
2007年も後半月ばかり、歳をとると時間のたつのがあっという間になる。少年の頃は、あきるほど時間があったのに・・・
今年もこの時期になると喪中のご挨拶をたくさんいただきます。何十年もご贔屓にしてくださったお客様が亡くなり、奥様からその知らせをいただくことほど切ないものはありません。
「お世話になって」というお電話に返す言葉もない。こちらこそご主人のおかげでこうやって何とか商売を続けさせていただいています。
年年歳歳花相似たり、年年歳歳人同じからず
昔は、まさか自分より年少のお客様に絵を売るなんて思いもしなかった。ところが今は多くのお客様が私たちよりお若い、息子の世代の方も少なくない。
それにしても今年の美術業界の動きはは激しかったですね。
<オークション会社の乱立と、現代美術の高騰>というのが、どの誌面にも踊っていますが、李禹煥、草間彌生、村上隆、奈良美智の4強だけが席捲したうわべだけの活況(と私には思える)は果たして本当に現代美術の定着をもたらしたのでしょうか。
それにしては、美術ジャーナリズムはほとんど死に体ですし、猫も杓子も、日本画の画商さんや骨董屋さんまでが草間、クサマと追い掛けるのは異常ですし、それじゃあただのブローカーではないかと私は思います。
先日も旧知の画商さんから電話があり、「あのとき(僅か数年前ですが)、綿貫さんからあんなに強く草間彌生展を勧められたのに、自信がなくて断ってしまって・・・・」という愚痴になりました。
私の画廊はたまたま4強の一人、草間彌生先生の版画エディションを20数年前から作っているものですから、「だから今年は儲かったでしょう」という話になるのですが、そんなことはありません。
むしろときの忘れもののラインナップは、ある意味流行遅れで、展覧会をしてもお客があふれるわけでもなく、初日完売なんてことは間違ってもありません。
学生時代(私の頃は学生運動の盛んな時期でしたが)、ある集会で日高六郎先生が話された「前衛はたくさんあった方がいい」という言葉を、私は美術の世界に入ってからもずっと心の支えにしてきました。
世界にはたくさんの国があり、多様な文化がある。
ときの忘れものの初心は、私たちが好きなもの、私たちの美意識を育んでくれたものを、たとえそれが売れ筋でなくとも、大事にしてゆこうということでした。
2007年の最後の企画は、私たちが敬愛する恩地孝四郎と、彼が主導した創作版画運動の中から生れた作品を集めました。ほのぼのとした暖かさを感じるような作品を、久しぶりに蔵の奥から取り出し、皆さんと一緒に楽しみたいと思います。
ぜひお出かけください。
と書きましたが、私自身は先日からの風邪がこじれてしまい、ずっと臥せっています。
展覧会の初日には出勤したいと思っているのですが・・・
だったらこんな自宅のパソコンにしがみつかず、さっさと寝てしまえばいいのですが。
◆恩地孝四郎と創作版画の作家たち
会期=2007年12月14日[金]―12月29日[土]
12:00-19:00 *日・月・祝日休廊
恩地孝四郎、織田一磨、永瀬義郎、戸張孤雁、長谷川潔、笹島喜平、石井鶴三、川西英、関野準一郎、小野忠重、竹久夢二、前川千帆、旭正秀、平塚運一、品川工、他。
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