北九州・磯崎新 建築ツアーレポート その1
2025年3月1日(土)~2日(日)に、北九州・磯崎新 建築ツアーを開催しました。
【スケジュール】
■ 3月1日(土)
13:20 北九州空港到着口集合、移動
14:00~17:00 北九州市立美術館
17:20 ホテルチェックイン
18:30~ 夕食
■ 3月2日(日)
9:00 ホテルチェックアウト、タクシー移動
9:30~11:30 北九州市立中央図書館、北九州市立文学館
11:40~13:00 ランチ、タクシーで移動
13:10~14:40 西日本総合展示場 本館、北九州国際会議場
14:45~ 移動、北九州空港にて解散
3月1日、羽田空港から乗る皆さんと搭乗口で合流。和やかな空気で搭乗の時間まで待っていたところ、微かに聞こえるアナウンスから出発が1時間遅れるとのこと。北九州空港の上空の濃霧の影響で、早朝の便は北九州空港に着陸できず、羽田空港へ戻ってきたということでした。
まぁ1時間遅れなら仕方ないと思っていましたが、最終的には「北九州空港に到着できなければ福岡空港に着陸する」という条件付きで2時間遅れで出発。
北九州市立美術館で合流する方と待ち合わせをしているし、空港には到着時刻に合わせてジャンボタクシーを2台を手配、夕食はコース料理を注文済み。先が見えない状況にプチパニックになりながら、それでも行くしかない!と、電話で各所に事情を説明して搭乗。
北九州に近づくにつれ、霧が濃くなり、地上が全く見えない。あー終わったー--とうなだれていたら、なんと無事北九州空港に着陸していました。心の中で拍手!航空会社の方に感謝です。
ジャンボタクシーに乗り、いざ北九州市立美術館へ。車窓から小高い丘の頂上にある美術館が見えてきたときの感動はひとしおでした。
「丘の上の双眼鏡」と呼ばれるだけあって、外観は、両腕を広げて丘の上に鎮座する、巨大な双眼鏡ロボットのよう。
中に入れば、エントランスホールの大空間と中央にある印象的な階段。なんて豊かな内部空間なのでしょうと感激。建築は体験するものだということを改めて感じました。
3時間予定していた美術館の観覧時間は1時間と短くなりましたが、展覧会「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」と磯崎建築を急ぎ足で堪能(やはり3時間は必要です)。今回ナビゲーターをお願いしたお二方に、北九州市立美術館の建設当時の話や、改修でどこを変更したのかなど、磯崎さんとの思い出話を交えていただきながらお話しいただきました。

当時は重厚な美術館が多かったそうですが、磯崎さんは軽く、重量を感じないようにと試み、壁をグリッド状にしたそうです。



この階段、どこか未来的。

「磯崎新の原点」展は1月4日から3月16日で開催されました。

60年代から80年代の17年間、磯崎新アトリエに勤めた西岡弘さん


磯崎さんが設計した秀巧社ビル(現存せず)の1階にあった福岡市アートギャラリーにて開催された「引用と暗喩の建築 磯崎新の建築作品1960-1976」に出品されたアルミニウムの板に写真のプロセスで焼き付けたアルフォト。

今回初めて見た作品《北九州市の街のたたずまいを考える》1977-78年、コラージュ、紙
解説には「1970年代に北九州市内の3つの公共建築を手がけることになった磯崎は、「よそから旅人のように短期間訪れて、街を観察して帰るのとも違って、私にこの北九州市の都市の性格を徹底的に考えさせるまたとない機会が与えられたのだと思ってきた」と語っている。 北九州市より「都市空間の整備に関する研究調整提言」の依頼を受けた磯崎は、市内各地を訪れ、各区への提言をまとめている。」とあり。「徹底的に」という言葉から、磯崎さんの意気込み感じます。このコラージュは、その際に制作されたものだそうです。

左壁面の5点は現代版画センターがエディションした「還元」シリーズ(刷り:石田了一)
展示室の天井はもともとは自然光が入るようにな設計だったそうですが、天候によって左右されるため、改修工事で塞いで、人口照明に変更したそうです。


モンローチェアーと市街地の風景

次の展示室へ入る際の小さなトンネルは、気持ちを一度リセットして、次の空間へ誘う感じがして、個人的に好きです。この展示室は撮影は不可でしたが、元・福岡相互銀行の頭取・四島司さんのコレクションのカンディンスキーやキーファー、ミロ、ホックニーや、福岡相互銀行の応接室に斎藤義重らアーティストたちが家具や装飾を担当したという贅沢な空間が映し出された写真パネルなど見ることができました。銀行の6階ロビーにあったというサム・フランシスの作品も展示。

2階は美術館のコレクションの展示室となっており、飛び出ている直方体部分はもともと版画の展示室だったそうです。改修を経て、可動式の壁が作られたそうで、その壁が窓の光を遮断する役割もあるとか。コレクション展には大作の草間彌生や、駒井哲郎、池田満寿夫、靉嘔などあり。写真撮影不可でしたが、中には現代版画センターエディションも発見し嬉しくなりました。
アネックスは残念ながら閉館しており見られず・・・

どこを見ても正方形のグリッド。群馬県立近代美術館も正方形のグリッドでしたね。
手元の資料「ARATA ISOZAKI WORK IN KITAKYUSYU CITY」(発行元不明)では、北九州市立美術館のコンセプトが詳しく書かれてあります。
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群馬県立近代美術館においては、ひたすら立方体のコンセプチュアルな枠組みを提示することによって 「美術館」の一般解を捜したのにたいして、ここでは地形的な特性と、可能なかぎり可視的であれとする政治的要請とに応えるための特殊解をむしろ提示する必要があった。
その地形との応答状態の先例として、クレンツェのヴァルハラ、ウィーンのシェーンブルン宮などが参照された。そして、2つの直方体を空中に浮かすモニュメンタルな構成は、都市的スケールでの軸線をもった構築物で、この都市の類型的なイメージをかたちづくっている巨大な工場や長大な橋などの土木的な建築物に対抗する意図もあった。 その断面は正方形で、この時期に私がとらわれていた基本的な幾何学の形態的な操作から導きだされている。すなわち正方形や円形をそのまま水平に延長して建築の輪郭に充当するもので、それを普通の建築的なスケールを超えるまで拡張することによって、起伏のある自然の地形に拮抗することであった。
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初日のレポートはここまで。
北九州にわざわざ行く価値は十分ありますので、是非訪ねてみてください。
(おだち れいこ)
●本日のお勧め作品は磯崎新です。

磯崎新「影1」
1999年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:58.3×77.0cm
シートサイズ:70.0×90.0cm
Ed.35 サインあり
*ときの忘れものエディション
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
少し遅くなりましたが3月に開催した「北九州・磯崎新 建築ツアー」のレポートを今日と明日の二回にわけてお届けします。
先ずはご参加いただいた皆さん、ナビゲーターの先生方に心より御礼申し上げます。
ときの忘れものは開廊以来、建築家の版画とドローイングをメインにしてきたので、必然的に建築ツアーを毎年のように開催してきました。
名建築というのはただ漫然と見ただけではその素晴らしさは理解できません。
その建築及び設計した建築家を良く知るナビゲーターに水先案内人になっていただくことで、建築ツアーは実り多いものとなります。
次のツアーをどうぞお楽しみに!
●5月11日のブログで「中村哲医師とペシャワール会支援5月頒布会」を開催しています。
今月の支援頒布作品は島州一、ブーランジェ、仙波均平です。
皆様のご参加とご支援をお願いします。
申し込み締め切りは5月20日19時です。
◆次回展覧会のお知らせ
「2025コレクション展3/駒井哲郎、菅井汲、池田満寿夫」
2025年5月21日(水)~5月24日(土)11:00-19:00
※前回展DMで予告していた日程から会期が変更となりました
●松本莞さんが『父、松本竣介』(みすず書房刊)を刊行されました。ときの忘れものでは莞さんのサインカード付本書を頒布するとともに、年間を通して竣介関連の展示、ギャラリートークを開催してゆく予定です。
『父、松本竣介』の詳細は1月18日ブログをお読みください。
ときの忘れものが今まで開催してきた「松本竣介展」のカタログ5冊も併せてご購読ください。
画家の堀江栞さんが、かたばみ書房の連載エッセイ「不手際のエスキース」第3回で「下塗りの夢」と題して卓抜な竣介論を執筆されています。
著者・松本莞
『父、松本竣介』
発行:みすず書房
判型:A5変判(200×148mm)・上製
頁数:368頁+カラー口絵16頁
定価:4,400円(税込)+梱包送料650円
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

2025年3月1日(土)~2日(日)に、北九州・磯崎新 建築ツアーを開催しました。
【スケジュール】
■ 3月1日(土)
13:20 北九州空港到着口集合、移動
14:00~17:00 北九州市立美術館
17:20 ホテルチェックイン
18:30~ 夕食
■ 3月2日(日)
9:00 ホテルチェックアウト、タクシー移動
9:30~11:30 北九州市立中央図書館、北九州市立文学館
11:40~13:00 ランチ、タクシーで移動
13:10~14:40 西日本総合展示場 本館、北九州国際会議場
14:45~ 移動、北九州空港にて解散
3月1日、羽田空港から乗る皆さんと搭乗口で合流。和やかな空気で搭乗の時間まで待っていたところ、微かに聞こえるアナウンスから出発が1時間遅れるとのこと。北九州空港の上空の濃霧の影響で、早朝の便は北九州空港に着陸できず、羽田空港へ戻ってきたということでした。
まぁ1時間遅れなら仕方ないと思っていましたが、最終的には「北九州空港に到着できなければ福岡空港に着陸する」という条件付きで2時間遅れで出発。
北九州市立美術館で合流する方と待ち合わせをしているし、空港には到着時刻に合わせてジャンボタクシーを2台を手配、夕食はコース料理を注文済み。先が見えない状況にプチパニックになりながら、それでも行くしかない!と、電話で各所に事情を説明して搭乗。
北九州に近づくにつれ、霧が濃くなり、地上が全く見えない。あー終わったー--とうなだれていたら、なんと無事北九州空港に着陸していました。心の中で拍手!航空会社の方に感謝です。
ジャンボタクシーに乗り、いざ北九州市立美術館へ。車窓から小高い丘の頂上にある美術館が見えてきたときの感動はひとしおでした。
「丘の上の双眼鏡」と呼ばれるだけあって、外観は、両腕を広げて丘の上に鎮座する、巨大な双眼鏡ロボットのよう。
中に入れば、エントランスホールの大空間と中央にある印象的な階段。なんて豊かな内部空間なのでしょうと感激。建築は体験するものだということを改めて感じました。
3時間予定していた美術館の観覧時間は1時間と短くなりましたが、展覧会「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」と磯崎建築を急ぎ足で堪能(やはり3時間は必要です)。今回ナビゲーターをお願いしたお二方に、北九州市立美術館の建設当時の話や、改修でどこを変更したのかなど、磯崎さんとの思い出話を交えていただきながらお話しいただきました。

当時は重厚な美術館が多かったそうですが、磯崎さんは軽く、重量を感じないようにと試み、壁をグリッド状にしたそうです。



この階段、どこか未来的。

「磯崎新の原点」展は1月4日から3月16日で開催されました。

60年代から80年代の17年間、磯崎新アトリエに勤めた西岡弘さん

磯崎さんが設計した秀巧社ビル(現存せず)の1階にあった福岡市アートギャラリーにて開催された「引用と暗喩の建築 磯崎新の建築作品1960-1976」に出品されたアルミニウムの板に写真のプロセスで焼き付けたアルフォト。

今回初めて見た作品《北九州市の街のたたずまいを考える》1977-78年、コラージュ、紙
解説には「1970年代に北九州市内の3つの公共建築を手がけることになった磯崎は、「よそから旅人のように短期間訪れて、街を観察して帰るのとも違って、私にこの北九州市の都市の性格を徹底的に考えさせるまたとない機会が与えられたのだと思ってきた」と語っている。 北九州市より「都市空間の整備に関する研究調整提言」の依頼を受けた磯崎は、市内各地を訪れ、各区への提言をまとめている。」とあり。「徹底的に」という言葉から、磯崎さんの意気込み感じます。このコラージュは、その際に制作されたものだそうです。

左壁面の5点は現代版画センターがエディションした「還元」シリーズ(刷り:石田了一)
展示室の天井はもともとは自然光が入るようにな設計だったそうですが、天候によって左右されるため、改修工事で塞いで、人口照明に変更したそうです。


モンローチェアーと市街地の風景

次の展示室へ入る際の小さなトンネルは、気持ちを一度リセットして、次の空間へ誘う感じがして、個人的に好きです。この展示室は撮影は不可でしたが、元・福岡相互銀行の頭取・四島司さんのコレクションのカンディンスキーやキーファー、ミロ、ホックニーや、福岡相互銀行の応接室に斎藤義重らアーティストたちが家具や装飾を担当したという贅沢な空間が映し出された写真パネルなど見ることができました。銀行の6階ロビーにあったというサム・フランシスの作品も展示。

2階は美術館のコレクションの展示室となっており、飛び出ている直方体部分はもともと版画の展示室だったそうです。改修を経て、可動式の壁が作られたそうで、その壁が窓の光を遮断する役割もあるとか。コレクション展には大作の草間彌生や、駒井哲郎、池田満寿夫、靉嘔などあり。写真撮影不可でしたが、中には現代版画センターエディションも発見し嬉しくなりました。
アネックスは残念ながら閉館しており見られず・・・

どこを見ても正方形のグリッド。群馬県立近代美術館も正方形のグリッドでしたね。
手元の資料「ARATA ISOZAKI WORK IN KITAKYUSYU CITY」(発行元不明)では、北九州市立美術館のコンセプトが詳しく書かれてあります。
------------------------------------------------
群馬県立近代美術館においては、ひたすら立方体のコンセプチュアルな枠組みを提示することによって 「美術館」の一般解を捜したのにたいして、ここでは地形的な特性と、可能なかぎり可視的であれとする政治的要請とに応えるための特殊解をむしろ提示する必要があった。
その地形との応答状態の先例として、クレンツェのヴァルハラ、ウィーンのシェーンブルン宮などが参照された。そして、2つの直方体を空中に浮かすモニュメンタルな構成は、都市的スケールでの軸線をもった構築物で、この都市の類型的なイメージをかたちづくっている巨大な工場や長大な橋などの土木的な建築物に対抗する意図もあった。 その断面は正方形で、この時期に私がとらわれていた基本的な幾何学の形態的な操作から導きだされている。すなわち正方形や円形をそのまま水平に延長して建築の輪郭に充当するもので、それを普通の建築的なスケールを超えるまで拡張することによって、起伏のある自然の地形に拮抗することであった。
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初日のレポートはここまで。
北九州にわざわざ行く価値は十分ありますので、是非訪ねてみてください。
(おだち れいこ)
●本日のお勧め作品は磯崎新です。

磯崎新「影1」
1999年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:58.3×77.0cm
シートサイズ:70.0×90.0cm
Ed.35 サインあり
*ときの忘れものエディション
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
少し遅くなりましたが3月に開催した「北九州・磯崎新 建築ツアー」のレポートを今日と明日の二回にわけてお届けします。
先ずはご参加いただいた皆さん、ナビゲーターの先生方に心より御礼申し上げます。
ときの忘れものは開廊以来、建築家の版画とドローイングをメインにしてきたので、必然的に建築ツアーを毎年のように開催してきました。
名建築というのはただ漫然と見ただけではその素晴らしさは理解できません。
その建築及び設計した建築家を良く知るナビゲーターに水先案内人になっていただくことで、建築ツアーは実り多いものとなります。
次のツアーをどうぞお楽しみに!
●5月11日のブログで「中村哲医師とペシャワール会支援5月頒布会」を開催しています。
今月の支援頒布作品は島州一、ブーランジェ、仙波均平です。皆様のご参加とご支援をお願いします。
申し込み締め切りは5月20日19時です。
◆次回展覧会のお知らせ
「2025コレクション展3/駒井哲郎、菅井汲、池田満寿夫」2025年5月21日(水)~5月24日(土)11:00-19:00
※前回展DMで予告していた日程から会期が変更となりました
●松本莞さんが『父、松本竣介』(みすず書房刊)を刊行されました。ときの忘れものでは莞さんのサインカード付本書を頒布するとともに、年間を通して竣介関連の展示、ギャラリートークを開催してゆく予定です。
『父、松本竣介』の詳細は1月18日ブログをお読みください。
ときの忘れものが今まで開催してきた「松本竣介展」のカタログ5冊も併せてご購読ください。
画家の堀江栞さんが、かたばみ書房の連載エッセイ「不手際のエスキース」第3回で「下塗りの夢」と題して卓抜な竣介論を執筆されています。
著者・松本莞『父、松本竣介』
発行:みすず書房
判型:A5変判(200×148mm)・上製
頁数:368頁+カラー口絵16頁
定価:4,400円(税込)+梱包送料650円
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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