12月13日[土]より、東京都写真美術館で「甦る中山岩太　モダニズムの光と影」展が始まりました（2009年2月8日[日]まで）。先日、ときの忘れものの植田正治展でギャラリートークをしていただいた東京都写真美術館専門調査員で写真史家である金子隆一さんの10年越しの企画が、ようやく実現したものです。
中山岩太は、1895年福岡生まれ。小学校の時に東京に移り、1915年東京美術学校臨時写真科の第一期生として入学。1918年優秀な成績で卒業すると、その年カリフォルニア州立大学に留学、翌年にはニューヨークに移り、菊池東陽の経営するキクチ・スタジオで働き始めます。1921年独立してラカン・スタジオを開設し、仕事も順調でしたが、1926年清水登之の紹介でパリに移ります。藤田嗣治やマン・レイらエコール・ド・パリの作家たちとの交流は芸術家としての成熟に大きな影響を与えました。1927年日本に戻ると、1929年には芦屋にアトリエを建てて活動を始めます。ハナヤ勘兵衛らと芦屋カメラクラブを結成し、丹平写真倶楽部などとともに日本の写真界をリードしました。1932年創刊の「光画」などでモンタージュを使った幻想的な作品を発表。しかし、戦争へ向けて活動が制約されるに従い、そういった自由な表現ができなくなっていきます。戦後はまたリアリズム運動によって、中山の目指したモダニズムは主流足りえないまま1949年53歳で亡くなります。
この展覧会では、初期のアメリカ時代から、パリを経て日本で開花した作品群を見ることが出来ますが、今回の展覧会の大きな特徴は、中山の残したガラス乾板からモダンプリントを作成し、作家によってプリントされた作品とともに展示したことです。中山がその晩年に国画会に出品した時のサイズが全紙サイズであったことから、作家がいま展覧会をしようと考えた時、全紙にプリントするのではないかという想定で、モダンプリントは全紙サイズにしてあるそうです。また、銀塩写真の今後が懸念される現在、こういったガラス乾板に残された作品をどのように継承していくかということに対する一つの回答になっています。展示では、ガラス乾板自体も見ることが出来ます。
会期中には、ギャラリートークなどのイベントもあるようですので、ぜひお出かけください。



◆ときの忘れものでは、12月12日[金]―12月27日[土]まで「再発見　プリントの美！」を開催しています。

◆オリジナルプリントを挿入した「ときの忘れものアーカイヴスVol.1 五味彬Yellows」特装版を創刊しました。限定175部、挿入されたプリントは技法、サイズ、イメージなど全てが異なります。
価格7,350円（税込）です。