私の恩人であるニューヨーク在住の眞田一貫さんから、先日メールが届きました。
世界的なディーラーとして活躍する眞田さんは木下哲夫さん(翻訳者、メカス日本日記の会)の友人で、私が1983年に初めてニューヨークに渡ったときにいろいろ面倒を見てくれ、ジョナス・メカスさんを一緒に訪ねたときには、私の通訳をしてくれました。

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 暑中お見舞い申し上げます。
皆様、大変ご無沙汰しています。
さて、私がかなり前から計画していた展覧会がついに9月、金沢21世紀美術館で実現することになりました。「パルケット・エディションズ、美術誌パルケットと現代アーティストたちのコラボレーション25年の歩み」という企画展です。会期は9月4日から26日までです。

 私は現代アートの分野で先駆的な働きをしてきたスイス・チューリッヒに本社がある美術出版社パルケットと縁がありまして、今年がパルケット創立25周年という節目の年でもあることから、今回の大展覧会を企画いたしました。パルケットは最先端にいる現代アーティストの仕事を発掘し広く啓蒙することを目的に、アーティストとの共同編集を基本姿勢に置いて、年に3回ずつ、各巻で平均3人ほどのアーティストを紹介してきた美術雑誌です。商業ベースを拒否した編集方針を貫くために、取り上げるアーティストと協力して時間をかけた雑誌作りを行い、雑誌刊行のたびにエディションとしてマルチプルアート作品を各アーティストが自由に制作し、それを販売することでパルケット誌出版を継続してきました。取り上げた当初は知名度が低かった作家たちが、年を経て大御所になったようなケースもありますが、ほとんどすべてのアーティストが現在では世界の第一線の美術館で取り上げられるような存在になっているのは、奇跡的なことです。

 パルケットのエディション作品を展示する企画は、過去にパリのポンピドゥーセンターやNYの近代美術館など欧米の美術館で行われてきましたが、金沢での展覧会では、パルケットが過去25年間に出版してきたエディション作品200点をすべて展示し(世界初)、すべての雑誌のバックナンバーはもとより、作品制作の過程でパルケット社とアーティストが関わってきたコラボレーションの歴史をアーティストの自筆資料やページアートを通して紹介するものです。エディションとはいえ、ゲルハルト・リヒターの油彩絵画など一点ものの作品も多数含まれていますし、表現方法も写真、素描、版画、彫刻、ビデオ、インスタレーション、音声など、あらゆる可能性を試しています。

 さらにこれを機会に、200点の作品すべてをカラー図版で紹介し詳細なデータや、二つのエッセイ、1400点もの記事執筆者の総リストなど多くの資料をつけた総カタログ(カタログレゾネ)を刊行します。日英二カ国語の520ページ近くの本ですが、日本語部分は私が担当しました。最先端の現代アートの動向に関心がある美術愛好家や美術館、図書館、研究者などにとって、特に日本語でのデータが乏しい日本においては、大変に貴重な資料になると自負しています。

 私は美術作品の売買をビジネスとして行ってきましたが、今回の展覧会は私個人としても集大成的な側面もあり、ビジネスを度外視して主催者の一人として動いてきました。パルケット社(スイス)と私の会社イッカンアートインターナショナル(NY)、そして本展の日本での提携先であるアート・アドバイザリー・バンクという会社が、共同で主催者となっています。金沢21世紀美術館本体が企画した展覧会ではありませんが、秋元雄史館長をはじめパルケット展への注目は大きく、オープニングの翌日には美術館内のシアターで、パルケットの社長と編集長をスイスからお招きし、秋元館長や写真家の杉本博司さんも参加して、パルケットの歴史を振り返るパネルディスカッションを開催します。私は通訳の一人をつとめます。(以下略)
      眞田一貫
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 眞田一貫さんの人生の集大成とあらば、これは行かずばなるまい。
9月4日のオープニングには社長と二人、かけつけましょう。
 眞田さんが繋いでくれたジョナス・メカスさんの新作展もちょうど9月1日から開催します。

◆ときの忘れものの次回企画は、9月1日(火)~19日(土)まで、「ジョナス・メカス新作写真展」を開催します。
9月5日(土)17:00~ギャラリートークを開催します。講師:吉増剛造(詩人)
※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/参加ご希望の方は、メールまたは電話でお申し込み下さい) 電話:03-3470-2631 メール:info@tokinowasuremono.com