先日途中まで掲載しました「中山岩太のニュープリントを制作して」講演会の続きを以下、ご報告いたします。(1回目を書いた後ですぐに続きを書かなかったことを非常に後悔しております。)
金子先生と比田井氏の共同作業のお話の続き。
植田正治の未発表作品を集めた「僕のアルバム」(求龍堂刊)を作るときも、傷んだネガをスキャンしてディジタルで修正をすることをせずに、一旦印画紙にプリントしたあとディジタル修正を加えるという、「印画紙にプリントする」ことにこだわったそうです。
また、2005年から2008年までヨーロッパを巡回した「植田正治回顧展」に、ヴィンテージを貸し出すのに代わるものをということで、4x5と8x10でヴィンテージを複写しました。4x5の粒状感が良かったので、4x5で複写したものを採用し、「レプリカ」を制作しました。その際、金子先生から、「複写であっても写真表現でなければならない。」言われたとのこと。
今回の中山岩太展では、最初、全てニュープリントだけの展示にしようかと思ったが、中山自身のプリントしたヴィンテージも加えることにして、ニュープリントは41点制作した。この41点は、全てヴィンテージまたはオリジナルプリントがある作品ということを選択の基準としました。
「上海から来た女」は、比田井氏が10年間乾板を預かることが出来たことが今回ニュープリントを制作する上で大きかったとのこと。しかし、この10年間で印画紙の状況が大きく変わり、印画紙の選択肢がなくなってしまった。フジのレンブラント、イルフォードのウォームトーンを今回使ってみたが、レンブラントは大全紙サイズがメーカーですでに在庫切れに。プリントするときに「上海」という言葉のイメージを具体化しようと思った。背景の明るさと人物のバランス、タバコの煙がわかるようにと、かなり試行錯誤があったそうです。
やり方としては、乾板をスキャンしてディジタルで等倍のネガを作ることも案として出たそうですが、植田正治の時と同様に、金子先生はこれを却下し、10年前にやろうとしたことを実現したかったということで、やはりプリントすることにこだわりました。ディジタルは自分のやることではないという考えによるものだそうです。
講演後の質問に答えて、比田井氏は、「プリンターが写真家と対等に作品作りにかかわっていける存在になりたい。」とおっしゃていました。裏を返せば、今まだプリンターと写真家はそういう関係にないということでしょう。
ここに書きましたのは、お話しいただいたほんの一部分ですが、雰囲気が伝わればと思います。
「甦る中山岩太-モダニズムの光りと影」展は、2月8日[日]までです。どうぞお見逃しのないように。

◆ときの忘れものでは、2月6日[金]―2月28日[土]まで「第19回瑛九展~時を超えて」を開催しています。
◆オリジナルプリントを挿入した「ときの忘れものアーカイヴスVol.1 五味彬Yellows」特装版を創刊しました。限定175部、挿入されたプリントは技法、サイズ、イメージなど全てが異なります。
価格7,350円(税込)です。
金子先生と比田井氏の共同作業のお話の続き。
植田正治の未発表作品を集めた「僕のアルバム」(求龍堂刊)を作るときも、傷んだネガをスキャンしてディジタルで修正をすることをせずに、一旦印画紙にプリントしたあとディジタル修正を加えるという、「印画紙にプリントする」ことにこだわったそうです。
また、2005年から2008年までヨーロッパを巡回した「植田正治回顧展」に、ヴィンテージを貸し出すのに代わるものをということで、4x5と8x10でヴィンテージを複写しました。4x5の粒状感が良かったので、4x5で複写したものを採用し、「レプリカ」を制作しました。その際、金子先生から、「複写であっても写真表現でなければならない。」言われたとのこと。
今回の中山岩太展では、最初、全てニュープリントだけの展示にしようかと思ったが、中山自身のプリントしたヴィンテージも加えることにして、ニュープリントは41点制作した。この41点は、全てヴィンテージまたはオリジナルプリントがある作品ということを選択の基準としました。
「上海から来た女」は、比田井氏が10年間乾板を預かることが出来たことが今回ニュープリントを制作する上で大きかったとのこと。しかし、この10年間で印画紙の状況が大きく変わり、印画紙の選択肢がなくなってしまった。フジのレンブラント、イルフォードのウォームトーンを今回使ってみたが、レンブラントは大全紙サイズがメーカーですでに在庫切れに。プリントするときに「上海」という言葉のイメージを具体化しようと思った。背景の明るさと人物のバランス、タバコの煙がわかるようにと、かなり試行錯誤があったそうです。
やり方としては、乾板をスキャンしてディジタルで等倍のネガを作ることも案として出たそうですが、植田正治の時と同様に、金子先生はこれを却下し、10年前にやろうとしたことを実現したかったということで、やはりプリントすることにこだわりました。ディジタルは自分のやることではないという考えによるものだそうです。
講演後の質問に答えて、比田井氏は、「プリンターが写真家と対等に作品作りにかかわっていける存在になりたい。」とおっしゃていました。裏を返せば、今まだプリンターと写真家はそういう関係にないということでしょう。
ここに書きましたのは、お話しいただいたほんの一部分ですが、雰囲気が伝わればと思います。
「甦る中山岩太-モダニズムの光りと影」展は、2月8日[日]までです。どうぞお見逃しのないように。
◆ときの忘れものでは、2月6日[金]―2月28日[土]まで「第19回瑛九展~時を超えて」を開催しています。
◆オリジナルプリントを挿入した「ときの忘れものアーカイヴスVol.1 五味彬Yellows」特装版を創刊しました。限定175部、挿入されたプリントは技法、サイズ、イメージなど全てが異なります。
価格7,350円(税込)です。
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