「恋するマドリ」でKIKUは刷られた

madori1この連載もすっかり間が空いてしまいました。
決してサボるつもりではなかったのですが、次から次へと<身過ぎ世過ぎ>の仕事に追われてついつい・・・
ご愛読いただいている皆さんには申し訳なく思っていましたら、先日刷り師の石田了一さんが「恋するマドリ」という映画のチラシをもってきてくれました。

若い美大生と、その部屋にかつて住んでいた女性の建築家、上の階に住む青年の3人の恋物語らしいのですが、私もまだ見ていないのでよくわからん。
(監督=大九明子、出演=新垣結衣、松田龍平、菊池凛子)

問題は撮影に使われた部屋というか家、そのチラシに映った部屋を見て、「ん? どこかで見たような・・・ えっ、ここ石田さんの住んでたとこじゃん」



madori2左の写真は、季刊「版画藝術」第42号(1983年7月)の巻頭特集<アンディ・ウォーホル最新作>80ページに掲載されている石田了一さんの当時の自宅兼版画工房の様子です。
つまり、映画のチラシに写っている同じ場所(部屋)です。
刷っているのはウォーホルの「KIKU3」です。
当時、石田さんは国立(くにたち)のハウス(米軍家族用につくられた賃貸住宅)に住んでおり、そこが自宅兼工房でした。
いまは府中の方に移転したのですが、ウォーホルの「KIKU」や「LOVE」はこのハウスで刷られました。
その住宅が、どんな縁か、「恋するマドリ」という映画のロケに使われたというわけです。
もちろん、映画の製作者たちは偶然その家を見つけて撮影したわけで、かつてそこが版画工房でウォーホルの作品が生まれた場所だったなんてことは知りません。

ウォーホルの日本発の版画作品が刷られた場所が、永遠にスクリーンにとどめられる。やはりウォーホルってただものじゃあないですね。
(続く)

ウォーホルKIKU3アンディ・ウォーホル
KIKU 3
 1983 Screenprint(刷り:石田了一)
 Image Size 50.0×66.0cm
 Sheet Size 50.0×66.0cm
 Ed.300 Signed
 *現代版画センター・エディション

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

●ウォーホルを偲んで~KIKUシリーズの誕生
その1 現代版画センターと宮井陸郎
その2 全員反対を押し切って
その3 日本の花をテーマに、日本の刷り師が刷る
その4 「LOVE」のスポンサー
その5 本邦初のウォーホル展は西武デパート渋谷店
その6 「恋するマドリ」でKIKUは刷られた
その7 渋谷パルコ店で全国展スタート