◆第119回企画展  永井桃子展

 会期=2005年5月20日[金]~6月4日[土]  12:00~19:00 日・月・祝日は休廊

 会場=ときの忘れもの

 ※初日5月20日[金]午後5時より、作家・永井桃子を囲んでオープニングをいたします。ぜひご出席下さい。



◆新作展の概要

 昨年に続き、永井桃子の油彩新作展を開催します。

 永井は幼少より、母親に詩や物語りを書いてもらい、そこからイメージを膨らませては

クロッキー帳に絵を描き続けていたといいます。高校生のとき、母がつくった童話に、覚えたての銅版画に彩色した挿画を添えて一冊の絵本を創作しました。その『ウサギの畑』と題された絵本が、東北電力「夢見る子供童話賞」絵本部門大賞を受賞し、審査員の写真家・浅井慎平氏に「ちょっと恐ろしく、すごく楽しく、そして美しい」と評されました。

この毒を含んだ美しさこそ、永井桃子の表現の核といえるでしょう。

 この作家の日常的ふるまいは、「寡黙」の一語につきます。語りたい、語らせたい今の世の中にあって、その「寡黙」は静かな存在感に満ちています。

 今回の新作群は、決して強烈ではない、ひそやかな光りに満ちた空間に、大胆かつのびやかなフォルムが画面一杯に展開されます。

 以前の永井の絵には、豚や猫、兎などが空に浮かぶシュールな表現が特徴でしたが、昨年の新作個展から、動物たちの姿が消え、水分を一杯に含んだ植物の葉や茎、そして花びらが、おおらかにそしてうねうねと画面狭しと伸びてゆきます。

 卓抜な描写力に加え、極力輝きを抑えた独自の美しい色彩によって、見る者を暖かく包み込んでゆきます。

 100号、50号の油彩を中心に、油彩、水彩など15点の新作を発表します。



◆作家の言葉

 昔、パリシェという喫茶店があった。

 20年位前だろうか地下道と一緒に洋服なんかを売る店ができて、その横にごく普通の 喫茶店ができた。ちゃいろくなった食品サンプルの向こうに、古びたランプのような喫 茶店がみえた。店員はいつも同じような顔をして立っていた。私には、そう見えた。通り過ぎる視覚に入るあなぐらの暗さは、喫茶店を小さな秘密の世界にしていた。

 ある日突然にその店はなくなった。

 そのあとにできた店は透明だった。隅々まで明るい蛍光灯の光にあふれ、壁も真っ白い、ガラス箱のような空間に人がいる。窓は外を見るためではなく、中を見せるために開かれていた。

 人の住む場所の光は時代と共に変化する。そして光を描く絵画もまたその、時の色を 反映させるのかもしれない。

                         2005年春    永井桃子





「光途2005-ドローイング1」

2005年 鉛筆・水彩

18.0×26.0cm(紙)





「光途2005-ドローイング2」

2005年 鉛筆・水彩

18.0×26.0cm(紙)







「光途2005-ドローイング3」

2005年 鉛筆・水彩

23.1×31.1cm(紙)







「光途-植物の目」

2005年 油彩

162.0×130.5cm(100号)







「光途-日の方向」

2005年 油彩

91.0×116.5cm(50号)



◆作家の略歴

 永井桃子(ながい ももこ)・1976年東京生まれ。

 2000年女子美術大学大学院修了。

 1992年東北電力「夢見る子供童話賞」絵本部門大賞受賞、受賞作品『ウサギの畑』は講談社から刊行される。

 1998年女子美術大学卒業制作展で優秀賞受賞。

 2001年トーキョーワンダーウォール賞受賞。



 個展:2000年スカイドアアートプレイス青山、

     2001年ときの忘れもの、

     2002年トーキョー ワンダーウォール(東京都庁)、

     2003年銀座・ギャラリーアートポイント、

     2004年,  2005年ときの忘れもの。


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