毎日のように分厚いオークションカタログが送られて来る。
いまや日本はオークションの時代である。
かつて『日経アート』がオークション価格を公開して画商業界の猛反発をかったことなど、夢かと思うばかりの激変である。

某月某日、蒼ざめた顔で某オークション会社の社員二人が菓子折りをもって訪ねてきた。
私のような貧乏画廊になにようかと驚いたが、私がある作品をファックスで入札したのを見落してしまったらしい。
本来なら私が落札者なのだが、誤ってもっと低い金額の入札者に落としてしまったとのこと。
ちょっと訳ありの作品で面白かったのだが、まあ、たいした金額のものではないし、誰でもミスはある。笑ってお引取りいただいた。

上はオークショナー側のミスだが、私自身も幾度か苦い思い(失敗)をしたことがある。
あるとき、私の得意とする作家の希少作品が某オークションに出た。何が何でも落とさなければ私の沽券にかかわるような重要な作品だった。ところがその日、どうしても外せない別件の用事があり出席できない。私は友人に、上限ナシ、とにかく落としてくれと代理出席を頼んだのである。
あろうことか、一人暮らしのその友人は寝坊をしてしまったらしい。はっと気づいて会場にかけつけたときは既にオークションは終了していた・・・・
私、血の気が多いこともあって彼としばらく絶交するくらい、怒りまくった(そんな大事を他人に頼んだ私が悪いのですけどね)。

これは随分昔の話だが、海外のオークションである作品を入札した。日本からだったのでテレックスだったかファックスだったのだが、ポンドとフラン(もしかしたらドルだったかも)を混同して、とんでもない高値を入れてしまった。落札金額を見て、蒼くなりました。
あまりの高額で、直ぐには送金ができなかった。催促は来る、延滞金はかさむ、どうしよう・・・
ところがこのとき、神風というか日本経済の激動というか、為替レートが急変し、もの凄い円高になった。いやあ助かりました。利息払っても十分に間に合う金額になり、命拾いしました。

ところで、今回落とし損ねた作品、面白い作品だったので本当は内容を説明したいのだけれど、若い社員に迷惑がかかるといけないので、またの機会にしましょう。
でもちょっと意地悪をいうと、あの菓子折りはいただけません。そこらの店で買った(に違いない煎餅詰め合わせ)というのがみえみえである。お詫びのしるしならたとえば空也の最中だとか、浅草橋かどこかの人形焼だとか、岡埜栄泉の大福だとか、あの赤福だとか、まあどうでもいいが、とにかく誠意の塊のようなお菓子が食べたかったですね(冗談です)。

話変わるが、私は映画が大好きですが、外人の見分けがつかないという致命的な欠点をもっている。
『炎のランナー』をビデオで見たとき、二人の見分けがつかず、一人の人の物語と思っていた。それにしては随分シーンが激変するなあ、と言ったら、奥さんに呆れられた。
とにかく、外人サンはだめなんです。
それと複雑なストーリーがまったく理解できない。
大学4年だかのとき、彼女と「昼顔」を見た。カトリーヌ・ドヌーブが昼と夜の顔を持つということが全く理解できず、今思うと赤面の至りですが、主人公は二人いると思ってみていた。
要するに単細胞で人情の機微に疎い、というかバカなんです。
なんでこんな話をしたかというと、久しぶりにカトリーヌ・ドヌーブの艶姿を懐かしく思い出したからであります(?)。