
2月は催事続きの月でした。
東洋文庫さんが再開して、お店にもお客さまが戻ってきてホッとした年明けでしたが、気づけばそろそろ税金の季節。「ここで稼がなくていつ稼ぐ!」という思いで、ありがたいことにお誘いの声がかかりました赤坂TBSでの「AKASAKA BOOK STUDIO」と明治公園での「読の市」に参加してきました。
どちらのイベントも本好きはもちろん、それほど熱心に読書をしていない人にも届いたのか、すごい熱気の催事でした。入場者数は、「AKASAKA BOOK STUDIO」が二日間で7800人、「読の市」は三日間でなんと三万人以上の人出だったそうです。
本が売れないというのはウソのような売れ行きでした。
そんな当店が売った一番の本はこちらです。
『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』(knott books)
というのも、こちらの本にはわたくしが原稿を寄せており、これがひとり出版者の立ち上げともなるknott booksさんのためにも、何がなんでも売れねばならないのです。
両イベントともに50冊ずつ仕入れさせていただき、見事に完売御礼! なんとか著者の1人としての役割を果たすことができました。
この本はタイトルからもわかるように、出版業界の最前線で働く書店の、生の声が綴られた一冊です。わたしは新刊書店の現場を離れて十年弱になりますので、リアルタイムの声というよりは過去の自分を顧みて書いた原稿のような気がします。書店にせよ、ほかの業種にせよ、お客さまと接する最前線には、喜びとともにある種の「辛さ」も伴います。
特に本の場合は、書店が売価が自分たちで決められず、その商売としての自由度も極端に低い商材です。正直これを一般のお客さまに知ってもらう必要があるのだろうか、という思いもありますが、この業界の中で意外と本音が見えてこない書店員の、偽らざる思いが書かれているという点において、本書はひょっとしたら貴重なのでは?という気もします。
正直絶滅危惧種になりつつある書店の現場ですが、今回のイベントに参加して本好きも、ひょっとしたらそれほど本を熱心に追いかけていない人も含め、たくさんの方に来ていただけたことは、とても貴重な発見になりました。
イベントの後に「終わったあとも本屋さんに来てくれなきゃ意味がないよ」という思いがあるのは、書店にとっての本音です。ただ最近は自分は少しちがう考え方を持つようになりました。本屋に来たい人、本を本屋で買いたい人は本屋に来てくれればいいし、それは大歓迎ですが、そうじゃない人にでも本屋は開いていなければならないと思うのです。
「イベントのあとの日常にも本屋に来てください」という本屋の本音は少し虫が良すぎるし、なにより普段本屋にそれほど熱心じゃない人(そして当たり前だけどそういう人のほうが圧倒的に多い)に罪悪感を与えるような物言いはするべきじゃないな、と思うようになりました。
年に一回でもイベントに来て本を買ってくれる人、そこでしか本に触れない人がいてもいい。そのために、本屋は本を売りに出かけるべきだし、同時に本屋に来てくれる人のためには店をやっているべきなのだろう、と思います。
今回の催事でよく売れたのは、絵本と文庫でした。どちらも本好きじゃない人にも買いやすい「ひらいている」商材です。年に一回でもそんな本を買ってくれる人がいるならば、本屋としてこれほど幸せなことはないな、と強くおもった五日間でした。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は隔月、奇数月5日の更新です。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
■特集展示「安藤忠雄」
会期:2026年2月27日(金)~3月7日(土) 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
会場:ときの忘れもの
安藤忠雄の1988年の巨大版画「中之島プロジェクト(アーバンエッグ)」2点を展示するとともに、ル・コルビュジエ、磯崎新、槇文彦、マイケル・グレイヴス、六角鬼丈、佐藤研吾など巨匠から気鋭まで建築家の秀作を併せてご覧いただきます。
◆ときの忘れものは、アートフェア東京2026 へ出展します。

会期=2026年3月13日(金)~3月15日(日)
会場=東京国際フォーラム ホールE/ロビーギャラリー
(〒100-0005 東京都千代田区丸の内3丁目5番1号)
ときの忘れものブース番号= N009
出品作家=安藤忠雄、磯崎新、内間安瑆、内間俊子、瑛九、倉俣史朗、佐藤研吾、塩見允枝子、瀧口修造、松本竣介
●ときの忘れものの建築空間(阿部勤 設計)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。


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