流行というのは恐ろしい。
亭主がスタッフに向かってしばしばつぶやく言葉です。

画廊亭主が美術界に入って50年、この半世紀の間に一番多く扱ったのはどなたの作品か。
有体にいえば何を一番売ったのか。
これははっきりしています、オノサト・トシノブ先生です。
現代版画センター時代には最初のエディションがオノサト先生の小品版画「GHC1(黄)」でした。
以後、版画(シルクスクリーン、リトグラフなど)を中心に、油彩、水彩、極く少数のオブジェなど、おそらく種類にして数百種類、点数にして数千点を販売してきました。
美術館が所蔵するオノサト作品は東京都現代美術館(福原コレクション)が質量ともに最大ですが、その多くは私どもからお納めしたものです。

生前はヴェニスビエンナーレはじめ、日本国を代表する作家として誰より多く海外に紹介されてきました。
国内の美術館に収蔵されているオノサト作品も相当数にのぼります。
しかるに、ここしばらくときの忘れものではオノサト作品をほとんど売っていません、はっきり言えばまったく売れない。
画商が取り扱い作家(それもメインの)について「売れない」なんて言ったらダメですが、いたしかたない。
いったいどうしてしまったんでしょうか。

オノサト・トシノブ 「66-A」
1966年  リトグラフ
イメージサイズ: 12.2×18.0cm
シートサイズ: 24.8×31.8cm
Ed. 120  サインあり
※レゾネNo.17
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ご紹介するのはレゾネNo.17の初期リトグラフの佳品です。
いまの市場でオノサト作品はまったく振るいませんが、いつか必ず(それも近いうちに)再評価の波が来ることを亭主は信じて疑いません。
オノサト先生はいくつかの不運が重なり、ローカル作家のようなマイナーな印象が定着してしまいましたが、研究者たちの論考を読めば日本の現代美術史を代表する大作家だということがわかると思います。
不運の一つは全画業を網羅した作品集がないことです。
日本の前衛美術史を担った作家たちー例えば山口長男(1902~1983)から、猪熊弦一郎(1902~1993)、斎藤義重(1904~2001)、吉原治良(1905~1972)、難波田龍起(1905~1997)、村井正誠(1905~1999)、長谷川三郎(1906~1957)、脇田和(1908~2005)、瑛九(1911~1960)、坂本善三(1911~1995)、松本竣介(1912~1948)、 菅井汲(1919~1996)、元永定正(1922~2011)に至るまで、生涯を展望する画集の一冊も無いなんてオノサト先生以外にはいません。

●ブログに掲載した研究者たちの論考 
瀧口修造/画家の時刻のかなた
小此木美代子(大川美術館)/オノサト・トシノブと戦後桐生の青春~1950年代を中心に~」をめぐって、思うこと
小此木美代子(大川美術館)/生誕110年 オノサト・トシノブ展

住田常生(高崎市美術館)/オノサト・トシノブ「ここはまったく語らぬもの、そしてそれを聞くことはいったい何であるか」
大谷省吾(東京国立近代美術館)/1955年のオノサト・トシノブ《十二の丸》ができるまで
栗田秀法(跡見学園女子大学)/現代版画の散歩道第10回 オノサト・トシノブ

亭主が初めて接した作家は靉嘔先生、そしてオノサト・トシノブ先生でした。
桐生のアトリエに何度通ったことでしょうか。
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1978年3月15日 桐生のアトリエにて
オノサト・トシノブ先生を針生一郎先生と訪ねる

オノサト・トシノブ Toshinobu ONOSATO(1912-1986)
1912年長野県生まれ。その後群馬県桐生に移り住む。本名・小野里利信。津田青楓洋画塾に学ぶ。35年黒色洋画展を結成。38年自由美術家協会会員となる(~56年、以後無所属)。41年に一兵卒として出征、戦後のシベリア抑留を経て48年に帰国後は桐生のアトリエでひたすら円を描き続けた。64年・66年にはベニス・ビエンナーレに日本代表として出品。戦前、戦後と親友の瑛九とともに前衛美術の道を歩み続けた。86年永逝。

ときの忘れものでは常時100点を超えるオノサト作品(油彩、水彩、版画)をご覧いただけます。どうぞ皆さんのコレクションに加えてください。

◆「2025コレクション展4/瑛九、ウォーホル、ホックニー他」
会期:2025年8月1日(金)~8月16日(土) 11:00~19:00 ※日曜・月曜・祝日休廊

出品作家:靉嘔、赤瀬川原平、安藤忠雄、畦地梅太郎、泉茂、石山修武、磯辺行久、伊藤公象、瑛九、オノサト・トシノブ、恩地孝四郎、加藤清之、北川太郎、草間彌生、倉俣史朗、島州一、嶋田しづ、田名網敬一、難波田龍起、野田哲也、長谷川潔、日和崎尊夫、舟越保武、舟越直木、堀尾貞治、槇文彦、宮脇愛子、元永定正、百瀬寿、山口薫、横尾忠則、若林奮、アンディ・ウォーホル、ジョン・ケージ、ジャン・フォートリエ、デイヴィッド・ホックニー、ソニア・ドローネー、フェルナン・レジェ、マリー・ローランサンほか。
出品全47点の画像とデータは8月2日ブログに掲載しました。  

●お詫び
本日10日は、杉山幸一郎の連載エッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」の掲載日ですが(毎月10日の更新)、私ども(ときの忘れもの)の都合で8月と9月は休載とさせていただきます。筆者の杉山幸一郎先生と読者の皆さんにはお詫び申し上げます。
次回は10月10日に掲載予定です。
杉山先生だけではなく他の連載も同様で、一~二ヶ月ほど休載させていただきます。
先日少しご報告しましたが、ホームページを全面的に改変し、連動してブログその他も全く今までとは異なるサイトでの公開作業にかかっています。
思ったより手間で、いまだに道半ばというところで、スタッフも喘ぎながら作業を進めています。
ご理解のほどお願い申し上げます。  

●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info[at]tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。