「生誕120年 難波田龍起展」は9月20日に盛況裡に終了しました。
作品をお買い上げいただいたお客様、ギャラリートークなど画廊にお運びいただいた皆様に深く御礼申し上げます。
会期中に難波田武男さん(龍起三男)と福士理先生(東京オペラシティ アートギャラリー シニア・キュレーター)のギャラリートークを開催しました。
たいへん多くの申し込みがあり、会場が狭いもので、ご参加いただけなかった方は誠に申し訳ございません。
また、福士先生はオンラインでの参加となりましたが、一時間半みっちりお二人の対談を伺うことができました。
福士先生は、小品が並ぶときの忘れものの展示について「龍起の場合、タブロー作品は小さな筆で丹念に紡ぎ出すように描いており、生真面目さが出ているが、小さい紙作品は肩の力が抜けて、自発的な自由なイメージがあり魅力的だ。」と言及されました。
龍起は自由美術家協会に参加し、抽象画を描く山口長男や長谷川三郎などに出会っていたが、その時はまだ具象画を描いていた。龍起は独立独歩で、自分が納得するまで追求する。技法が自分の血肉にならないと、自身の絵画に取り入れることはなく、とても慎重で、具象から抽象を描くようになるのは遅かった。
オートマティズムに影響を受け、ポロックのドリッピングの技法を自身の絵画に取り入れた時期もあったが、少し背伸びをしていたようにも思うと。龍起の絵はオートマチックに描けるものではない。龍起は、ドリッピングはドリッピングに見えるように丁寧に描いており、最後にちょっとドリッピングをするという描き方だったそうです。
また、ある評論家は龍起のことを「気が弱いが気が多い」と批評していた。難波田はお酒も飲まないし、言葉数は少ないので、美術家同士の熱い議論に参加することはなかったため「気が弱い」と思われたのかもしれないが、積極的にさまざまな技法を試みていたことが「気が多い」と言われた所以なのかもしれない。当時は、画家同士の飲みの席で殴り合いに発展することも多々あったようだが、周囲の画家たちが、龍起が殴られないよう守ってくれていたそうです。
武男さんのお話では、父・龍起が幼少期住んでいた本郷の家の裏手に高村光太郎夫妻が住んでいたときのお話を伺いました。近所でモダンな格好をした光太郎をよく見かけたそうで、父にとっては近所のおじさんというイメージだった。将来のことを悩んでいる時に、龍起のお姉さんが光太郎のところに連れて行き、絵と詩を見てもらうと、絵は褒められたが詩は褒められなかった。龍起は、光太郎の芸術観や思想を引き継いでおり、光太郎に会っていなければ、画家ではなく詩人になっていたかもしれない、とお話くださいました。
龍起の妻・澄江はマネージャーのような存在で、2人で展覧会に出掛けると、帰ってくるなりどう思ったかなど批評家同士のように議論していた。
また、澄江は龍起に売れるような絵を描くべきではない、描きたい絵を描きなさいと言っており、澄江は良くないと思う絵を捨てていたが、龍起はそれを拾い、どんな小さな作品も新聞紙に包んで大事にしていたそうです。
一番近くにいらした三男・武男さんの貴重なお話と、オペラシティギャラリーで大評判の「難波田龍起」展を担当された福士先生による濃厚なギャラリートークでした。
(おだち れいこ)

難波田龍起《古風な街》1978 カラー銅版

難波田龍起《聖堂》1978 カラー銅版
*購入ご希望の方は遠慮なくメール(info@tokinowasuremono.com)か、お電話(03-6902-9530)でお申込みください。
◆「銀塩写真の魅力Ⅸ」
会期:2025年10月8日~10月18日 ※日・月・祝日休廊
主催:ときの忘れもの
出品作家:福田勝治(1899-1991)、ウィン・バロック(1902-1975)、ロベール・ドアノー(1912-1994)、植田正治(1913-2000)、ボブ・ウィロビー(1927-2009)、奈良原一高(1931-2020)、細江英公(1933-2024)、平嶋彰彦(b. 1946)、百瀬恒彦(b. 1947)、大竹昭子(b. 1950)
*出品作品の展示風景及び概要はHPまたは10月4日ブログをご覧ください。
◆ときの忘れものは今年もアート台北「Art Taipei 2025」に佐藤研吾さんと参加出展します。
会期:2025年10月23日~10月27日(10月23日はプレビュー)
会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1
ときの忘れものブース番号:B29
公式サイト: https://art-taipei.com/
出品作家:靉嘔、安藤忠雄、佐藤研吾、仁添まりな、釣光穂

出展内容の概要は10月13日ブログをご参照ください。
会場では、作家の佐藤研吾さんと、松下、陣野、津田がお待ちしております。
招待状が若干ありますので、ご希望の方はメールにてお申込みください。
●10月11日のブログで「中村哲医師とペシャワール会を支援する10月頒布会」を開催しています。
今月の支援頒布作品は北川民次と元永定正です。皆様のご参加とご支援をお願いします。
申し込み締め切りは10月20日19時です。
*画廊亭主敬白
画廊の直ぐ近くに交番があります、交番の前の信号を渡ると直ぐに駒込警察署がある。まことに安心、安全の立地ですが、歩いていると制服のおまわりさんにしょっちゅう声を掛けられる。そしてプレゼントを下さる。先日もちょっとおしゃれなトートバッグ(Stop! ATMでの携帯電話と書かれた)を手渡され、中にはティッシュペーパー(大、小)、ハンドタオルなどが入っている。
振込詐欺がいかに蔓延しているか、その恰好のカモが亭主と思われるのでしょうね。
「オレはボケてもいねえし、そんな歳じゃあねえ」と言いたくなるのですが、親切なお声がけには感謝しましょう。
●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。 
外観




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