7月18日に開催した「追悼 細江英公展」ギャラリートークのレポートです。
細江先生のご長男・細江賢治さんと、東京工芸大学 学長の吉野弘章先生を講師にお迎えしました。

●ギャラリートーク
7月18日(金)17時~18時半
細江賢治×吉野弘章(東京工芸大学)


細江賢治さん(左から2番目)と吉野弘章先生(右から2番目)、お二人は大学の先輩後輩関係でもあるそうです。

ギャラリートークはお二人からたくさんの話題を出していただき、1時間半にはとてもおさまらず、話しは尽きませんでした。
吉野先生には細江先生の年譜の重要な事柄をピックアップしてモニタに映したスライドを示しながらお話しくださり、賢治さんからは間近にいたご長男ならでは具体的なエピソードをお話いただきました。
三島由紀夫氏を被写体にした《薔薇刑》シリーズは、細江先生が1971年1月に日本で初めてオリジナルプリント展を企画したそうですが、前年11月に三島氏が割腹して取り沙汰され、三島氏が写っている写真に値段をつけて売ることで便乗商法と思わる可能性があったので、展覧会を順延したそうです。細江先生のところにも取材が殺到したそうですが、全て断ったとのこと。
ちょうど今年2025年は三島由紀夫氏(1925~1970)の生誕100年の年です。
ギャラリートークとは別日ですが、展覧会には三島由紀夫文学を研究しているというシドニーからの学生がいらっしゃいました。
ほかにもブラジルのお客様がいらっしゃったり、海外でも細江先生の写真は人気とのことです。


トークには、ご参加の約10名の方にお集りいただきました。
細江先生の教え子さんや某美術館の学芸員の方々など、豪華なみなさんにご参加いただきました。


富士フイルムのコンテストにこの写真で応募し、学生の部の最高賞を受賞した《ポーディちゃん》について。
細江英公先生が高校生の時に英語を勉強したくて光が丘の米軍居住地に出入りしたそうで、遊んでいる子供に話しかけ、撮影させてもらい、次回写真をプリントして持って行くと、子供は喜んで親のところに連れて行ってくれたそうです。親も喜んでコーヒーをご馳走してもらい、そこで初めてコーヒーやコーラを口にしたとか。


スライドをご用意いただき、順を追って解説してくださる吉野先生



横尾忠則・細江英公 《土方巽と日本人》を解説されている賢治さん


横尾忠則・細江英公 《土方巽と日本人》2007年 シルクスクリーン 103.0×72.8cm

本作の上部にある手形は、細江英公先生と横尾忠則先生の手形です。
オリジナルは土方巽(1928~1986)さんの手形を付けたそうですが、2007年に本作を制作した時はもちろん土方さんは亡くなっていたので、お二人で手形をつけることになったそうです。


細江英公《抱擁 #43、1970》1970年(Printed in 2008)デジタルピグメントプリント 125.0×100.0cm
抱擁シリーズは型紙を使った特殊なプリント方法で、特に焼くのが大変だっだそうです。

細江先生の写真を賢治さんがプリントし始めたときは、出来上がったプリントを見て「品位が足りない」と言われたことがあり、具体的な指示でないので困ったとのこと。薔薇刑シリーズは35mmのフィルムで、文字を複写するためのミニコピという白黒がはっきりするような方法で撮影され、しぼりも変えているので、メタリックな仕上がりになっているそうです。細江先生のところに弟子入りしたばかりの森山大道さんが、露出を多くして、現像時間を短くするという細江先生からの指示のもとネガを現像しており、複数枚のネガを重ねて合成しているのでプリントも難しいとのこと。

細江英公先生と写真家の森永純さんはオリジナルプリントを最初の価値を訴えた方で、森永さんはプリントすることに価値を見出していたという話になりました。アンセル・アダムスやエドワード・ウエストンなども自分でプリントしたものは少なく、助手がプリントしているものの方が多いのだそう。細江英公先生も、VIVOの時から自分でプリントしなければならないという考え方ではなかったそうで、自分で監修することが大事だという考えだったそうです。

お客様から、「生前、賢治さん始め、細江先生じゃない方がプリントしたものもオリジナルプリントと呼んでいますか?」とのご質問もあり、賢治さんはオリジナルプリントだと回答されていました。細江先生は、賢治さん達に現像を任せる時でも、最終的な出来栄えを監修して納得したものにサインしていたとのことです。


細江英公《薔薇刑 作品321961年(printed later)ゼラチンシルバープリント 27.7×35.5cm 上:表面、下:裏面
表面右下のサインだけでなく裏面にもタイトル・撮影年・サインが書かれています。全て細江先生の自筆です。
本作は1961年以降に現像されていますが、細江先生は必ず撮影年を書かれたそうです。

細江英公展は本日26日(土)が最終日です。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

「第379回 追悼・細江英公展」
Part 1=2025年7月4日(金)~7月12日(土)
Part 2=2025年7月16日(水)~7月26日(土)
11:00-19:00
※7月15日(火)に展示替え、日・月・祝日休廊

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info[at]tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。