「ときの忘れものさんは物故作家ばかりだねえ」とひやかし半分に同業者に言われることが多い。
「そんなことはないです」と強く断言したいのだが・・・
作家と画廊との関係はなかなか難しい。
いいときもあれば、行き違いが生じて疎遠になることも・・・
かと思うと、淡々と往来が続き、いつの間にか半世紀などということも。

戸村茂樹
《昼と夜とⅡ》
2003年
エッチング
イメージサイズ:
24.5x9.1 cm
シートサイズ:
26.4x19.8 cm
Ed.60
サインあり

戸村茂樹
《昼と夜とⅢ》
2003年
エッチング
イメージサイズ:14.5x14.4 cm
シートサイズ:28.0x20.0 cm
Ed.40
サインあり
盛岡在住の戸村茂樹先生とは長い長い付き合いです。
作家と画廊というよりは、振り返ってみると遊び仲間のような、教師と生徒のような。

戸村茂樹
《森の道Ⅱ》
2000年
ドライポイント・エッチング
イメージサイズ:
22.2x14.3 cm
シートサイズ:
39.5x26.7 cm
A.P 7
サインあり
大昔、今から30年も前ですが、岩手日報という地方紙の事業部にいた中村光紀さん(後に萬鉄五郎記念美術館館長)がミケランジェロのピエタ像をすべて見るというマニアックなツアーを企画したことがあります。絵好きが昂じて「大当たり」すると思ったらしい。
新聞一面に社告を打ったのですがまったく客が集まらない。慌てた中村さんは奥さんはもちろん、友人知人、飲み友達、飲み屋の女将さんまで動員したのですが、それでも定員に達しない。遂に東京の私たちにまで声がかかり、生まれて初めてのパック旅行に参加する羽目に陥りました。
盛岡に行くと飲んでばかりでしたが、その飲み仲間がそのままローマ~フィレンツェ、ミラノと回ったわけです。
添乗員(新米女性)はいたのですが、実質的なガイドは戸村茂樹先生でした。
1994年2月2日
ローマ、トレヴィの泉にて
右から、中村夫人、盛岡の老舗直利庵の女将松井裕子さん、中村光紀さん、MORIOKA第一画廊の上田浩司さん、綿貫令子

1994年2月4日
場所:イタリア・フィレンツェ
右から松井裕子さん、亭主、戸村茂樹先生、上田浩司さん。
長い付き合いなのに、そのとき初めて戸村先生が西洋美術史、就中イタリア美術史に該博な知識を持っていることを知った次第です。
<私は北東北の街、盛岡市で暮らしながら素描と銅版画の仕事をしています。 1970年の春に高校を卒業した私が、故郷を離れてこの街に移り住んだのは、美術教師の資格が取れる学校があったからでした。しかし当時まだ人口18万人ほどの盛岡に美術館はなく、いつでも美術作品が見られる場所は、街にある一軒の画廊だけという環境だったのです。それが盛岡画廊(のちのMORIOKA第一画廊)でした。 私にとって幸いなことに、盛岡画廊はちょうど一年前から本格的な活動を再開して、版画作品の紹介に最も力を入れている時期でした。感岡での生活と同時に、私の画廊通いも始まり、池田満寿夫、長谷川潔、浜口陽三、南桂子といった同時代に世界で活躍している作家達の銅版画を間近に見るうちに、自分でもぜひつくってみたいと思うようになったのです。
学校では版画の授業がありませんでしたが、私は夏休みのある日、一冊の技法書を頼りに して薄い金属板にドライポイントの方法で線を刻み、壊れかけていた版画プレス機で刷ってみました。期待をふくらませながら取りあげた紙の上にはかすれた線がわずかにあるばかりで、画廊で目にする作品の力強さとは比べものにならないものでしたが、それでも私の銅版画制作は、この一枚から始まりました。
(2021年05月15日ブログ/戸村茂樹「絵の工房から」より)

戸村茂樹
《水面に映る III》
1999年
ドライポイント
イメージサイズ:14.5x14.4cm
シートサイズ:40.0x26.7cm
Ed.40
サインあり

戸村茂樹
《雨のタベ》
2005年
ドライポイント
イメージサイズ:
22.3x14.4 cm
シートサイズ:
39.6x26.7 cm
Ed. 40
サインあり

戸村茂樹
《水面に映るIX》
2010年
エッチング
イメージサイズ:
13.9x9.6 cm
シートサイズ:
28.0x19.8 cm
Ed. 37
サインあり

戸村茂樹
《水面に映るX》
2010年
エッチング
イメージサイズ:
14.5x9.5 cm
シートサイズ:
28.2x19.7 cm
Ed.37
サインあり
■戸村茂樹 Shigeki TOMURA
1951(昭和26)八戸市生まれ。岩手大学特設美術科卒業。1973年から75年にかけて国画会展に出品。その後84年から版画制作に専念し、85年岩手県優秀美術選奨受賞作家展(萬鉄五郎記念美術館)、87年版画「期待の新人作家」大賞展買上賞。また、89年、91年、第6回、7回ウッジ国際小版画展(ポーランド)で名誉メダル賞を連続受賞。98年第2回ブラティスラヴァ国際エクスリブリストリエンナーレグランプリ(スロバキア)を受賞するなど海外においても多数の受賞を重ねる。
ロシア、イギリス、ドイツ、アメリカなど、海外での作品発表も多い。
現在は盛岡市在住。風景描写の中に、現実には見えないが確実に存在しているものを、自然の時の移ろいや空気感に託して、一本一本丹念に線に刻み込んで描く。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

「そんなことはないです」と強く断言したいのだが・・・
作家と画廊との関係はなかなか難しい。
いいときもあれば、行き違いが生じて疎遠になることも・・・
かと思うと、淡々と往来が続き、いつの間にか半世紀などということも。

戸村茂樹
《昼と夜とⅡ》
2003年
エッチング
イメージサイズ:
24.5x9.1 cm
シートサイズ:
26.4x19.8 cm
Ed.60
サインあり

戸村茂樹
《昼と夜とⅢ》
2003年
エッチング
イメージサイズ:14.5x14.4 cm
シートサイズ:28.0x20.0 cm
Ed.40
サインあり
盛岡在住の戸村茂樹先生とは長い長い付き合いです。
作家と画廊というよりは、振り返ってみると遊び仲間のような、教師と生徒のような。

戸村茂樹
《森の道Ⅱ》
2000年
ドライポイント・エッチング
イメージサイズ:
22.2x14.3 cm
シートサイズ:
39.5x26.7 cm
A.P 7
サインあり
大昔、今から30年も前ですが、岩手日報という地方紙の事業部にいた中村光紀さん(後に萬鉄五郎記念美術館館長)がミケランジェロのピエタ像をすべて見るというマニアックなツアーを企画したことがあります。絵好きが昂じて「大当たり」すると思ったらしい。
新聞一面に社告を打ったのですがまったく客が集まらない。慌てた中村さんは奥さんはもちろん、友人知人、飲み友達、飲み屋の女将さんまで動員したのですが、それでも定員に達しない。遂に東京の私たちにまで声がかかり、生まれて初めてのパック旅行に参加する羽目に陥りました。
盛岡に行くと飲んでばかりでしたが、その飲み仲間がそのままローマ~フィレンツェ、ミラノと回ったわけです。
添乗員(新米女性)はいたのですが、実質的なガイドは戸村茂樹先生でした。
1994年2月2日ローマ、トレヴィの泉にて
右から、中村夫人、盛岡の老舗直利庵の女将松井裕子さん、中村光紀さん、MORIOKA第一画廊の上田浩司さん、綿貫令子

1994年2月4日
場所:イタリア・フィレンツェ
右から松井裕子さん、亭主、戸村茂樹先生、上田浩司さん。
長い付き合いなのに、そのとき初めて戸村先生が西洋美術史、就中イタリア美術史に該博な知識を持っていることを知った次第です。
<私は北東北の街、盛岡市で暮らしながら素描と銅版画の仕事をしています。 1970年の春に高校を卒業した私が、故郷を離れてこの街に移り住んだのは、美術教師の資格が取れる学校があったからでした。しかし当時まだ人口18万人ほどの盛岡に美術館はなく、いつでも美術作品が見られる場所は、街にある一軒の画廊だけという環境だったのです。それが盛岡画廊(のちのMORIOKA第一画廊)でした。 私にとって幸いなことに、盛岡画廊はちょうど一年前から本格的な活動を再開して、版画作品の紹介に最も力を入れている時期でした。感岡での生活と同時に、私の画廊通いも始まり、池田満寿夫、長谷川潔、浜口陽三、南桂子といった同時代に世界で活躍している作家達の銅版画を間近に見るうちに、自分でもぜひつくってみたいと思うようになったのです。
学校では版画の授業がありませんでしたが、私は夏休みのある日、一冊の技法書を頼りに して薄い金属板にドライポイントの方法で線を刻み、壊れかけていた版画プレス機で刷ってみました。期待をふくらませながら取りあげた紙の上にはかすれた線がわずかにあるばかりで、画廊で目にする作品の力強さとは比べものにならないものでしたが、それでも私の銅版画制作は、この一枚から始まりました。
(2021年05月15日ブログ/戸村茂樹「絵の工房から」より)

戸村茂樹
《水面に映る III》
1999年
ドライポイント
イメージサイズ:14.5x14.4cm
シートサイズ:40.0x26.7cm
Ed.40
サインあり

戸村茂樹
《雨のタベ》
2005年
ドライポイント
イメージサイズ:
22.3x14.4 cm
シートサイズ:
39.6x26.7 cm
Ed. 40
サインあり

戸村茂樹
《水面に映るIX》
2010年
エッチング
イメージサイズ:
13.9x9.6 cm
シートサイズ:
28.0x19.8 cm
Ed. 37
サインあり

戸村茂樹
《水面に映るX》
2010年
エッチング
イメージサイズ:
14.5x9.5 cm
シートサイズ:
28.2x19.7 cm
Ed.37
サインあり
■戸村茂樹 Shigeki TOMURA
1951(昭和26)八戸市生まれ。岩手大学特設美術科卒業。1973年から75年にかけて国画会展に出品。その後84年から版画制作に専念し、85年岩手県優秀美術選奨受賞作家展(萬鉄五郎記念美術館)、87年版画「期待の新人作家」大賞展買上賞。また、89年、91年、第6回、7回ウッジ国際小版画展(ポーランド)で名誉メダル賞を連続受賞。98年第2回ブラティスラヴァ国際エクスリブリストリエンナーレグランプリ(スロバキア)を受賞するなど海外においても多数の受賞を重ねる。
ロシア、イギリス、ドイツ、アメリカなど、海外での作品発表も多い。
現在は盛岡市在住。風景描写の中に、現実には見えないが確実に存在しているものを、自然の時の移ろいや空気感に託して、一本一本丹念に線に刻み込んで描く。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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