を外してくれと宣います。良い気分はしないながらも一旦中座し、しばらくしてから戻ると、倉俣さんは「先ほどは申し訳なかった。あのような権威的な態度は嫌いなのだ。僕も言い返せればよかったが、、」と謝罪の言葉を口にしたと言います。倉俣さんの謙虚な人柄が窺えるお話です。
この他にも、大澤さんのLIVINA 1Fのインテリアアクセサリーストア開設のためのNY市場調査に際し、自身も直前までNYを訪れていた倉俣さんが現地の緻密なメモを惜しみなく伝授してくれたお話や、東京デザイナーズサタデー(現東京ウィーク)の思い出などなど、たくさんのエピソードを語っていただきました。
大澤さんの倉俣さんに対する深い尊敬と親しみが伝わってくるようでした。
倉俣さんの作品展示に囲まれて、倉俣さんの作品制作とは別のエピソードを振り返る、大変贅沢な時間を過ごせました。関さん、大澤さん、ありがとうございました。
※1 東京国際照明デザインコンペの名称は、第1回~4回(’68-71年)まで「ヤマギワ国際照明デザインコンペ」、第5回(’72年)以降は「東京国際照明デザインコンペ」になりました。
※2 LIVINA本館は2010年8月に閉店、AXIS内ショップ ”inspiration” も現在は撤退しています。
●明日2月5日(水)の営業時間は17:00までとなります。
何卒ご理解いただけますと幸いです。
●『倉俣史朗 カイエ4集』のご案内

〇A版 シルクスクリーン 10点組/44万円
〇B版 《68.ミス ブランチ(1988)》入り11点組/55万円
監修:倉俣美恵子、植田実(住まいの図書館出版局編集長)
製作 2024年技法 シルクスクリーン
用紙 ベランアルシュ紙
用紙サイズ 37.5×48.0cm
刷り:石田了一工房・石田了一
たとう製作 小林薫
発行 ときの忘れもの
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*詳細については、2024年3月8日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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