古沢岩美 Iwami FURUSAWA
「誘惑1 すずかけ」
1979年 etching
Image Size 14.8x17.8cm
Ed.75 Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
私は、新聞社時代に企画した版画普及運動がきっかけで版画の版元(現代版画センター)という仕事についたのだが、いきなり美術業界に入ったので右も左もわからず、最初の頃のエディションは顧問だった久保貞次郎先生のラインの作家ばかりだった。すなわちオノサト・トシノブ、靉嘔、竹田鎮三郎、吉原英雄、小田襄・・・・
私だってこの世界に入った以上、素人は素人なりに考えた。
乏しい知識(?)を総動員し選んだのが、香月泰男と古沢岩美だった。今思うと文学趣味ぷんぷんで恥ずかしいが、とにかくアタックした。
香月先生は人を介してOKのお返事をいただいていたのだが、一歩遅く1974年3月に亡くなられた。風の強い日、清瀬駅の売店で買った夕刊に香月先生の訃報を見て呆然とした。
ちょうどこの日、刷り師の岡部徳三さんに連れられて靉嘔先生のアトリエに行く途中だった。この日の打合せから誕生したのが、限定11,111部の「I love you(Love letter(s))」(レゾネNo.267)
である。
もう一人の古沢岩美先生には手紙を書いて首尾よく常盤台のアトリエ(清家清設計)に参上することができ、以来たくさんのエディションをつくることができた。
そういう意味では、古沢先生は、私が他人の力を借りずに口説いた最初の作家だった。
古沢先生は本職は油彩だが、リトグラフ、銅版の技法を自家薬籠中のものとしており、版元としてはテーマを設定し、刷り師の手配をして後は先生の版の完成を待てばよいという、ほんとうに楽な作家だった。
サイン料を現金で受け取るや、うちのスタッフを連れて銀座の「姫」だかに直行したのには少し驚いたが、それも生意気な若輩の私への教育だったのかも知れないといまさらにして思う。
今回ご紹介する作品は、1979年にエディションした銅版画集「誘惑」の中の一点。
古沢先生のエロスの世界がよく出ている秀作です。

ちょうど、板橋区立美術館で「古沢岩美展~乱舞する色と線」が開催されます。
会期=2007年5月12日(土)~7月1日(日)
久しぶりに古沢先生の世界にひたりに私も行きたいと思います。
コメント