20080308秩父宮歳である、体調も悪い、花粉症もひどい。たまに出勤すると仕事が山積しており、遅れを取り戻そうと終日デスクにかじりついていると腰痛が悪化する。悪循環である。
社長に「たまには外に出なさい」といわれ、ハンス・ベルメール展最終日だが、お昼は外に出た。土曜日なのに凄い人出だ、ン? そうか今日はラグビー日本選手権の準決勝だった。
青山に事務所を構えて20年近くなるが、秩父宮ラグビー場が近いのが嬉しい。
我が母校高崎高校は入学するや全員が紺のラグビージャージを買わされる。進学校だが国体で優勝したこともある。名校長と謳われた田中悦平先生がイギリスのハイスクールには何面もラグビーコートがあるのを見て、わが高々(たかたか)もと思ったらしい。体育の時間はもちろん、休講やお昼休みもクラスでラグビーの試合をしていた。
私が最初に見たラグビーのスターは八幡製鉄の北島だ(明治の北島監督の息子さん)、新日鉄じゃあありませんぜ(エヘン)。松尾の明治時代、秩父宮で見せた華麗なドロップキックは今も目に残る。慶應のキャプテン平島の両手を握り締め気合を入れる姿は懐かしい。1987年だったか初来日のオールブラックスも土砂降りの雨に打たれながら見た。
ギャラリーを開いてからも毎年9月からのシーズンには、土曜の午後は大学リーグ戦や対抗戦の試合に通った。それがいつの間に足が遠のいてしまった。お天気もいいし、久しぶりに1500円のチケットを買い、サントリーと東芝の試合をバックスタンド最前列で見た。秩父宮は空が大きくていい。
前半は22対0の一方的な展開、たまたま東芝の応援席に座ってしまったので、周りはしゅんとして声も出ない。突進力、長い正確なパス、スピード、ラインアウトでサントリーが圧倒していた。後半もそんな調子だったのだが、25分過ぎからやっと東芝に火がついた。サントリーのタックルに敢然と立ち向かい、突進を続ける。倒されても立ち上がる、1センチでも前へ! 悲鳴にも似た声援が周りからおこる。思わず目頭があつくなった。スクラムで押し込み2トライを返すが結局25対14でサントリーが勝った。やっぱりラグビーはいいなあ。たくさんの子供たちがいたのも嬉しい。今度は孫を連れて来たい・・・。

仕事を抜け出して遊んでばかりいるようだが、結構忙しいのだ。このところ、売ることより買うことの方に追われている。昔からのお客さまが亡くなったり、代替わりしてコレクションを処分されることになったりで、私どもにお呼びがかかる。
企業がリストラの一環として、コレクションをまとめて処分するという話もある。
最近は海外のコレクターからの売り込みも増えた。
いろいろな作品を入手できることは嬉しくもあり、また昔売った作品が再び戻ってくることの切なさもありで、複雑な心境である。
買い取り価格をいくらにするか、これがまた眠れなくなるほど悩ましい。
お客様が大切にしていたものだから高く買いたいが、そうすれば売れない。寝かせるだけの資金力があればいいが貧乏画廊にはそんな余裕はない。ジレンマである。
もともと安く買い叩くなんてことは私は苦手だ。見積りを出すと必ず社長にばっさりと削られる。

若い頃、先輩画商さんに「一つの作品で三回商売する」と言われて、私なんぞは到底そんな芸当はできないなあと思った。
とはいえ、これだけ長くやっていると、作品は否応無く入ってくる。
お客様の好みは百人いれば百通りだから、種々雑多な作品がある。いくらプロだからといって全てに通暁しているわけではない。
ときの忘れもののラインナップなら、画廊に飾るなり、企画展に使うこともできる。
実は昨日終了したハンス・ベルメール展もつい最近買い取った作品で、2月と8月(ニッパチです)は資金繰りが最も苦しい時期で四苦八苦した。だから案内状もつくる間もなくネットだけでご案内したのだが、おかげさまでまあ何とかなったのでほっとした。

問題は、私たちの専門外の作品が入ってきたときである。骨董や軸物となったらお手上げだ。
うっかりミスもある。何年か前の書籍セールの折に、宮澤賢治のン十万円する稀覯本をそれと気づかずに「100円均一」で売ってしまったことがある。随分業界で話題になったらしい(そりゃあそうだ)。逆でなかったことを幸いとすべきか。
わからぬ作品は、友人に頼んで業者の市で売却するか、自前で処分するか。
廉価なものはまとめてヤフーオークションに出品している。今もD氏コレクション特集を出品中である。ネット担当者は必死で調べるのだが、作家名を特定できないものも少なくない。不勉強だと言われれば返す言葉もないが、「作者不詳」とせざるを得ない。
ところがありがたいことに、ヤフーオークションの「作者不詳」を見てわざわざ正確な作家名を知らせてくださる方がいる。また「作者不詳」のままで落札された方が、実はこの作品は誰それでしたと、丁寧に教えてくださることもある。お客様の方が詳しいのである。そのたびに顔が赤らむ・・・
入札が入ってしまってからでは訂正できないが、まだどなたも入札されていない場合は取り下げて、改めて作者を特定して出品し直すこともある。
この場をお借りして深く深く感謝申し上げる次第です。
(つづく)