若林奮「UNDERWOOD-8」
若林奮 Isamu WAKABAYASHI
「UNDERWOOD-8」
 1989  lithograph 
 100.0×75.5cm Ed.30
 signed  *レゾネNo.235

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ときの忘れものが若林奮版画展を開催したのは、2003年10月でした。その直前若林先生は亡くなられました。
ファンである私たちにとって最初の展覧会でしたが、作家に会場に来ていただくことは遂にかないませんでした。

この青山に事務所をもったのは、もう20年近く前ですが、嬉しかったのは、若林先生の傑作バー・ラジオが近くにあったことです(神宮前時代)。
若林彫刻がそのままバーになった、名建築でした。
若林奮版画レゾネを編集した小泉晋弥先生がいみじくも言われたように「全国の学芸員がその名を知っているのに、誰も行ったことがない」その伝説のバーに、お客さまや学芸員たちをご案内するのは私の密かな自慢でした。小泉先生を初めてご案内し、まさに振動尺そのものの分厚いバーカウンターをなでながら、若林作品を講義してもらったのも楽しい思い出です。
しかし、その初代のラジオは今はありません。
ご主人の尾崎さんは「若林先生の作品」である空間を惜しみ、ビルが取り壊される際に部屋全体をそのまま解体し、某所に保管されています。いつの日か、それが組み立てられ、若林ワールドが再現されるのを期待しています。
現在のバー・ラジオは三代目の場所(南青山)になりますが、ときの忘れもののすぐ近くにあります。

かつて雑誌などの取材にもほとんど応じず、紹介されても住所すら公開しなかったバー・ラジオですが、時代は変わったのですね。
今年の尾崎さんからの年賀状には「ホームページを開設し」たありました。
http://www.bar-radio.com/
先ずは美しい若林先生の空間を画面で体験してください。

尾崎さんからは「今の老人は元気で長生きをします。私は常から120才迄と言っておりまして、100才頃は未だ現役の積りです。100才の私から見れば、今の63才はとても青くて恥ずかしい思いなのでしょう。100才になって完璧なマティーニをお作りしたいです。」ともあります。老人ぶっている私なんぞとてもかないません。

どうぞときの忘れものにいらっしゃった折は、ぜひバー・ラジオへの道を尋ねてください。