ジャン=ミッシェル・フォロン Jean-Michel FOLON
「ニューヨークの雨No.4(カミュの小説挿絵)」
1984年 銅版(エッチング、アクァチント)
Image Size 38.0×29.8cm
Sheet Size 65.5×51.0cm
Ed.99 Signed
「少年時代の思い出
Souvenir d'enfance」
1981年 銅版(エッチング、アクァチント)
Image Size 30.0×39.5cm
Sheet Size 50.0×66.5cm
Ed.90 Signed
ジャン=ミッシェル・フォロン Jean-Michel FOLON
「ニューヨークの雨No.2(カミュの小説挿絵)」
1984年 銅版(エッチング、アクァチント)
Image Size 37.8×29.8cm
Sheet Size 65.0×51.0cm
Ed.99 Signed
◆いつか機会があれば訪ねてみたい美術館がある。
ベルギーのブリュッセルからタクシーで行くしかないようだが、2003年に開館したフォロン財団ミュージアムである。ジャン=ミッシェル・フォロンは、幼少のある時期をこの近くのジャンバル湖畔で暮らした。フォロンにとって特別な思い入れのある土地であり、美しい自然に囲まれた城の建物は、1833年にCluysenaar(ブリュッセルの有名なガルリ・サン・チュベールを設計した建築家)の設計で完成したもので、リニューアルにあたっては建築当時の外観を忠実に再現したという。
フォロンは、私が仕事をした作家で遂に会うことのできなかった一人である。
フォロンのなんともいえない暖かく柔らかな色彩とタッチは、詩と夢の旅と評される独特の幻想的な世界を確立した。
オリベッティ社のポスターはCM界で一時代を画したといっても過言ではないだろう。
私は1980年代後半の数年間、フランス人経営の会社に勤めていた。つまり美術業界から離れていた期間だが、某印刷会社の依頼で海外作家によるポスターやカレンダーの制作に携わっていた。通常の著作権事務所を通していてはらちのあかない難しい作家が何人もおり、そういう作家たちを直接アタックして著作権許諾のOKをとる仕事だった。
某社のウォーホルのカレンダーのときはニューヨークの主なきウォーホル・スタジオを再訪した。まさかあんなに早く逝ってしまうとは思いもかけなかったが、春休み中の息子たちを同道できた嬉しい旅だった。
大阪の花博の公式ポスターのときは、デイヴィッド・ホックニーを追いかけてニューヨークからある港町の博物館までリムジンを飛ばし、ホックニー展のオープニングで彼を捕まえたのだった。
某化粧品メーカーのカレンダーでは、周囲の忠告に従い美人スタッフを連れてパリのカシニョールのアトリエを訪ねた(私があのカシニョールを口説いたなんて、自分でも信じられない)。
そして某金融機関のカレンダーでフォロンの作品を使うことになり、その承諾を取るために悪戦苦闘した。手紙しか連絡手段がなく、電話は全くつながらず、本人を捕まえられないのである。パリの彼のアトリエをアタックするのだが不在ばかり、スイスやモナコなど探し回るのだが、とうとう会うことはできなかった。私の助手をしていたNさんの奮闘で、手紙のやりとりでやっと許諾はとれ、めでたくカレンダーは制作された。フォロンにいつか会ってお礼を言いたかったのだが、白血病で2005年に亡くなってしまった・・・
◆ジャン=ミッシェル・フォロン Jean-Michel FOLON (1934-2005)
1934年ベルギーのブリュッセル生まれ。はじめ建築を学ぶが絵画に転じ、1955年パリへ移住。不遇な時代を過ごすが、1964年パリのミュグル書店でデッサン展、1965年「第3回美術の中のユーモア・トリエンナーレ」の大賞受賞が契機となり世界各地で展覧会が開催される。オリベッティ社のポスターはじめ、雑誌「タイムズ」「フォーチュン」「ニューヨーカー」誌などが彼のデッサンを掲載。アポリネール、カフカ、カミュの本の挿絵など多くのイラストを手掛ける。1969年ニューヨークで初めて個展。1970年日本でも展覧会が開催される。1971年パリ装飾美術館で個展開催。第12回サンパウロ・ビエンナーレでグランプリを受賞。1982年サッカーワールドカップのポスター制作。 1985年回顧展のために来日。1990年ニューヨークのメトロポリタン美術館で水彩と版画の展覧会が開催される。アニメーションや映画制作にも携わる。2000年には自らフォロン財団を設立した。子供たちへの芸術教育活動や、身障者など社会福祉への貢献が高く評価され、2003年ベルギーのユニセフ国内大使に任命されるが、2005年10月白血病によりモナコに死す。
◆ときの忘れものでは「ハンス・ベルメール版画展」を開催中(2月29日~3月8日)です。どうぞお出かけください。
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