社長と二人で四国、中国地方に出張しています。
夏休みなんてとんでもない、仕事です。シゴト。
さて1999年にごく少部数制作された小川信治の珍しい版画をご紹介します。



小川信治「Without you　聖書の大冒険」より
1999年　ミラーフィルムにシルクスクリーン
88.5×74.5cm 　Ed.4 　サインあり



小川信治「Without you　聖書の大冒険」より
1999年　シルクスクリーン
88.5×74.5cm 　Ed.7 　サインあり

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◆誰でもが知っている（既知の）映画や名作絵画の一場面から、登場人物を一人消しさり、残された（描かれた）人物とシーンだけで場面を成立させた[WITHOUT YOU]シリーズ。
豊田市美術館「空き地」（2000年）や大阪の国立国際美術館の個展（2006年）で、一躍その存在がクローズアップされた小川信治ですが、考え抜かれたコンセプトを卓抜な描写力で表現する様は見る人を圧倒します。
名古屋を中心に活動していた小川信治が、東京で初めて発表したのは、1997年6月のときの忘れものの個展でした。そのときの個展では、「市民ケーン」「カサブランカ」など映画をモチーフとした作品を展示しました。いわば歴史の捏造ともいうべき絵画です。
小川自身は、「私たちが信じて疑わないもの、普通だと確信しているものが既に異形のものへと変化し始めているという直観につき動かされて制作を始めた」と言っています。
極めて伝統的な技法を用いながら、小川の精緻な描写力をもって初めて可能である大胆な試みといえるでしょう。
この作品は映画ではなく、ヨーロッパに古典絵画として名高いフェルメールの「絵画芸術」をモチーフにしています。
フェルメール「絵画芸術」（1666～1667年頃、油彩、120×100cm）は、現在ウィーンの美術史美術館に所蔵されている名画です。
こちらに背を向け、イーゼルに向かう画家とモデルの少女とが描かれていますが、単なるアトリエ風景の描写ではなく、「絵画芸術」そのものをテーマとした寓意画と見なされています。
さて、その絵画から画家を消し去ってしまった小川信治の世界はいかなる変容を見せているのでしょうか。