難波田龍起 Tatsuoki NAMBATA「王朝の装い」
1978年 etching(1版1色)
27.0×17.8cm
Ed.35(一部手彩色) Signed
*レゾネNo.93
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◆「難波田龍起展 没後10年ー未発表版画を中心に」には、いろいろなタイプの銅版画を出品しましたが、この「王朝の装い」は、現代版画センターから発表した1978年11月のカタログには、<限定35部、銅版+手彩色(刷り 山村兄弟版画工房)>と記載されています。
これは今となると誤記とまでは言いませんが、不正確な記述です。
前回は手彩色をもとに「色版」をつくり、カラー銅版画にする話をしましたが、この「王朝の装い」は、限定35部全てに難波田先生がご自身で手彩色することになっていました。
もちろん一気にできるわけではないので(こういうことはしばしばあります)、先ずモノクロの版画を限定35部(+エプルーブ)刷り、先生にお持ちしてサインをしてもらい、それに少しづつ手彩色してもらう段取りでした。
版画の版元というのは、古今東西どこでも同じですが、作るスピードと売れるスピードには大きな落差があります。
発表したら則売り切れなんて、先ずめったにない。
このあたりの作家と版元の呼吸がなかなか難しいのですが、この作品「王朝の装い」は版元の期待に反してあまり売れ行きは良くなかった。
必然的に手彩色の督促をうるさく作家に言うことをしなかったんですね。
版元は完成作品に対してサイン料及び手彩色の料金を払わなければならないわけで・・・・
もし、今の草間彌生先生みたいに注文が殺到していたら(その草間先生だって1980年代にはさっぱり注文が来ず、私どもの倉庫は在庫の山でした)、難波田先生にやいのやいのと手彩色を催促していたに違いありません。
とにかく、1985年に現代版画センターが倒産したとき、限定35部のうち、手彩色が完成していたのは、ごく一部に過ぎなかった。
あとにはサインはあるが、モノクロの刷りのものが残された。
いったい何部手彩色されたか、未完成のモノクロ版との比率は今となっては不明です。
(版元にはサイン台帳というのがあるのですが、現代版画センターのサイン台帳は行方不明)
いずれにせよ、今回出品の作品は希少な手彩色作品といえるでしょう。
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